下の写真は、明石のK様邸玄関にある内装木製建具です。
この建具は玄関に入ると真正面に吊り込まれていて、2階のリビングへ上がる際に開けるメインの建具です。
僕が全幅の信頼を寄せている奈良市の塚本建具さんが製作してくれたもので、表面に使われている板は杉の赤身・しかも柾目だけを使った挽き板(厚み約6mm)です。
中央に細く入っているスリットには透明ガラスを入れてあるため、向こう側にある白壁が透けて見えています。
型ガラスを使わずに透明ガラスにした理由は、この建具を閉めている時に、スリット越しに杉のきれいな幅広無垢板で作った階段が透けて見えるようにするためです。
この細長いスリットがあるために、横張りにした杉板は長さ40cmくらいの短い板を何枚もはぎ合わせる必要があるのですが、ここで塚本さんはとても細やかな気遣いをしてくれています。
上の写真をよく観てもらえればお分かりだと思うのですが、左の板と右の板の木目がきちんと通っています。
これはもともと1枚の長い板であった材料をわざわざ半分に切断した上で、それを木目が通るように配慮して向きや順番を揃えて張ってくれているためです。
予算上の制約から、材料ももっとグレードの低いもので構いませんよとあらかじめ言っておいたのですが、どこに出しても恥ずかしくないような上品な材料を使ってくれている上に、塚本さんは僕が何も言わなくてもこういうとても細やかな気遣いをして下さいます。
東風の仕事の中でも、内装木製建具というのは最も神経を使うとても難しい仕事の一つです。
技術面ですぐれた職人さんはたくさんいらっしゃいますが、完成時のイメージを明確に頭の中に描いて仕事の先読みができる建具職人さんはとても少ないのが実情です。
塚本さんは、いつも東風の仕事を支えてくれている大切な職方です。
東風の建物は、写真では伝わらないこんな細やかな心遣いをとても大切にしています。
きっと写真では半分も伝わらないでしょう。
だからわかりにくいとよく言われるんですが(苦笑)、現場で観て頂くと
「(他社と比べて)どこが違うとははっきり言えないんだけれど、どこか違う」
というところを感じて頂けると思います。
作り手としては、そう感じて頂けるような建物を意図的に作っています。
いやらしさや派手さはないけれど、全体として心地よい華やかさがにじみ出る雰囲気。
それが東風の持ち味です。
今週末(12/11-12)のK様邸完成見学会では、写真では伝わらないそんなところを感じて頂ければ嬉しく思います。
完成見学会については、こちらをご覧下さい。
あなたはどちらが好きですか?
30年後に「そろそろ建て替えようか・・・」と言われる家と
「200年前のおじいちゃんが建てたの」と2210年に言ってもらえる家
素晴らしい建具、ありがとうございます!
塚本さんにお聞きしたところ、この杉板は興福寺の”絵馬”に使う板とのことです。
願い事を書くと叶いそうですね。(笑)
私が言うのも何ですが、玄関周りは”玄関戸”、”階段”、”大黒柱”、”この建具”と見所満載ですね!
Kさん、コメントありがとうございます。
絵馬とは聞いていましたが、興福寺に納品するものだったんですか。
なんだかそれを聞くとちょっと嬉しくなりますね。
大事に使ってください