ここ数年、古民家のような伝統的な木造・土壁の建物に、高気密・高断熱改修する機会が増えてきました。
当社で運営している 東風の宿(Cochi Stay for Architecture lovers)もその一つです。
東風の宿では、築50年の竹小舞下地+土壁で作られた木造建築物を高気密・高断熱改修しました。
この東風の宿を使ってみてだんだんわかってきたことがあります。
土壁には非常に大きな蓄熱性能と調湿性能があり、これに高気密・高断熱性能を付加すると、特に寒暖差が大きくジメジメした梅雨の時期には以下のような使い方がとても快適かつ有効です。
夜間の気温が20℃以下まで下がり、昼間の気温が30℃前後まで下がるような梅雨の時期での使い方を説明しますね。
まず夜間には、窓を開けて外気温で建物を冷やします。
もし雨が降っている場合でも、お構いなく開けてしまいます。
(庇があって雨が室内に入ってこないことが前提)
すると下の図のように、建物内各所にある土壁が夜間の冷気で冷やされ、冷気を壁の中に貯め込みます。
(青い壁=土壁を表しています)
そして朝になり、日が昇ってきたら、気温が上がり始める前にすべての窓を閉めます。
窓は閉めるのですが、室内の空気を入れ替えるための換気扇はつけたままにしておきます。
すると高気密・高断熱化された建物の場合、断熱材のおかげで熱気が建物の中にほとんど入ってこなくなり、土壁の中に採り込まれた冷気が建物内部の温度を低いままで保ち続けるので、まるでエアコンを掛けているような快適な温度になります。
また先ほど、夜間に雨が降っていても窓を開けてしまうと書きましたが、雨が降っているときの外気の湿度は80% を超えます。
窓を開けていると室内の湿度も80%超になってしまうのですが、建物が冷えてから窓を閉めると、今度は室内の土壁が自動的に調湿機能を発揮し始め、建物内の湿度がどんどん下がっていきます。
つまり空気中の湿度が乾燥した土壁の中に入っていき、室内の湿度が適切な状態にまで下がっていくのです。
このとき、エアコンは使いません。
もちろん不快なら使ってもいいのですが、待っていれば勝手に土壁が余計な湿気をどんどん吸ってくれます。
今年の梅雨は、この温度と湿度の変化を詳細に調べ、実際にどのくらいの数値になっているのかデータを取ろうと思っています。
データが取れたら、またここで公表しますね。
お楽しみに。
高気密・高断熱化されていない古民家ではどうなのか?
東風の事務所も土壁がほとんど残っている古民家なのですが、高断熱・高気密工事は行っていません。
同じ時期に同じ性能を発揮してくれるか?と言われると、少なくとも東風の事務所では効果は半分くらいかな、という感じです。
やはり断熱性能・気密性能が低い建物では、外気の流入が起こってしまうため、雨の日にはどうしても高湿度になりますし、貯め込まれた冷気が失われるまでにかかる時間も随分早いです。
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