尼崎・手刻み×面格子×漆喰 和風の家完成見学会/伝統工法、木造建築東風

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2011年の秋に墨付け工事に着手した尼崎市のH様邸がようやく完成しました。

丁寧な木造手仕事の魅力を皆様に体感して頂きたいと思い、クライアントのH様に完成見学会の開催を打診したところ、「どうぞ、どうぞ」と快諾のお返事。

大黒柱は8寸角/樹齢130年の桧で、構造材は樹齢100年超の大径木を2008年晩秋の新月期に伐採した天然乾燥材です。
30代前半の若い棟梁が4ヶ月かけて刻み、構造材の緊結には金物を一切用いずに、長ホゾと栓を使って組み上げています。
緩やかな弧を描くムクリ屋根と木製の面格子の外観に、付近を散歩される皆様も現場の様子をしげしげと眺めていかれます。

一度にたくさんのご来場者がおいで頂いて混乱することがないように、時間帯ごとにご予約を承って対応させて頂きます。お申込の際には、見学ご希望時間帯をお申し出下さい。(お子様をお連れ頂いても大丈夫です)

※完成見学会は終了しました。
 ご来場いただいたみなさま、ありがとうございました。

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尼崎市・外壁漆喰と木製面格子、杉板張りの和風住宅/数寄屋、伝統工法の木造建築東風

久しぶりの更新です。
楽しみにしてくださっているみなさま、大変申訳ありません。
  
尼崎市で工事中のH様のお宅では、外部足場も外れ、通りに面した2階の開口部に木製面格子が取り付けられました。

外観の雰囲気がぐっと良くなり、現場の前を歩いていかれるみなさまの中には、立ち止まって眺めていかれる方もちらほら。

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2階の外壁は漆喰のコテ押えですでに仕上がっていますが、1階の外壁は杉板張りでまだ仕上の途中です。
出来上がったらまたご報告しますのでどうぞお楽しみに。

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裏側はすでに杉板が張れています。

外壁に張る杉板は、東風ではいつも奈良県吉野の吉野中央木材さんに発注しています。

吉野杉の赤身だけで採った板を、自社の乾燥庫で低温人工乾燥させてつくってくれるので、色や質感もあまり損なわれずに含水率を下げることができて、いい状態で材料を張れるので大変助かっています。

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漆喰壁と木製額縁、瓦の和風住宅/数寄屋、伝統工法、木造建築東風

尼崎市・H様邸では、2階外壁の漆喰コテ押さえ仕上げができました。

白壁と杉の窓額縁のコントラストがとっても映えてます。

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しっくい壁が仕上がってからというもの、目の前の道を歩いていく皆さんが立ち止まって眺めていく姿をよく見かけるようになりました。

どこといって奇抜なところなどない、おとなし~い姿・形をした家なんですが、周辺のまちなみからちょっと浮いてしまっています(笑)。

 

 

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京都で手刻みの真っ最中

京都市・U様邸の加工場では、構造材の刻みが進んでいます。

今回大工工事を引き受けてくださったのは、京都で長年数奇屋の仕事に数多く携わってこられた鮫島さん。
鮫島さんとは、僕が京都で勤めていた鈴木工務店でご一緒させてもらったご縁です。
数年前に建てた京都市の石場建て木造住宅・N様邸でも、現場の大工工事は鮫島さんが手がけてくださいました。

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上のお二人が鮫島さんご兄弟。
お二人ともとっても腕の立つ大工さんです。

上の写真は、2本の梁をつなぎ合わせる継ぎ手の加工ができたので、仮に合わせてみているところ。
金輪継ぎ(かなわつぎ)という継ぎ方を追っかけ大栓継ぎ風にアレンジした形にしています。
(鮫島さんが考えました)
構造的にはこれでも充分な強度がありますが、細部がピシッと納まっていないので
もう少し手直ししよう(1ミリ以下)、というような話し合いをしているところを横から撮ったものです。
 
下の写真はその継ぎ手をばらしたところで撮った写真です。 

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下の写真は、土台を刻む鮫島稔(弟)さん。

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端で見ていると、なにげなくスイスイ~と作業が進んでいくように見えます。
そこがすごいんですよね。

下の写真は鮫島透(兄)さんが柱を刻んでいるところです。 

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加工場の一番奥で刻んでいるので、暗くてぶれてしまっています。
すみません。
力を入れずに、刃物の切れ味に任せて刻んでいる様子がよく判りました。

次の写真は、若手大工・井野さんです。 

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2階床梁の刻みをしているところ。
 
彼の刃物の切れ味は素晴らしいです。
傍らで木を削る音を聞いているとよく判ります。
 

下の2枚は加工が済んだ後の材料の写真です。
3人で進めているので(かつ大工の腕が良いので)
かなり早いスピードで進んでいます。

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通し柱と2階床梁との仕口(しくち)部分です。
雇い臍(やといほぞ)+車知栓継ぎ(しゃちせんつぎ)の形です。

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材料はもちろん、東風で独自に伐採・製材し、3年かけて天然乾燥させた静岡の杉と桧です。
樹齢は100年~140年、北向き斜面で育った、大変目(年輪)が詰んで赤身の張ったいい木です。

材料は静岡の鈴木林業さんが出材してくれ、製材を静岡の杉山製材所さんが手掛けてくれました。

先ほども書きましたが、刻んでいる大工の傍らで

鉋や鑿(のみ)で木を削る音を聞いていると、とても
心地よい音がします。
 
刃物が切れないと心地よい音はしません。
また人工乾燥材ではいい音が出ませんし、
表面もきれいに仕上がりません。

何度も何度も山へ行って、自社で独自に原木を購入し、製材→ストック→ゆっくり自然乾燥させて使うまでには、長い時間がかかります。

今回使ってもらっている木も、実は2008年の11月に伐採した木です。
そのときの記事はこちら → 2008静岡 新月伐採

途中で使えなくなってしまう木も出てきますし、これまでもいろんな失敗をしたりして、かなり多額の投資もしてきていますが、こうやってようやく木が日の目を見る機会に出会えると、とってもうれしいです。

あまり大きい声では言えませんが、東風のこの木材は今はまだかなりお買い得の値段で提供しています。
あと1-2年したら、今よりグレードも上がりますが、価格も上がりますよ。

実は今まで東風の木で家を作ってこられたクライアントのみなさまは、大変オトクだったんです。

 あなたはどちらが好きですか?
 30年後に「そろそろ建て替えようか・・・」と言われる家と
 「200年前のおじいちゃんが建てたの」と2212年に言ってもらえる家

今年の原木が届きました

5/7(月)に、今年挽く原木が東風でいつもお世話になっている三田市の西本製材所さんへ届きました。

昨年晩秋から今年にかけて伐った杉・桧です。

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10トントラック満載(多分完全に積載オーバー・・・)です。
今回はもう1台分、合計20トン強の原木をお願いしました。

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産地は和歌山県田辺市。
→ 現地を見に行ったときの様子はこちら

樹齢は約100年ですが、
北斜面で育った木なので、目(=年輪)がよく詰んでいて
決して太くありません。 

今回はこれまでに出荷した在庫を補充する意味で、主に柱材用として
あまり太くない原木を発注しました。

今回の原木を出して下さったのは、奈良県吉野で長年林業を営んでおられる
福本林業さんです。

荷降ろしに立ち会って原木を観ていましたが、福本さんが
「かなり選った中から出しておきましたよ」
と仰っていただけあって、とてもいい木が揃っています。

今月下旬に製材してから、ゆっくりゆっくり時間をかけて
自然乾燥させていくのですが、どんな木ができるか
今からとても楽しみにしています。

いつも東風では割れ止め材を塗布したりしないのですが、
今回の木は割れ止め材を用意しておこうかなぁ・・・と思ったりしています。

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外壁/漆喰塗りの下地

尼崎市の H 様邸現場では、2階外壁の漆喰塗り下地工事が進んでいます。

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まず、道路に面した東面の窓の外部には、左官屋さんがモルタル下地を塗りつける前に、
木製面格子を取り付けるための木製額縁をアルミサッシの外側に取り付けます。

そしてモルタルが瓦の上に落ちて瓦に染みが付いたりしないように、
まずは きちんと養生(↓)。 

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そして、Wラス+フェルト紙の上から、パーライトモルタルを2回塗りつけます。

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長ホゾ+鼻栓に絡むところは、水じまいがちょっと面倒ですが、
うちでいつもお願いしている(株)足立板金ビルドの足立さん
こういうところもとても丁寧に仕上げてくれるので、安心して
お任せしています。

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緑やピンク色に見えているのは養生用のマスキングテープです。
グレー色の部分が防水のための板金部材。

今回左官工事をお願いしているのは、京都・下鴨の山本左官工業さん。
山本さんとは僕が京都の工務店に勤めているときからですから
かれこれ20年来のお付き合いになります。

来週前半には山本左官工業さんが白漆喰金コテ押え仕上げをしてくれます。
山本さんところのスカッ!とした平滑な仕上がりが楽しみです。

またご報告しますね。

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玄関式台-杉のナグリ加工

先週末の土曜日、京都市右京区に行って、尼崎市・H様邸の玄関式台をなぐってもらってきました。

いつもお世話になっている京都市上京区の中儀銘木さんを通じて、これまでにも何度かお願いしているナグリ職人・原田さんがなぐってくれました。

材料はいつもどおり杉です。
厚みは50mm。

今回はクライアントのH様もご家族全員4人で京北町にある原田さんの加工場まで足を運んで下さいました。

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いよいよチョウナによるナグリ作業開始。

端で観ていると、原田さんは何気なくサクサクとなぐっているように見えますが、刃物の切れや力加減、刃の当て方や一目ごとの仕上がり巾など、本当に絶妙な技です。

まずは一番大きい平面をなぐっていきます。
ずっと同じ方向からなぐり続けるのではありません。

なぐることで目を起こしてしまわないように、 木の目を見ながら途中で何度も体の向きを変えてなぐります。

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平の部分をなぐり終えたら、次は側面です。
後ろで板を支えて下さっているのは、原田さんのお父さんです。

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側面もなぐり終えたら、最後に角の面取りです。
面取りもチョウナで一目ずつとっていきます。

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そしてついに完成です。
おとなしくて、なぐる前にはあまり個性的ではなかった板が、ナグリ加工によって
こんなに魅力的な表情に仕上がりました。

鈍い光沢がありますが、表面はハツっただけです。
サンドペーパーもあてていないし、まして何も塗布していません。

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仕上がった後、クライアントのH様ご家族には、靴を脱いで足で
踏んだ時の感触を味わってもらいました。

うちの事務所にもナグリ式台のサンプルを置いていますが、
ナグリの板を踏んだ時の感触はとっても気持ちがいいんです。

H様の息子さんは、その感触があまりに気持ちよかったのでしょうか(?)
ついにべたっとうつぶせに寝転んでしまいました(笑)。

ジャストサイズ!って感じです。

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今回は写真でしか撮っていませんが、過去に原田さんにお願いした折、
動画で撮影したものがあります。
東風のyoutubeページで公開していますので、もしよろしければ
こちらのページで動画も見てください。

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むくり屋根-後編

前回に引き続き、むくり屋根のことを書いてみます。

前回は大工さんによる木下地ができるまでをご紹介しました。
木下地が完成したら、次は瓦屋さんの工事に移ります。

まずは防水層の設置(下葺き)工事です。

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上の写真は瓦の下の防水層となる、ロールトントンを葺いたところです。
ロールトントンは杉を薄~く削った板を縫い合わせたもので、一般的に
よく使われているアスファルトルーフィングなどよりも通気性に優れているので
小屋裏での結露防止のためにはこの方が有利です。

軒先は角度が一旦折れてしまったりすることから、ルーフィングで
部分補強しています。

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瓦を葺き終えた後、棟付近に登って下を見下ろして見たところです。
結構むくりが付いて屋根が全体に丸みを帯びている様子がお分かりに
なっていただけると思います。

ケラバ瓦と破風を棟付近から見下ろしたのが下の写真です。 

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下の画像はちょうど春の嵐が来た翌日に撮った写真です。

足場のシートが風をはらまないようにと、ネットシートをたたんだので
この時は建物の姿がよく見えました。
(今はまたネットシートで覆われていて、これほどよく見えません)

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H様邸の外観は、最終的には木製の面格子がついて杉板張りと
漆喰仕上になるので、町家のようなイメージになります。

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むくり屋根 前編

先月の工事内容ですが、尼崎市H様邸・屋根の工事についてご紹介します。

H様からは
「屋根にはむくりをつけて下さい」
というご希望を伺っていました。

お客様から屋根にむくりをつけて欲しい、と希望されるケースは珍しいです。

ほとんどの場合、ご予算や建物の全体イメージ・屋根葺き材などの事情を
考慮して、むくりをつけるかつけないかをこちらで判断・ご提案する、という
流れが一般的です。

ですから今回のH様のお宅の場合は、建物のプランや屋根の形なども
【むくりがきれいに見えるように】ということを最初から強く意識して設計しました。

棟の位置・建物全体の軒の高さ、下屋の流れ長さや大黒柱の位置まで
【屋根をきれいに見せたい】ということを意識してつくり始めると、いろんな
事柄をそれにむけて統一していく作業が必要になります。

実は東風で建物をつくる上で、最重要なデザイン要素が屋根です。

  屋根をどう見せるか?
  どんな高さにするか?
  棟の位置=大黒柱の位置→構造の組み方は? 
  軒の深さやケラバの出は?
  垂木の寸法や面取りの大きさ、垂木の間隔は?
  ケラバの納まりと軒先の見せ方は?

屋根のデザインを決定する上では、上記のような様々な要素が
絡んできます。

こと屋根に関しては、おそらく
「東風さんはちょっと異常なんじゃないか?」
と思われるくらい、こだわっています(苦笑)。

でも、それだけ重要なんです。

屋根がきれいに見せられたら、もうそれだけで建物のデザインの
半分以上は成功したようなものです。

逆に、屋根がきれいに見せられなければ全てが台無しになります。

ですから、屋根の納め方については現場ごとにかなり頭を悩ませますし、
今現在も別物件の屋根の納まりで頭を悩ませている真っ最中です。

さて、前置きが長くなってしまいました。
そろそろ写真をお見せしますね。

まずは屋根に垂木(たるき)を流します。

東風では垂木にも杉を使うことが多いです。
今回は大屋根の垂木と下屋の垂木、どちらも静岡の杉を
使っているのですが、大屋根の杉と下屋の杉は全く違う材料の
採り方をしています

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これは大屋根の垂木の写真ですが、大屋根では芯持ち節有りの杉を使い、
下屋では芯去り・無節の杉を使っています。

そして、もちろん双方の太さも変えています。
大屋根は遠く離れて見えますから少し太く。
下屋は目の前すぐ近くで見えますから、野暮ったくならないように少し細めにします。

垂木を流したら、その上に化粧野地板を張っていきます。

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化粧野地板を張り終えたら、その上にもう一度野垂木を流して
垂木-垂木の間に断熱材を充填します。

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上の写真右半分はすでに断熱材(グレー色)の充填を終えて、
上から野野地を張っているところです。

左半分はまだ断熱材が入っておらず、野垂木が見えている状態。

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屋根のむくり曲線に合わせて破風を造り出して取り付け、
木下地は完成です。

屋根がゆるやかに弧を描いている(=むくりがついている)様子が
お分かりになっていただけると思います。

明日は瓦工事について書いてみます。

桧の床板と杉の床板を張ってます

尼崎市H様邸では床張り作業の真っ最中です。

今回使う床板の厚みは40mm.
実(さね)の部分は雇い実(やといさね)にして大工さんに加工をお願いしました。

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上の写真は、1階のリビングと玄関に張る桧の床板の加工作業中に写したものです。

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樹齢100~120年の大きな桧から製材した板なので、一番広いものでは巾が240mmもあります。
実物を見ると、住宅用の床板というよりはお寺なんかで使うための板なんじゃないの?っていう印象を受けます。

2階は杉の板を張っています(↓)。 

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大工さんが丁寧に張ってくれていて、大黒柱(桧・八寸角)と床板の取り合い部(↓)などをみても、ビシッとくっついていて一分の隙も無いのは見ていて気持ちが良いです。

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こういうのってすごく嬉しくて、見ているとにんまりしてしまいます(笑)。

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