先月の工事内容ですが、尼崎市H様邸・屋根の工事についてご紹介します。
H様からは
「屋根にはむくりをつけて下さい」
というご希望を伺っていました。
お客様から屋根にむくりをつけて欲しい、と希望されるケースは珍しいです。
ほとんどの場合、ご予算や建物の全体イメージ・屋根葺き材などの事情を
考慮して、むくりをつけるかつけないかをこちらで判断・ご提案する、という
流れが一般的です。
ですから今回のH様のお宅の場合は、建物のプランや屋根の形なども
【むくりがきれいに見えるように】ということを最初から強く意識して設計しました。
棟の位置・建物全体の軒の高さ、下屋の流れ長さや大黒柱の位置まで
【屋根をきれいに見せたい】ということを意識してつくり始めると、いろんな
事柄をそれにむけて統一していく作業が必要になります。
実は東風で建物をつくる上で、最重要なデザイン要素が屋根です。
屋根をどう見せるか?
どんな高さにするか?
棟の位置=大黒柱の位置→構造の組み方は?
軒の深さやケラバの出は?
垂木の寸法や面取りの大きさ、垂木の間隔は?
ケラバの納まりと軒先の見せ方は?
屋根のデザインを決定する上では、上記のような様々な要素が
絡んできます。
こと屋根に関しては、おそらく
「東風さんはちょっと異常なんじゃないか?」
と思われるくらい、こだわっています(苦笑)。
でも、それだけ重要なんです。
屋根がきれいに見せられたら、もうそれだけで建物のデザインの
半分以上は成功したようなものです。
逆に、屋根がきれいに見せられなければ全てが台無しになります。
ですから、屋根の納め方については現場ごとにかなり頭を悩ませますし、
今現在も別物件の屋根の納まりで頭を悩ませている真っ最中です。
さて、前置きが長くなってしまいました。
そろそろ写真をお見せしますね。
まずは屋根に垂木(たるき)を流します。
東風では垂木にも杉を使うことが多いです。
今回は大屋根の垂木と下屋の垂木、どちらも静岡の杉を
使っているのですが、大屋根の杉と下屋の杉は全く違う材料の
採り方をしています
これは大屋根の垂木の写真ですが、大屋根では芯持ち節有りの杉を使い、
下屋では芯去り・無節の杉を使っています。
そして、もちろん双方の太さも変えています。
大屋根は遠く離れて見えますから少し太く。
下屋は目の前すぐ近くで見えますから、野暮ったくならないように少し細めにします。
垂木を流したら、その上に化粧野地板を張っていきます。
化粧野地板を張り終えたら、その上にもう一度野垂木を流して
垂木-垂木の間に断熱材を充填します。
上の写真右半分はすでに断熱材(グレー色)の充填を終えて、
上から野野地を張っているところです。
左半分はまだ断熱材が入っておらず、野垂木が見えている状態。
屋根のむくり曲線に合わせて破風を造り出して取り付け、
木下地は完成です。
屋根がゆるやかに弧を描いている(=むくりがついている)様子が
お分かりになっていただけると思います。
明日は瓦工事について書いてみます。