今週でいよいよ2009年も終わりですね。
うちの現場は29日まで仕事をしておしまいです。
先週後半から、京都市N邸の現場では玄関の造作工事に取り掛かっています。
この玄関は微妙なバランスを決定するのにいろいろとかなり悩んだのですが、ようやくデザインが決まりました。
当初、この家の玄関はゆるい直線勾配(2寸勾配)をつけた板張りの天井にする予定でした。
しかしこの現場を担当している東風スタッフが、
「玄関の天井を起(むく)らせてみたらおもしろいんじゃないか?」
と言い出して、それならぜひやってみようということになり、原寸型板を作ったり、現場で実際に木を曲げてみたりして、ああでもない、こうでもないと試行錯誤しながら現場のみんなで決めました。
型板を基に、大工のI さんが起こしてくれた天井下地が下の写真です。
上の写真で見ると、本当に微妙なのでよくわからないかもしれませんが、白い矢印の方向に少しだけ起らせています。
(拡大表示すると、なんとなくわかります)
現場で見ても、パッと見ただけでは気付かないかもしれないような、やさしいムクリです
ここには、おとなしい木目の杉の白太小幅板を長手に張って仕上げます。
建築雑誌などを賑わせている建物の写真では、こういうところでいろんな樹種の材料を使ったり、変化に富むようなデザインを施して建築が目立ってしまうような事例をよく見かけるのですが、東風で作るときには極力建物が目立たないように目立たないように、ということを心がけてつくります。
でも、よ~く見ると、細やかな気配りがしてあって落ち着きがある。
なぜそう感じるのかわからないけれど、これといって何と言うことは無い建物なのに、凛とした品がある。
そういう建物に仕上るように、ということを考えてつくってあります。
それはなぜかというと、建物というのは主役であってはいけない。
あくまでもそこに住む人や家人が飾るものなどが主役となるように、それを後ろからじんわりと引き立てる役目を担うのが建物の役目である、と考えるからです。
料理で言うと、お皿みたいな役目ですね。
またそういう控えめな雰囲気をもつ佇まいの建物でないと、自己主張が強すぎて、鼻について飽きられてしまいます。
つくられた当初は良かったけれど、後年になるにつれて建物の格も落ちるし、家人の趣味も疑われるようになるような建物では残念ですよね。
だから、むくりも微妙でいいんです。
材料もおとなしい、控えめなものがいいんです。
人が住み始めて、家の中でいろんなものを飾り始めて、ようやく建物も活き活きとしてくる。
東風ではそんな建物をつくっています。
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