キラ(雲母)押しの唐紙と照明 @大阪・適塾

この前の日曜日に、NPO法人・日本民家再生リサイクル協会・近畿地区の主催イベントまちなみスケッチ&フォトハイクに参加してきました。
今回は大阪市中央区の北浜~船場にかけて残る、近代建築を見るのが目的でした。
東京駅の設計者として有名な辰野金吾氏をはじめ、渡辺節氏、安井武雄氏など、日本の近代建築界をリードした、そうそうたるメンバーが設計された建物が実はゴロゴロしていたことにおどろきました。

その中に建つ、緒方洪庵(1810~1863)が蘭学を教えた場所・適塾に寄ったときのことを書いてみます。

 

 

適塾の存在は以前から知っていて、目の前を何回も通り過ぎていたのですが、入ったのは実は今回が初めてでした。
この適塾は、例のお札のオジサン(←そうじゃないやろ!)・福沢諭吉などを輩出し、現在の大阪大学医学部の前身であった(現在の適塾は大阪大学が所有)ことなど、近代日本史が嫌いだった僕にとっては、

 

「へぇ~♪」

 

の連続でした。

 

 

 

まぁ史実はさておき。

適塾の建物は大変手の込んだ品のある造りで、なかなかセンスのある棟梁(←大工)が手がけた様子が感じられました。
全体に少し骨太な感じのする木割りでしたが、そんな中にも各所に繊細さを感じさせるセンスはなかなか素晴らしく、この建物をつくられたのは、きっと名のある方(大工)だったのだろうと推測しました。

取次ぎの座敷の柱は、とても素性のいい杉の4寸角柱できちっとした格を出しているのですが、床柱にアテ錆び丸太(アテとはあすなろの木。錆び丸太とは、甘皮を残して放置・発酵させ、丸太の表面に斑点を残した化粧丸太)を使ってちょっと野趣をもたせ、庭に面した開口部には掛け込み天井を設けて庭への連続感を表現するなど、手が込んでいました。

どの部屋も照明が大変暗く抑えられていたのですが、そんな中でひときわ静かに引き立っていたのが、”キラ押し”の唐紙(からかみ)です。

 

 

”キラ押し”とは雲母(うんも)の粉を顔料に使って、版木を型押しした唐紙のことです。
鈍く銀色に光るキラ押しの唐紙を貼った襖は、現代の空間で用いられるような明るい蛍光灯の下では、その繊細な味わいが全て飛んでしまいます。
ほの暗いろうそくや小さな白熱灯の明かりの下にあって初めて、幽玄な鈍い光を放ち始めるのです。
適塾では、小さな五三の桐の文様が一面に繰り返し型押しされた唐紙でしたが、久しぶりに唐紙本来の持つ繊細な美しさ、谷崎潤一郎が陰影礼賛の中で表現したような、あの空間に通じる日本の美を感じることができました。

 

 

今回はちょっとなんだか文学的な表現になってしまいましたね。
読みにくかったですか?

 

 

 

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世界に、300年先も美しい風景を

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