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【民家】を通じて日本の歴史が見えるようになる

住まいを4寸で

最近読んだ本の紹介です。
『住まいを四寸角で考える』 安藤邦廣 著

本のタイトルを一見すると、著者による設計技術論的な内容か?とイメージしがちですが、そのような内容はごく一部に過ぎません。
むしろ、これからの地球環境を「民家」という視点から紐解いて考える緒となる重要な知恵を授けてくれる本だと、僕は強く感じました。

この本には、日本の豊かな森林資源に根ざしたこれまでの住文化の歴史の変遷が、俯瞰した視点からまとめられていて、とても深い示唆に富んでいます。
そのことを著者はわかりやすいエピソードで紹介して下さっていますので、ここで少しご紹介します。

○ 古来(~15世紀)戦災が多かった西日本では森林資源が枯渇したため、土壁の民家や焼き物の器に代表される土の文化が発展したのに対し、
東日本では戦災が比較的少なかったため、豊かな森林資源に支えられて板壁の民家と木地の塗り器が一般的であったという話。

○ 実は食物として、樹木は優れた建築用材として縄文以来長年にわたって用いられてきた栗の木が、明治以降の鉄道施設によって枕木として大量に伐採されたために日本の住文化の表舞台から姿を消してしまった話など。

こうした歴史的な俯瞰に基づいて、著者は

「都市部への民家の移築再生を安易に進めてはいけない」

という警鐘も鳴らしています。
それはこれまでに長年かけて培われてきた、地域固有の文化の消滅を助長すると同時に、地方経済のこれからの永続的な発展にも決して寄与しないという観点からです。

僕もこの本に触れてから、民家の変遷を日本の歴史と並列して捉えられるようになり、おかげで民家再生という行為を今までより一段高い視点から俯瞰できるようになった気がします。
オススメの一冊です。

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