先週末、飛騨市の宮川町と古川町に行ってきました。
日本民家再生協会の中の部会・日本建築研鑽会が主催した、第3回目の研修会に参加するためです。
今回の講師は、飛騨市宮川町在住の荒木昌平さんという若い大工さんです。
荒木さんは昔ながらの道具を使って製材を行う、杣(そま)職人としての研究・活動も行っており、今回はその実演と説明をして下さいました。
現代において【製材】というと、帯鋸(おびのこ)製材機を使った製材手法がほとんどで、ごくごく稀に大鋸(おおが)という大きな鋸(のこぎり)で製材することもありますが、荒木さんが杣(そま)大工として原木を製材する際に使うのは、斧とチョウナです。
以下にその手順をご説明します。
杣(そま)職人が原木の製材を行う場所は、本来は伐採現場である山なのだそうです。
山の斜面に【りん】と呼ばれる台を下の写真のように組み立て、その上に製材する丸太を積み、1本ずつ製材していきます。
1 (↑)まず斧を使って丸太の側面に切り込みを刻んでいきます。
振り下ろし時の原木への切り込み角度は、原木の軸に対して約45°といったところです。
最初は根元から末口に向かって、次に末口から元口に向かって切り込みを入れます。
2. (↑)切り込みを入れたら、丸太の軸とほぼ平行に斧を入れて、丸太の側面を削いでいきます。
これで1面の荒バツリが完了です。
3 (↑)1面ができたら丸太を90度回して、ハツった面を下に向け、次の面を同じように製材していきます。
(↑)2面ハツり終えたところ。
下面と手前の面にツラ(面)ができました。
ハツった面の詳細はこんな感じ(↑)です。
古民家の梁でこういう雰囲気のものを見られたことがある方は多いのではないかと思います。
実際、こうやってハツった原木を仕上げるためには、この後チョウナでもう少し面(ツラ)を平滑にして、その後さらに鉋(かんな)をかけて仕上げます。
(この日は時間の都合上、チョウナと鉋をかける工程は省きました)
こうやって斧とチョウナと鉋を使って行う製材でないと、下のように曲がった梁を曲面で仕上げることはできません。
製材機や鋸では、この曲面は出せないのです。
どこでも見かけるような何の変哲もない梁のようですが、実はこれを作ろうと思ったら大変なことになるんですよね。
実演して見せて頂いたおかげで、本当によくわかりました。
荒木さん、どうもありがとうございました。
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