【 当社が自社運営している宿泊施設/東風の宿 】
築50年・延べ床面積45坪(90帖)の古い土壁の木造住宅を、10帖用の家庭用エアコンたった1台だけで全館冷暖房し、お風呂もトイレも洗面も、家中どこでも寒くない1棟貸しの宿泊施設に再生しました。
少し長文になりますが、
私たちがどんなことを考えてこの建物をリノベーションしたのか?
について書いてみましたので、最後まで読んで頂けるととてもうれしく思います。
【 歴史的なまちなみが残る名柄(ながら)地区 】
この建物が建っている名柄地区の中には、築100年を超える古い家が約40棟ほど残っています。
葛城古道(かつらぎこどう)という、古代からある道の一つが名柄地区を貫いています
上記のような名柄地区内にあり、当社の事務所(再生した築115年の古民家)から徒歩約3分の葛城古道沿いに、2018年の12月に一軒の空き家が売りに出ました。
この建物は歴史的な街並みが残っている名柄(ながら)地区のメインストリート沿いに建っていた家です。
もともとの外観はこんな感じでした。
今人気のあるいわゆる古民家でもなく、昭和の時代によく建てられた、どこにでもありそうな特徴のない家・・・
という感じでしたので、正直な第一印象は
「この家は、なかなか買い手が付かないんじゃないかな・・・」
というものでした。
でも、もし買い手がつかなければ、敷地は荒れて草は伸び放題になり、せっかくの歴史的なまちなみがそこだけなんだか薄気味悪い雰囲気になってしまいます。
それは何とか避けたい・・・と思い、価格も安かったことから、とりあえず当社で購入させて頂きました。
【 建て替えせずに、あえてリノベーションを選んだ理由 】
築50年経過している家といえば、寒くて暑くて、安全でもなく古臭く、ほとんどの方が
「もう壊して建て替えてしまえ」
と言われると思います。
しかし私たちは
『世界に、300年先も美しい風景を』
という企業理念を掲げて活動している会社です。
私たちは、この名柄地区内のみなさまに対して、以下のような想いを勝手に抱いています。
「ぜひとも古いお宅は、将来地域の大切な資産となるように残して、末永く活用し続けていただきたい。
そして、このまちがいつまでも美しく魅力的でありますように」
そんな自分たち=東風があっさり建物を建て替えてしまったら、企業理念を自ら実践していることをお示しできませんよね?
だから建て替えるのではなく、地域のみなさまが
「こんな風に直せるなら、うちの150年の家も潰さずにちゃんと直して残そうかな」
と思っていただけるような実例をつくろう! と考えたのです。
【 10年後、みんなが移住したくなる魅力的なまちになることを目指して】
そして10年後には、この歴史的なまちなみを楽しむ旅行者の方々が世界中から来てもらえるような街になって、
「なんか最近、御所市名柄のあたりっていい感じになってきているよね。私たちも名柄に住みたいな♪」
という人が増えるような街にしたい、という夢を持ちました。
その夢を念頭に置いて、まず向こう10年間はいろんな方々に名柄のまちを楽しんでもらえるための宿泊施設として運用してみることを決断したわけです。
またその一方で、全国各地で課題になっている空き家対策の実例として、今後は収支運用実績も含めた具体的なご提案もできれば・・・という実験的なチャレンジも兼ねています。
それでは前置きが長くなりましたが、建物の写真をご紹介します。
わかりやすいように、左が工事前、右がリノベーションの後、という風に並べた写真をつくりました
冬には毎年、この宿の暖かさを感じていただける見学会を数回開催しています。
また機会があればぜひお越し下さい。
この東風の宿は、Airbnbのサイトから宿泊のご予約を受け付けております。
そして2023年からは、主に日本を訪れる外国人旅行者のみなさまに向けた伝統的な木造建築に関する体験型プログラム
LOCAL CRAFT JAPAN YOSHINO
の宿泊先としても東風の宿をお使い頂いています。
上記の LOCAL CRAFT JAPAN YOSHINO では、日本の伝統的な家づくりを深くご理解頂けるプログラムで、
・日本の伝統構法建築のしくみ
・吉野林業
・東風の再生実例建築の見学と、日本の伝統的な古民家の訪問
という内容からなる2泊3日の構成です。
東風も伝統構法に関するご説明の部分で協力させて頂いています。