原寸(1:1)でものを考える

先週末の構造見学会の後、クライアントのSさんと照明器具の打ち合わせを現場で行いました。

今回、初めて照明器具の実物大ボリューム模型というものを製作し、現場に持ち込んで検証しました。
( ↑ 模型をつくったのはうちのアルバイトスタッフです)



今回使おうとしているのは、一つ一つがすごく大きな照明器具で、それを合計4つ吊り下げようとしているのですから大変です。
横で模型を見ていた施工担当の輝建設の方も、

「デカっ!」

と驚いていました。
カタログで観ていても大きさは判りませんからね。



実際に現場で吊り下げてみると、吊り下げる高さ・位置・照明器具自身の大きさなどがよく判り、自分自身の頭の中で

「この器具をこういう感じで吊ったらいいんじゃないかなぁ」

と勝手にイメージしていたやり方が、実はあまりよくないことが判りました。

クライアントのSさんも同じように感じ、最終的には当初想定していたのとは全然違ったやり方で器具を付けることが決まりました。

模型、作って大正解でした。



うちでは建物を設計する際に原寸図という図面を何枚も描きます。
原寸図というのは実物大の図面のことです。

原寸図(←しかも原寸図だけは手描き)なんて描いている設計事務所は、おそらく今はほとんど無いでしょうねぇ~。
最近は工務店でもほとんどないでしょう。
( ↑ 時代遅れ?笑)

でも僕は、自分の師から原寸図の大切さを骨の髄まで叩き込まれたので、いくら時代遅れと言われようともこのスタンスは変えません。



建築家ってコンピューターでチャチャッと図面を描いておしまいでしょ?、と信じられている方もいるかと思いますが、やはりいいものを作り続けようと思ったらそんなわけにはいきません。

不経済で地道な努力の積み重ねがないと、本当に美しいものは絶対にできないですね。
( ↑ 実践している人にしかわからないと思いますけど)

先日、京都・曼朱院門跡の屋根の話を書きましたが、こういう屋根のむくりを決めたりする際には、必ず大きな大きな原寸図を広い工場の床で描いて検討し、最終決定します。
時には屋根のボリューム模型を作ったりすることもあるんですよ。
( ↑ ちょっと信じられないでしょう?)



こういう考え方を身につける環境を与えて下さった僕の師には本当に感謝しています。
僕の大きな財産のひとつです。

 

クライアントの要望に応えて満足していただける建物を作っていくことがもちろん一番大切な僕の仕事ですが、上記のようなことをきちんとこれからの人に伝えていくことも、僕に課せられた使命だと自分では考えています。

でもこういうことを身につけるのには、時間が必要なんですよね。
2年や3年では絶対無理です。
今の人にはそこが難しいところです。


   

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4 thoughts on “原寸(1:1)でものを考える

  1. 応援団の K

    うちの家を建てた大工さんは階段の型枠(階段は鉄筋の入ったコンクリ-ト製です)を作るのに、土間に墨付けをして、それに合わせてコンパネを切っていました。
    一種の現物合わせ! これが一番間違いないんだそうです。
    おかげで、数年間は「墨」が消えませんでした。(笑+怒)

    返信
  2. さとう

    kさん、いつもコメントありがとうございます。
    階段はねぇ、難しいんですよ。
    確かに仮枠を作る前には原寸型板があると間違いないでしょうね。
    でも、土間(←文面から察するに、おそらく仕上面だと思いますが)に墨でそれを描いてしまうのはちょっとねぇ・・・。
    大工さん、よほどストレス溜まっていたんでしょうか(笑)。

    返信
  3. 中将

    先日、NHKの「プロフェッショナル 仕事の流儀」に出演されていた宮大工の菊池恭二氏が、
    屋根の反りを原寸尺で決めていました。
    広いプレハブにコンパネを敷き詰めて線を引き、それが原寸図面になっていました。
    大変だなあと思ったんですが、
    昨日の鬼瓦師の話で、
    茂木健一郎氏が「見るだけでなく、質感が、物を実感するには大切」というようなことを言っていました。
    原寸ならではの感触が、頭の中で描く像とは違うというのは、日常でもしばしばあります。
    思っていたよりちっぽけだなあとか、でっかいなあとか。
    当たり前なんだけど、労を惜しまず現場へ見に行くことが大切ですね、と、自身の仕事に振り返って自戒。。。

    返信
  4. さとう

    中将さん、コメントありがとうございます。
    >広いプレハブにコンパネを敷き詰めて線を引き
    いいシーンを観られましたね。
    (残念ながら僕は観ていませんが)
    そうやって原寸を描くんですよ。
    軒の反り具合をもう少しきつくしようとか、ゆるくしようとかは、やはり原寸で判断して決定します。

    返信

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