兵庫県三木市に、どえらい施設があります。
E-diffenceというものですが、どんなものかというのを一口で説明するならば、
「6階建以下の建物を上に載せて、実際に地震を起こして揺らすことができる
実験台」
です。
そんなものがあるのか!って感じでしょ?
一昨日、そこで伝統的な木構造物を実際に揺らしてみる実験が行われましたので行ってきました。
これがその実験棟です。
この中に体育館が10個くらい入りそうな、大きながらんどうの建物です
ここではこれまでにも、こんな実験が行われています。
(↑上記リンクをクリックすると過去の震動実験の動画が見られます。
ただし、ダウンロードに時間がかかりますのでご注意ください
建物はもちろん実物大で、1/2に縮小された模型などではありません。)
今回は上の写真のように、2棟の伝統的な構法で作られた木造平屋の建物をe-diffence 実験棟内に作って揺らすという実験が行われました。
その挙動を調べて耐震研究に活かすというのが今回の実験の目的です。
左右の建物は、屋根を除いては構造的に全く同じです。
屋根を架ける方向だけが違います。
(画像をクリックして拡大してみていただけると、違いがよくわかります)
でも、これだけで挙動にかなりの違いが出ました。
実際にいろんな地震波を入れて揺らしてみると、ギシギシと音を立てながら揺れました。
わかりやすく結果だけを申し上げると、左の建物の方が大きな振幅で揺れ、右の建物の方が振幅は小さかったです。
柱の足元(柱脚)と柱のてっぺん(柱頭)との間の傾き度合い(←専門的に言うと層間変形角)は、
左の建物・・・傾き:1/20 rad
(高さ3.5mの柱が、柱頭部で3.5m×1/20=17.5cm傾いた)
右の建物・・・傾き:1/40 rad
(高さ3.5mの柱が、柱頭部で3.5m×1/40=8.75cm傾いた)
という具合でした。
つまり、揺れ巾の差は2倍ということになります。
なぜこうなるのか?ということを解説すると、物理の講義をはじめないといけないのでここでは割愛します(※)が、これは興味深かったですね。
違いが出るだろうということはもちろん予測していましたが、これほど大きな違いが出るとは思っていなかったのでビックリしました。
木造専門の建築家としては、感じるところが多かったとてもいい経験でした。
○ 建物の重心の高さによる運動エネルギーの違い
○ 荷重および耐力壁の配置バランスと受け方
○ 構造体の組み方(仕口の働き)と抵抗力
○ 地震力によって生じる建物への破壊力の逃げ方
などなど。
これまで頭の中でそれぞれバラバラに断片化されていたパズルが、ピタピタピタっとくっついて、「なるほどなぁ」と一枚の絵になった感じでしたね。
今後の設計に活かしていきたいと思います。
今回の実験を実行して下さった方々に感謝いたします。
すばらしい実験でした。
※ もしこの物理の講義を聴いて(読んで)みたいという方は、
コメント欄にその旨書き込んでみてください。
希望者が多かったら解説しますが、ちょっとややこしいですよ(笑)。
高校物理程度の内容ですが。
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物理の講義を聴いて(読んで)みたい
一番知りたいのは <仕口の働き> です。