【木の家-6】 愛嬌のある家

昨日、兵庫県養父市にて施工中の新築住宅の現場、【但馬の家】に行ってきました。
2004年の夏に着工したこの【但馬の家】も、あと一週間くらいで完全に出来上がりますが、昨日は施主であるAさんといっしょに2人でガレージの枕木を据え付ける作業をやりました。
写真のように、たくさんの枕木を土間に敷きならべて、カスガイで止めていくというものです。

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実はこの枕木はすべて、以前この敷地に建っていた、Aさんのおばさんにあたる方の家を解体した際に残しておいた柱や梁などです。
解体された家は俗に言う【古民家】ほど古くはなく、築後約40年という、ごく一般的なちょっと古い木造住宅でした。
ですからこれは一応使い古された【古材】なのですが、【古材】というと一般には

黒光りした太くて大きく貴重な古い木材

というようなイメージが浸透していますので、それらとは区別する意味で僕は【解体材】と呼ぶことにしています。
このような、築造年数があまり経っていない解体された木材の再利用も、これからはきちんと考えて取り組んで行かなくてはいけない問題になるでしょう。
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ちょっと話がそれてしまいました。
普通こういった作業は、


家づくりを請け負った工務店の職人さんに頼んでやってもらうのですが、今回、僕はあえて施主であるAさんと設計者である僕の2人でやることにしました。

それはなぜか?

施主であるAさんにも体を使って家づくりに参加して、苦しみながら楽しんでもらい、思い出を作ってもらうためです。
実際、昨日の作業をするまでには、相当の準備の日数を費やしています。

その1 まず解体材を丁寧に一本一本釘抜きして積み直し、
その2 木材の長さを一定に切り揃え、
その3 それからサンドペーパーで磨いて
その4 対候性のある塗料を2回塗り
その5 そしてやっと昨日の据え付け作業ができる、というわけです。
(もちろん、これらの作業を行うためには施工を請け負った工務店のサポートも必要でした。大変感謝しております。)

昨日は写真のように、Aさんの息子たちも作業現場のまわりを一日ウロチョロして、土や木や釘で遊んでいました。
僕もAさんと2人で朝から晩までかなづちを振っていたので、今日は腕の筋肉がナンカヘンで足腰や体のフシブシも痛い(←もう歳か?)ですが、それはきっとAさんも同じでしょう(笑)。

でも、苦労話はあとになれば必ず笑い話になります。
失敗するほど、あとで話のネタになるものです。
もちろん、建物の根幹にかかわる構造強度や漏水などの基本性能の部分で失敗するなどと言うのは言語道断ですが、仕上げの部分や飾りの部分などを自分でやってみてちょっとうまくいかなかったりするのはご愛嬌、だと思いませんか?
(もちろん、プロはそうはいきません。お金を頂いてする以上は、完璧な仕事が求められて当然ですから)

家にトモダチを招いたりしたときに、こんな苦労話を笑って話すネタがある家を楽しんで使ってもらい、末永く愛着を感じて残してもらえたらいいな、と思います。
完璧で美しくおしゃれな家もいいですが、ちょっとヘンなところもあるけれど、家族にとっては世界に一つしかないかけがえのない家、もナカナカイイんじゃないでしょうか。

家づくりは大金をつぎ込んで行う、人生の一大事業です。
誤解を恐れずに言えば、家づくりにもちょっとしたエンターテイメント性をもたせて、もっと楽しんでいく面があってもいいんじゃないかと僕は思います。

あなたはどう思いますか?

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