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新材なのに古い木?

ブログの更新が1週間も滞ってしまいました。

静岡へ行って、帰ってきてからバタバタとクライアントとの打合せやその準備が数件重なり、更新ができなかったためです。
いつも見に来てくださるみなさん、どうもすみません。
そしてありがとうございます。

ご報告が遅くなりましたが、11/9(金)(←新月の前日)に今年の新月伐採作業@静岡を無事完了しました。

上の写真は、静岡市葵区梅ヶ島(うめがしま)の伐採完了現場の状態です。
斜面に横たわっているのが、今回の新月期に伐採した木材です。
(全ての画像はクリックすると拡大表示できます)

このままの状態で、山の斜面に来年の3月まで(4ヶ月間)寝かせておいて葉枯らし乾燥させます。

今回この山では、90年生(←植えてから90年経っているという意味)の杉と桧の林で伐採を行いましたが、これからさらに生長させる木を残しながら、必要な本数だけを伐採しました。
立っている木は今回伐採せずに残した木です。
これを間伐といいます。
(→全部の木を伐採することを、皆伐:かいばつと言います)

この山は今後当分は伐採せずに山の管理を続けていきます。
あと110年維持していって、200年生くらいの山ができるといいなぁ、などと勝手な夢を膨らませています(笑)。

伐採後の現場の状態を確認するために、NPO法人・新月の木国際協会の現認者・大山さんが小田原から再び来て下さいました。
(大山さん、何度も足を運んでくださってどうもありがとうございます)

倒した木と大山さんを比べると、大山さんが小さく見えます(笑)。
でも本当に、木は立っている時(←伐採前)は割と細く感じるんですが、いざ倒してみると大きいんですよね。

今回は静岡市内の2つの山で伐採を行いました。

一つは上述の梅ヶ島。
ここは僕の曽祖父(ひいおじいちゃん)が90年前に植えた木です。

もう一つが静岡市葵区坂本という場所にある、山田さんの山です。
この山田さんがおもしろいことを言っていましたのでご紹介します。

上の2枚の写真を見てください。
どちらも同じ山(←山田さんの山)に生えていた杉の木ですが、樹皮の表面が違いますよね?

左は50年生、右は70年生の杉です。
左の杉は樹皮が赤々としていますが、右の杉は樹皮の表面にびっしりと薄く苔が生えて緑色になっています。
( ↑ 苔が生えていても病気などで木が傷んでいるわけではありません。
全く健康な状態です)

山田さんはこれを、「若い木、古い木」と言っていました。
50年生はまだ若いのです。
そして70年生はそれに比べて古い木だと言います。

これらの木は製材すると、こんな風にどちらも同じく真新しい木材=新材(※)になります。
(※) 古民家などを解体すると出てくる【古材】に対して、古民家業界では【新材】と呼ばれます。

でも実際は、植えてから70年、90年、100年以上と長い時間を生き抜いてきた、新材なのに「古い木」なのです。
( ※ 昨年は110年生の木を伐採しました。
来年はまたこの110年生の山を伐採する予定です)

市中の喧騒が届かない、静かな山に入って古い木と対峙していると、いろんなことを感じます。
木はとても優しく黙っていて何も言いませんが、

遠い祖先の恩恵を受けて今僕たちが木を使わせてもらえること
山の中に生えている様々な植物やそれを食べて育っていく動物たち
そして山に降り注いだ雨水が土の中に染み込んで浄化され、
人間を含めた全ての生物がそれによって生かされていること

などを無言で表現しています。
こちらがそこに意識を向けなければ気付かない、とても静かな言葉です。

自分がいかに小さな存在かということを感じ、同時に生かされている者としてこの豊かな自然環境を大切に守っていくために自分に何が出来るだろうか?ということに、自然と思いが向いていきます。

今回何度も何度も山に入って、とても大切なことを改めて木に教わりました。

もちろん、こういうことは頭ではわかっていたんですけどね。
うまく表現できませんが、腑に落ちたというか、頭だけではなく心と体に染み込んだという感じがします。

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静岡へ行ってきました

先週末、静岡へ行ってきました。

中学時代の同級生の結婚式へ出席するのに合わせて行ったのですが、11月に伐採する山の下見と打ち合わせをするためです。

(結婚式では懐かしい面々に会うことができました。
友揮、加奈子さん、おめでとう!)

上の写真は、11/3から伐採を行う現場です。

ここは僕の曽祖父が植えた山だそうで、植林後約90年経過している山です。
今回伐採してくれるのは僕の従兄弟なので、木を植えてから伐採するまで4世代に渡って手をかけていることになります。
(曽祖父→祖父→叔父→従兄弟の4代)

今回は皆伐(※)するのではなく、間伐(※)を行って木材を出すので、まだ今後も残った木は生長し続けます。

従兄弟とは、
「これからきちんと残していって、200年生ぐらいの山に育ってくれたらうれしいね」
ということも話しました。

(※) 皆伐/かいばつ・・・立っている木を全部伐ってしまうこと
間伐/かんばつ・・・木を残しながら間引き伐採をしていくこと

山で拾った杉と桧の葉っぱです。

立体的に葉が生えている左の葉っぱが杉。
茶色い実がついていてぺたっとした平面的な右の葉っぱが桧です。
(全ての画像はクリックすると拡大表示できます)

上述の山とは別の場所ですが、静岡市内のもう一ヶ所の山で今回同時に伐採します。
その山も今回見てきました。

この山の土壌は栄養分が高く、うちの従兄弟の山よりも育ちが早い環境でした。
土壌の違いに起因するものでしょうが、おなじ静岡市内の杉とはいえ、樹芯の色が全く違っていたのが興味深かったですね。

冒頭でご紹介したうちの従兄弟の山は安倍川(あべかわ)流域の谷にあるのですが、こちらの山は藁科川(わらしながわ)流域の谷にあります。

藁科川流域の杉は夏に見学に行った、天竜杉の色にそっくりでした。
一山超えるだけでこんなに違うものかと驚きました。

これは枝振りがとても美しい桂の木です。

川のそばの生態系を守る目的で整備している水辺林(みずべりん)という林の入り口に立っています。

この水辺林を川に沿って少し上っていくと、山葵田(わさびた)がありました。
下がその写真です。

山葵田というと、「田んぼのようなところか?」と思われそうですが、実際はそうではありません。
サワガニが大喜びしそうな、チョロチョロと浅い水が流れる川床を細かい砂利でつくってやり、そこにわさびを植えている畑という感じです。
この山葵田にもサワガニが顔をのぞかせていました。

静岡市内の山中では山葵田を割とよくみかけますが、他の地域ではなじみが薄いでしょうね。
僕は静岡出身(かつ山葵が大好物)なので、山葵田を見るとうれしくなってしまいます。

実は、僕は7年前(西暦2000年)に独立した当初から、

「家を建てる建築主の方にぜひ山で木を伐るところから立ち会っていただいて、その木を使って家を建てたい」

と考えていたのですが、7年かかってようやくそのプロジェクトに着手できるようになりました。

そして今回伐採する木材は一般的にはほとんど知られていないのですが、質がとても良い木材なので自信を持ってお奨めできます。
( ↑ 当然、数には限りがありますが)

もっと広く、静岡の良い木材をみなさんに知っていただきたいという気持ちと、あまり有名になりすぎてもたくさんご提供できないので秘密にしておきたい(笑)という気持ちが入り混じっていますが、見ていただければその良さは一目瞭然です。
現場に来ていただいた方にはきちんとご説明しますのでどうぞお楽しみに。

下記サイトでお知らせしているように、新月伐採の現場を見学していただける機会を設けていますが、今回の見学会に関しては正直あまり力を入れて宣伝しておりません(笑)。

なぜなら、実を言うと本当に大切にしてくださる方だけにしかご紹介したくないものだからです。

今回も、京都からわざわざクライアントのNさんが静岡の伐採現場まで足を運んでくださるのですが、Nさんがゆっくりと林業家と話をしてもらえる時間もとりたいので、その日はNさんだけをご案内することになっています。
( ↑ 見学会とは別の日です)

なんだかすごく贅沢なようですが、年間2棟分しか採れない木を使っていただくのですからこれは当然のことです。
きっとご満足いただける、かけがえの無い家をご提供できると自負しております。

今年伐採する木材はあと一棟分残っておりますので、興味のある方はどうぞお早めに。

【お知らせ】
11/3(土・祝)に静岡市の山で
新月伐採現場見学会を開催します。
詳しくはこちらをご覧下さい。

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造作材加工の準備

昨日はうちのスタッフを連れて和歌山に行ってきました。

昨年末に静岡で新月の時期に伐採した木材のうち、辺材の部分から造作材として使える木材をピックアップして記録として残すためです。

上の写真がその積み直しをして下さっている時の様子です。
板材を、節が少ない化粧材と、節が多い一等材とに分類し、板巾・厚み・長さを調べて再度積み直しました。

このように、板一枚一枚にそれぞれ番号札を打って記録しました。

現在、加工原寸図を描いているところなのですが、それが出来次第(多分今月末)、これらの材料を加工してもらう工場へ持って行きます。

現在木材を置かせていただいている、和歌山の東(あずま)建設工業の東さんと仲尾さんが手伝ってくださったおかげで、一日かかる予定だった作業が午前中で終わりました。
(東さん、仲尾さん、どうもありがとうございました)

お礼にお昼からは、お客様に喜ばれてなおかつ売れるホームページを作るための秘訣をたっぷり東さんに伝授しました。

( ↑ 秘訣というと、裏技みたいないかがわしいもののように思われがちですが、
全然そんなことはなくて、ごくごく当たり前の原則なんですけどね。
でも結構そこをみなさんきれいにすっ飛ばしたりされているわけです)

「そんなこと、誰も教えてくれへんから、すごい勉強になったわ」

と東さんも喜んでくれて、こちらもお役に立てて嬉しい限りです。
これから東建設工業さんのサイトがどのように変わっていくか、みなさんどうぞお楽しみに。
(あと1年くらいかかりそうですけどね)

註:当方ではホームページ作成業務などは一切請け負っておりませんので
そのような依頼は持ち掛けないで下さいね。
いくら頼み込まれてもできませんので悪しからず。

上記の和歌山に置かせていただいている木材は(新月伐採+葉枯らし)材ですが、今年も11月の新月期(下弦の月から新月にかけて)に静岡市で杉の木を伐採します。

詳しい日程は、現在山側と調整中なのですが、11月3,4の連休に合わせて見学していただける機会を作りたいなぁと画策中です。
ここ数日のうちには発表できると思いますので、決まり次第お知らせしますね。

とくにうちに設計などを依頼するつもりは無いけれど、
「新月伐採ってどんなことなのか見てみたい」
とか
「山の林業家の仕事ぶりを見てみたい」
「静岡に行ってみたい」
「近くなので、ひまつぶしに行ってみようか・・・」
という方など、ぜひぜひお気軽にご参加下さい。

うちのクライアントの皆様にもすでにこの計画は何度かお話していて、何組かの方は興味を示して下さっています。

うちに使われているこの木は、誰が今まで育ててくれたのか?
どんな山で育ってきたのか?

実際に家を建てる木材を、山で伐採するときから立ち会えば、それがあなたの心に一生残ります。
その後山で4ヶ月かけてゆっくり葉枯らし乾燥し、それを山から降ろして製材する。

そして大工さんが刻んで現場へ持ち込んで家を建てる。

この流れは、現代の一般的な家づくりではある意味おろそかにされ、見せないようにしてきた過程です。
( ↑ 昔はそうではなかったはずだと思うのですが)

僕はできるだけこういう過程を、クライアントのみなさまに見ていただきたい。
そして家に対する愛着を深めていただいて、代々大切に家を使い続けていただきたいと考えています。

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静岡から材木が届きました

静岡材-1


 


 




※画像は全て、クリックすると拡大表示できます




昨日静岡より、とても楽しみにしていた材木が届きました。
これまでにこのブログでも何度かお伝えしている()、新月伐採材です。

        この材木が育った山はココ
  2006.11 この材の伐採時の記事はこちら
  2007.03 葉枯らし乾燥後、この材を山から出した時の記事はこちら
  2007.06 この材の製材した時の記事はこちら



この材木はいつも大変親しくさせて頂いている、和歌山市の友人・東建設工業の東さんが自社の工場内にて預かって下さることになり、静岡から和歌山市へ届けてもらいました。
(東さん、どうもありがとうございます)


静岡材-2


 


 




ユニックにて荷降ろし作業中。
長さ9m、太さ30cm角の木材はやはりデカイです。
今回運んだ材木はたった9本分の原木の根元の部分から製材した木材(柱・梁と板材)ですが、総重量は約3トンありました。




今回木材を届けてくれたのは運送屋さんではなく、この木を作ってくれた山の林業家・製材をして下さった工務店の方・そして静岡で彼らと一緒に林業家グループ(SGECグループ認証)の一員として活動されている方の3人です。

皆さんお忙しい中、わざわざ今回の為に時間を作ってくださって来て頂けたことはとてもうれしかったし、深く感謝しております。
お昼ごはんを一緒に食べたときにもいろんな話ができてとても良かったです。



先述の東さんもとても木が好きな方なので、荷降ろしが終わった後、静岡の3人と東さんも一緒に、届けていただいた材木を見ながら木の話をしました。


静岡材-3


 


 




今回、静岡からわざわざ彼らが来てくださったので、いい機会だと思いいろんな産地の杉の木のカットサンプルを持参して比べて見てもらいました。
(静岡産、奈良県吉野産、高知県梼原産、宮崎県産)

近畿では四国や九州の杉も割とよく流通しているのですが、静岡では西の方の木はあまり眼にする機会がないので、静岡のみなさんは四国・九州の杉の木をとても興味深く見ておられました。
そして和歌山の東さんは逆に静岡の杉を興味深く見ておられました。


静岡材-4


 


 


 


 


 


 


 


 


上の写真がその4つの産地の杉をそれぞれ並べてみたものです。
一番下が今回届いた静岡の木材。
その上に奈良県吉野産、高知県梼原産、宮崎県産材と積み上げています。

上に行くほど西・南へ産地が移っていくように並べてみました。
画像をクリックして拡大して見ていただければ、産地によって年輪の詰み具合(年輪の巾)が違う様子がよくわかると思います。
一口に 『 国産の杉 』 と言っても、色々と個性があります。



秋にはこの実物を手にとって見比べていただける機会を設けるべく、現在計画中です。
詳細が決まったら、またこのブログでお知らせしますのでどうぞお楽しみに。


 


【 お知らせ 】
9/15(土)、16(日)の2日間、神戸市北区で木の家の完成見学会を行います。
詳しくはこちらをご覧下さい

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(新月伐採→葉枯らし→)ついに製材しました

ブログ更新なかなかできずに申訳ありません。
現場も片付いて落ち着くと思ったのになかなか・・・です。

昨日、静岡に行ってきました。
昨秋11月末に新月伐採後、4ヶ月葉枯らし → 今春3月末に山から下ろしした杉の丸太をついに製材してきました。

いろいろと詳細にご報告したいことが山ほどあるのですが、今日は時間に追われているため簡単にしておきます、詳しくはまた改めて。

下に掲載した写真は、長さ9mの丸太から270mm(9寸)角の大黒柱を製材しているところです。
画像をクリックして拡大表示してみて頂ければ、美しい杢目の様子なども詳しく見ていただけると思います。

↑ 手前にいる女性と比べてみていただければ、
丸太の長さ(9m)が良くわかるでしょ?

節も無く、とても美しい杢が出ました。

年輪の詰み具合は最高です。
申し分ありません。
天然材ならいざ知らず、これでも植林材ですよ。

僕は奈良県吉野産の木材をよく使いますが、ほぼ同じレベルです。
静岡材の実力恐るべし、です。
これも育った山の環境がとても良いからなんですが・・・。

環境が良いというより、正確には厳しい、と言ったほうが正確ですね。
今回の木が植林されているのは、土地がやせていて北斜面で、とても木材が育ちにくい環境です。
その中で鍛え上げられて育つので、このような良材が採れるのです。

今回取れた製材品はこれから1年間天然乾燥させて、来年にはどこかの現場で使われます。

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安定供給のために

昨年夏以降、木材価格が世界的に上がってきています。

個別の樹種によってその価格上昇要因は異なりますが、全体的な概況は下記のようなものです。

○ ロシア産赤松の出荷量 減(資源政策による)
○ 中国・インド・中東諸国での木材需要拡大
○ ユーロ高

木材だけでなく、金属・原油等の資源高騰により、各建材メーカーも昨年夏以降相次いで価格改定を実施してきていますので、建築資材の価格は全体に値上げの方向で推移しています。

そして、値上げだけで済むならまだ状況はマシな方で、品物によっては「品薄でいつ入荷するかわからない」という商品もあります。



このような世界的な品薄・価格上昇の影響を受け、昨年末には国産木材丸太市場でも単位体積あたりの木材価格が上昇し始めました。

今まで世界中から輸入することで入手していた商品が入荷しなくなってきた
→ 国産材に切り替え始めた
→ 引く手あまたになって国産木材価格が上昇
という流れは当然ですね。

現在のところ、うちの主な取引先(←各種建材は別。国産ムク木材に限る)は、木材の価格を据え置いたままで販売してくれているので、安定・安心して供給ができますが、今後は少しずつ価格が上がっていくでしょうね。

ここで商魂たくましいセールスマン(というか2流の営業マン)は、
「今のうちに早く買っといた方がお得ですよ」
などとまくし立てるのでしょうが(笑)、僕はそんなことは言いませんし、またそのような目的でこの記事を書いているわけではありません。

当方ではあなたの大切な家作りに応えるために、市場価格に不必要に踊らされないような木材供給先の確保・山での立木買い(新月伐採~葉枯らし~天然乾燥)による家作りを実現できる体制を整えていくべく、少しずつ準備を進めています。

これまで僕がこのブログを通じてでお伝えしてきたことを読んでいただいているあなたには、きっとなんとなく伝わっていますよね。
来週の水曜日には、昨秋伐採した杉丸太の製材をしに静岡へ行ってきます。
見学ご希望の方はさとうまで遠慮なくご連絡下さい


来年以降をどうぞお楽しみに。

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やっと読みました

数年前からずっと「読みたい!」と思っていた本を、やっと読み終えました。
それは新月伐採に関する本で、オーストリア人のエルヴィン・トーマ著『木とつきあう智恵』です。

to-ma

この本の中で著者は、木を伐採する日(正確には、その時の月の満ち欠けの状態と季節)が伐採・製材後の木材の性能に大きな影響を及ぼす、ということについて書いています。
自然のリズムに沿った時に木を伐採し、時間をかけて自然な方法で木材をゆっくり乾燥させてから製品化し、木がきちんと呼吸できるような状態で使うということの大切さと、その驚くべき効用についてまとめています。

建築の専門家ではない、一般の方にも理解しやすいような平易な表現で書かれている本ですので、興味がある方にはお薦めです。

先月末に、伊勢で職人がつくる木の家ネットワークというグループの総会があって僕も参加してきました。
(僕もこのグループのメンバーに加えていただくべく、現在審査手続き中です)

この時、静岡県浜松市の石川木材さんが比較実験された、新月伐採材のサンプルを見せていただくことができました。
とても興味深かったのでその時に撮った写真をご紹介します。
(註:この実験を行ったのは僕ではなく石川木材さんです)

下の写真は、満月の時に伐採した木(左)と、新月の時に伐採した木(右)とをほぼ同じ日数だけ葉枯らし乾燥させ、杭状に加工して土の中に埋めて放っておいた結果です。

左の木の根元はシロアリに喰われてしまってボロボロですが、右の木(新月伐採)は何ともありません。
※ぜひ画像をクリックして拡大してご覧下さい。

新月材実験-2

下の写真も、伐採する時期が違う2本の木を放置してカビの入り具合を比較したものです。
左の木にはカビが入って青黒くなり割れも入っていますが、右の木には全くカビが入っていませんし、割れもありません。

新月材実験-1

新月伐採は、まだまだ科学的にはきちんと証明しきれていない部分がかなり多いようですが、日本でも林業家が昔は同じことを実践していたようです。
昔の人は、やはり自然に逆らわずに生きる能力に長けていたんでしょうね。
脱帽です。

と、ここまで書いて思い出しましたが、うちの息子(4歳)は新月の日に生まれてきました。
僕は気付かなかったのですが、僕の母親が「新月だよ」とおしえてくれました。
彼も何か影響を受けているのかも? 

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11/21(火)に新月伐採を実施します【見学可能】

梅ヶ島

11月21(火) に、静岡市の山奥・梅ヶ島(うめがしま)という所で樹齢100年超の杉の木を新月伐採します。
↑11/21は新月(しんげつ)の日です。

僕のいとこが静岡で林業家として活動しているのですが、昨年彼の森がSGECという森林認証制度の認定を受けました。
その彼の森で、新月の日に樹齢100年超の杉の木を伐採します。

樹齢100年超というと、西暦1800年代末期に植えられた木です。
明治維新後ちょっと経過したあたりの時代ですね。

新月の日は、地球と月の位置・引力の関係から、木材の中の含有水分量(含水率と言います)が一番少なくなります。
その含水率が一番低い時を狙って伐採すれば、乾燥しやすく、腐りや虫の害なども少ない良質な木材が得られる、と言われています。

今回伐採する木材は、伐採後来年の2月ごろまで山で葉枯らし(はがらし)乾燥+天然乾燥させ、来年の秋以降にうちで設計させていただく家を建てる方に使っていただくための柱または桁用の木材に充てます。

葉枯らし乾燥というのは、伐採後、枝や葉っぱをつけたままで山に2~3ヶ月放置し、木材の中の水分を自発的に抜かせて乾燥させるやり方です。
伐採された後も葉っぱがついたままだと、木材は葉っぱを通じて呼吸し、木材中の水分を少しずつ吐き出していきます。
それと同時に根っこから水分を吸い上げようと頑張るのですが、伐採されてしまうと根から水分を吸い上げることができないため、木材中の水分は抜ける一方。
それで少しずつ木材が乾燥していくというわけです。
(こう書くと、ちょっと残酷な感じがしますね)

最近は納品・工期短縮(=効率化)のため、葉枯らし乾燥が行われるケースは稀です。
通常は伐採直後に枝を落とし、幹をぶつ切りにして麓へ降ろし、製材した後、80℃~130℃の人工乾燥炉に入れて2~3週間で強制的に木材中の水分を抜いて木材を使います。
この工程を木材の人工乾燥といいます。

この人工乾燥に対して、時間をかけて(最低1年以上)ゆっくりと乾燥させる方法を天然乾燥(葉枯らし乾燥は天然乾燥の過程の一つ)と言いますが、天然乾燥させると本来の木の色艶がそのまま残ってとても美しい木材が得られます。
人工乾燥させると、どうしても日焼けしたような色になってしまって、少し木が黒ずみます。
並べて比べてみると、その差は一目瞭然です。
まぁ、なかなか比較して見る機会が無いので、実感していただくのはちょっと難しいのですが。

人工乾燥すると、木の脂分が抜けます。

乾燥過程を終えた後の人工乾燥炉に実際に足を踏み入れてみるとわかるのですが、乾燥炉の床は木から抜け出した脂でヌルヌルしています。
そして人工乾燥された木材を実際にのこぎりで切ってみたり、のみで刻んでみるとわかるのですが、人工乾燥された木材はサクいというか粘り気がありません。

一般には、人工乾燥による強度低下・耐久性の低下は全く問題ないとされていますが、僕はちょっと懐疑的なスタンスです。
(↑こう言う人たちは、僕だけではなくかなり多くいらっしゃいます)

と、前置きが長くなってしまいましたが、実際に自分の現場で使う木材は、3年以内(2009年秋以降)には全ての構造材を新月伐採 + 天然乾燥材100%でやりたいなぁと考えています。
それに向けた準備・実験として、今月末の新月の日に伐採をすることにしたわけです。

今年切った木材は、来年の秋まで乾燥させて、太さ8寸角・長さ6mの通し柱や、長さ9mの一本ものの桁として使うつもりです。

伐採には静岡のスタッフのみなさんのご協力が必要なこともあり、残念ながら平日の実施となりますが、もし立ち会いたいという方は見学していただくことができます。

見学をご希望される方は、さとう(info@mokuzo-architect.jp)まで
【新月伐採見学希望】と書いてメールを送って下さい。

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木の香りがする家

先日、うちの事務所にお招きしたお客さんがこう言いました。
「さとうさんの事務所に入った途端、すごく木の香りがしました」
僕はそうでもないと思うんですが、初めて来た方がそうおっしゃるのですから、きっとそうなんでしょう。

うちの事務所は普通のマンションの中にありますので、木造でも何でもないのです。
ただ、事務机脇のカウンター(長さ4m×巾60cm)と、打ち合わせ室(和室)の座卓は杉の板で作っています。
他にあるのはサンプル用の木材だけですから、きっとこれらの板が木の香りを発散しているんでしょう。

その話を聴いていて思い出しましたが、うちで設計させてもらったお宅の中はとても木の香りにあふれています。
使う樹種によってその香は異なりますが、僕が個人的に好きなのは杉の香りです。

うちで設計する家では、構造材(柱とか梁)を全て露出させるので、もちろん構造材からも木の香りは出ているのですが、どうもその家の香りを最終的に強く左右するのは、床材(フローリング)の樹種によるようです。
うちで設計させてもらった六甲山麓の家(Wさん宅)や小花の家(Iさん宅)では、どちらも吉野杉のムクの床板を張っているのですが、2軒とも同じことを奥様から言われてビックリしました。

「さとうさん、うちの子供とか私がよそのお宅に遊びに行くとね、『○○さんのご家族が来たら木の香りがする』って言われるんですよ(笑)。
住んでいる当の本人達は、家の中に入っても木の香りがするかどうかなんて、慣れてしまって全然感じていないのにね。」

初めてWさんの奥様からこの話を伺った時は、
「いや、それはちょっと大げさな言い方なんちゃうかなぁ。半ば冗談やろ。」
と思ったのですが、さすがに2回しかも別の方から同じことを伺うと、
「あっ、それってホンマなんや!」
と確信に変わりました。

杉の床板は柔らかいので住み始めるとすぐ傷だらけになりますが、香りがとてもさわやかだし、木目もはっきりしていて嫌味がないので僕は大好きです。
僕も自分の家を建てる時は、きっと杉の床板を張るのだろうと思います。

しかしいつになることやら・・・。

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