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「できない」と言わないこと

僕が大学を卒業して就職してから少したって、自分の師(当時の社長)から教えて頂いたことがあります。

それは、決して「できない」と言わないこと。



工務店に勤務して2年目の冬。
3.5トントラックに材料を満載して、現場のある長野市まで1人で走っていけ、と言われたことがありました。

現場の都合で、どうしても夜に出発して明朝までに到着しないといけない。

しかも天気予報によると、明朝の長野市内は雪。

当時の僕は3.5トントラックの運転すら数回しかしたことがなく、しかも運転するトラックのタイヤはノーマルタイヤという状況で、僕がまず発した言葉は

「社長、無理です。僕にはできません。」



その時、社長に一喝されました。

できない、と言うな!
できない、と自分で言ってしまうとそこで全て終わってしまい、何も前に進まなくなる。
どうしてできないのかという理由を考え、ならば逆にこうすればできるのではないか?と
考えを巡らせろ。
そしてダメだと思ってもとにかくやってみろ。
やる前から無理だと諦めるのではなく、やりながら考えろ!

と。



そう言われて僕は、正直ものすごく怖かった(←雪道&ノーマルタイヤ&3.5トントラックが)のですが、何とか自分を奮い立たせて深夜3.5トントラックを走らせました。

明朝、無事に現場へ到着して荷物を降ろし、その足で京都へ帰ってきました。

この時教わったことは強烈に頭に残っていて、今でもとてもありがたく思っています。



相手の要求どおりでは、どうしてもできないという状況はよくあります。
しかしそこで

○ どうすればできるのか?
○ できないと思っているのは、自分が勝手に設定した枠組の中だけで
  考えているからではないのか?
○ こういうふうに変更してもらえれば概ね要求どおりにできるんだけれど・・・ということを
  相手にぶつけて交渉してみてはどうか
○ ダメだと思っても、まずはやってみる

というふうに少しずつ考えを巡らせて、何とか相手が望む形を実現してあげようと努力する姿勢が大切なんだということを学びました。



あの時、社長はきっと
「こいつにはこれをやらせて自分自身の殻を破らせないとアカンなぁ・・・」
と思って、言って下さったのだろうと思います。

上記以外にも前職場では、大変貴重なこと(精神面・技術面とも)をたくさん教わりました。
僕は本当に素晴らしい上司に恵まれたと、今でも深く感謝しております。




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なぐり加工の見学をしたい方、いらっしゃいますか?

6/23(火)の夕方に、京都市内で杉の化粧ナグリ加工の実演見学を予定しています。

↑ ナグリ加工とはこのような仕上のことです。

京都市内の銘木屋さんのご協力のもと、京都市N邸に使う玄関式台用の杉板をなぐってもらいます。

チョウナという道具に丸刃をつけてなぐるのですが、今回は加工の工程をビデオで撮影し、久しぶりに動画としてYoutubeにアップする予定です。

あまりたくさんの方が来られると、銘木屋さんにもご迷惑がかかってしまうので3名程度に限らせていただきます。

【日時】 6/23(火)16:30開始、作業時間は30分程度の予定

見学ご希望の方は、東風/佐藤仁までご連絡下さい。

【お知らせ】
2008年晩秋の新月期に伐採・葉枯らし乾燥させた静岡産の
杉・桧を使って下さる方を募集しています。詳しくはこちら

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大津市T邸がもう少しで完成です

滋賀県大津市で建築中のTさんのお宅が完成に近づいています。

まだ外構工事が若干残っていますが、内装はほとんど仕上がり、一部の器具取付や調整などを残すのみとなりました。
日曜日に写真を撮ってきましたのでご紹介します。
(画像をクリックしていただければ拡大できます)



下の写真は、キッチンに立ってリビングの方向を見たところです。
奥様はこの位置から眺められることが多いでしょうね。
写真中左手の壁際に薪ストーブが設置される予定です。

 

T邸リビング

 

 

 

 

 

 

 


次の写真はリビングの入り口および2階への階段方向を見たところです。
Tさんのお子様はようやくつかまり立ちができるようになったところですが、もう数年もすればここを走り回って怒られたりするのでしょうか(笑)。

 

T邸階段

 

 

 

 

 

 

 


最後の1枚はご主人の隠れ家、小屋裏のロフトです。
夏はちょっと暑くて使えないかもしれませんが、なかなかいい空間で僕もとても気に入っています。

T邸ロフト

 

 

 

 

 

 

 



毎回現場を終えるたびに感じることですが、現場が我々工事関係者の手から離れてクライアントの皆様のものになっていく直前は、なんとなく寂しい気持ちが募ってきます。

(スタッフも含めて)自分たち設計者もそうですが、施工者のみなさん(各職方はじめ現場監督さん)には工事の最中大変な思いをして頂いています。
そして建築主のみなさんにとっては楽しいことばかりではなく、心の葛藤や不安・遠慮など様々な負担がのしかかります。
(もちろん経済的な負担も)

しかしその一方で、建築主・施工者亜・設計者が三位一体となって協力することができて初めて、充実したいいものが出来上がるので住宅はとてもおもしろくやりがいがあります。



今回も施工途中に、一時クライアントのTさんにはこちらの気遣いが足りず不安にさせてしまった時期もありました(Tさんすみませんでした)が、何とか無事にここまで来ることができて関係者のみなさまには深く感謝しております。

Tさん、梓工務店さん、どうもありがとうございました。
もう少しですね、よろしくお願いいたします。

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習ったことを活かす

最近、自分が以前勤めていた会社で習ったこと(←建築に関する知識や知恵)を他の人のために役立てるケースが重なって、自分自身いろいろ考えさせられます。

僕が習ってきた建築の知識や知恵は、木造の中でも少し特殊な【数奇屋】といわれる分野において必要とされるものですが、最近友人にそれを伝える機会がありました。

2人の友人に、全く別々の形で微力ながら協力しているのですが、この技術はよく考えると独立してからほとんど使っていないなぁ~ということに気付きました。
( ↑ 間接的にはきちんといつも使っていますが・・・)



で、そうやって2人にお伝えするうちに、

「やはりこの力を眠らせておくのはちょっともったいないな・・・
 この技術を必要としてくれる方のためにもう少し活かしたいな・・・」

と思うようになりました。



ということで、やはり茶道を習う必要があるなぁ、という決心が固まりつつあります(笑)。

実は約10年前に茶道を習い始めたものの、恥ずかしながらその時は3ヶ月で挫折したのですが、今度こそはきちんと身につけないと、ここまで育ててくれた僕の建築の師に申し訳ないと感じるようになってきました。

自分のためではなく、僕が受けた恩恵を社会に活かすために習い事が必要だ、なんて感じたことは生まれて始めてです。

友人2人のおかげで、いい機会をもらうことができました。

           感謝。




多分、今後僕の設計する建物は、これまでとは微妙に変化していくと思います。
でもあまりに微妙すぎて、よく分からないかもしれませんが(笑)。
これまでよりも少し色気というか艶っぽさを出していこうと思います。

( ↑ 決して派手になるわけではありません。
  クライアントの皆様、ご安心下さい。
  なんと言うか、雰囲気が少しだけ変わると思います。
  と言っても写真で見たってわからないくらいの微妙な変化ですけどね)

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国土交通省との意見交換会

 

 

昨日(12/7)、急遽また東京へ行ってきました。

今後の木造建築に関する建築基準法改正内容について話し合う、国土交通省の担当官との意見交換会に出席するためです。
この会議は9月にも行われ、今回は第2回目です。

主催・参加したのは、

 職人がつくる木の家ネット
 伝統木構造の会
 日本曳家協会
 緑の列島ネットワーク
 日本民家再生リサイクル協会

の5団体です。
今回の意見交換会は、国土交通省からの要望でマスコミ等には非公開の形で行われました。

国会の関係等で国土交通省の方々もお忙しいらしく、充分な時間を割いていただけなかったのが残念でしたが、国としての木造建築の法整備に関する姿勢などがよく判りました。

やはり国にはもう少し本腰を入れて木造建築に関する環境を整えていただきたいと思います。
(明治以降、建築界では木造建築が置き去りにされてきたので、現在の国としての体勢を理解することはできますが・・・)
そのためには、我々木造に携わる実務者が建設的な姿勢での提言・協力を惜しまないことが重要ではないかと考えさせられました。

昨日の意見交換会に出席された上記5団体の皆様は、木造建築物に対する深い思い入れを熱く語っておられました。
ああいう仲間がいるということが分かるだけでも頼もしいですね。

実際、木造に関する法整備には、まだまだこれから長い時間がかかることと思います。
でもこうやって、少しずつ、少しずつ前進していくのだろうな、と感じました。 

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たくさんの皆様にご来場いただきました。感謝

またまたブログの更新が滞っております。
書きたいことは山積しているので、今週は少しずつ書いていきますね。
どうぞお楽しみに。

 

T邸外観

昨日、大阪府四条畷市の現場
【 木曾のみんながつくってくれた大阪の家 】
の完成見学会を実施しました。

合計15名のみなさまにご来場いただき、盛況のうちに無事終了できましたこと、厚く御礼申し上げます。
またこの機会をつくって下さった、建築主である T 様には深く感謝申し上げます。

今回はご来場の方(総勢15名)のうち、11名は建築関係者(設計事務所や工務店など)でした。
こんなことは初めてだったのでビックリしましたが、プロの方が
『見たい!』
と言って下さっているわけですから、とても光栄なことです。

案の定、質疑応答の際の質問内容はなかなか専門的なものが多く、一般の方にはちょっとチンプンカンプンだったかもしれません(ゴメンナサイ)。
でも、建築主の T さんの木に対する思い入れの深さは参加者のみなさんによ~く伝わったようです。

見学会の最中はみなさまの対応に追われて写真を撮ることができませんでしたが、みなさまがお帰りになってから、冒頭の写真を始め、何点か写真を撮ってきましたので、そのうちに折を見てホームページにもアップしていきたいと思います。
下の写真は吹き抜けのあるリビングから和室の方向をみたものです。
(冒頭のものも含め、すべての画像はクリックしていただければ拡大表示できます)

T邸リビング

今回は伝統構法の建物だったので、先週NPO法人・日本民家再生リサイクル協会のボランティア活動で行ってきた、能登での伝統民家の被災状況や伝統構法建築物の耐震性能についてもご報告しました。

能登では、感じること、学んだことがたくさんあったので、それはまた改めてブログにアップしますね。

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クライアントから嬉しいコメントを頂きました

前回の記事(木割とデザイン 12/26)を書いたところ、それに対して今年の3月に竣工した小花の家(兵庫県川西市)のクライアント・I さんから、下記のようなコメントを送っていただいたので掲載します。
(I さん、どうもありがとうございました!)

ちなみに、I さんは現在大阪市内の高校で美術の教師をされていますが、大学で美術(彫刻だったと思います)を専攻された方です。
これまでに、毎年1回くらいのペースで展覧会を開催されているようです。
(以下、I さんのメールの転記)

――――――――――――――――――――――――――――――――
今朝、ブログを拝見いたしまして、コメントできることをみつけたので、ぜひ感想をお伝えしたいと思い挑戦してみたのですが、「本文が長すぎます」とのことでしたので、できませんでした。
ということで、メールでお伝えします。

すごい  !!!!!!!
脱帽です !!!!!!

「木割」のお話から、ギリシャ時代の建築では、円柱基底部の半径が神殿全体の形を規定するほどの絶対的な単位(「オーダー」というみたいです)であったことを思い出しました。

美術作品をつくる(現在休止中ですが・・・)僕にとっては、とても刺激的なお話でした。

(だいぶ語弊のある言い方ですが、勇気を持って書きます)
人間として、世紀も地域も越えて絶対的な美というものが存在するのではないか、ということを最近漠然と、でも強く感じはじめている僕ですが、形づくりを突き詰めていくと、どうしてもそれ以上動かし得ないところ・・・ひとつの究極へとアイディアが収束していく、というのが作り手にとっての事実だと思います。

実はそのあたり、佐藤さんのつくる家にもガツンと出ているように感じました。
(今さらながら、佐藤さんに家づくりをお願いできてうれしく思います)

「一つの究極へと収束させていく作業を、どれだけ感覚をとぎすませて、つきつめられるか」

僕もこだわりたいと思います。

もうひとつ、「素材の持つ強さ」

「ことば」が大きな題材である僕にとって、「素材の持つ強さ」という事実は、これ
から向き合うべき大きなテーマであると思います。

・素材は素材として、既にその存在自体が美しい
・そこに作り手の思いと手数がさらに込められて、新たな次元へと導かれる(形になる)

佐藤さんとは書き方は違いますが、作り手として、きっと僕も近い思いをもっていると感じています

作品において大きな位置を占める「素材」と「過程」、僕の作品が「素材」に依存
する在り方ではないとしたら、その目に見える「素材」「過程」の強さにまけないくらいの作品の「存在感」はどこからくるのか・・・難しいですが、いろんな物をみて、自分も作る中でじっくり考えたいと思います。

今回のブログ、「ガンバレ」と背中に後ろから力一杯にドーンと喝を入れられた感じです。ありがとうございました。

(以上、I さんのメールより転記)

――――――――――――――――――――――――――――――――

I さん、どうもありがとうございました。
このコメントはとっても嬉しかったです。
今後のご活躍、期待しています。

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My favorite

(↑写真は、後述するMITのチャペルです。
この写真も含め、すべての写真はクリックすることで拡大表示できます)

今日(みどりの日)は僕の誕生日です。
年男(1970生・戌年)ですから、ついに4まわり目に突入してしまいました。
そこで、今日は僕の好きな建築家の1人をご紹介させていただきます。

Eero Saarinen (エーロサーリネン:1910-1961)という建築家がいます。
一般の方には、建物よりも椅子の方が馴染みがあるかもしれませんね。

彼がデザインした建物のうち、僕がこれまでに現地で見たことがあるのは、

1. アメリカのバージニア州にあるダレス国際空港
2. ボストンのMIT(マサチューセッツ工科大学)チャペル、オーディトリアム
3. ニューヨークのJFK国際空港のTWA社ターミナル

の3つです。

彼の作品では、ディテールにとても細かな気配りがなされています。

日本で発行されている建築雑誌などでは、そこまで詳しくは紹介されていなかったのでわからなかったのですが、現地に行って実際の建物を見た時、その感覚に驚きました。

1. のダレス国際空港では、斜めに立ち上がったコンクリート製の柱の表面が全てビシャンたたき(←石などの表面をわざと目荒し加工すること)によって仕上げられていました。そのために、コンクリートの骨材(←砂・砂利など)をあらかじめ変えていて、目荒らしした時にきれいに仕上がって見えるように配慮してありました。

2. MITのチャペルでは、外壁の表情を豊かにみせるために、不規則に割ったレンガを凹凸をつけながら貼っていました。

そして、同じくMITの敷地の中にあるオーディトリアムの椅子の背もたれは一つ一つ別の色が塗り分けられていて、ベターッと均一な感じに見えてしまわないようにという配慮が感じられました。

僕は大学の時に所属していた研究室の先生から、
「建物は美しさと品位を備えていなければいけない。」
と教わりました。

建物全体のフォルムが美しいということはもちろんですが、間近で見た時のディテールからも設計者の苦悩の跡や配慮が感じられる、そんな建物が僕は好きです。

僕はEero Saarinenの他にも、Calro Scarpa(カルロ・スカルパ)、北村伝兵衛、村野藤吾などの建築家が好きなのですが、彼らの作品については、また機会があれば改めてご紹介したいと思います。

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桜が咲いています

このところずっと、ブログの更新が止まっていました。
いつも楽しみに来てくださっている皆様、ごめんなさい。

実は先月末に、めでたく事務所の移転をしたためです。
もう、ここ2週間はバタバタで、まともなスケジュールではありませんでした。
ちょっと体も根を上げはじめたので、今日は休養を取りたいと思っています。

これまで、うち(サトウ都市環境デザイン)は自宅の1室を使って一級建築士事務所としての運営を続けてきていました。
しかし、業務が自分一人ではさばき切れなくなってきたため、優秀な常勤スタッフに来てもらって新しい態勢で事務所を構えることにしたのです。

2週間かかって、ようやく一段落しつつあります。
落ち着いて仕事ができる環境になってきました。

そんな折。

僕が2年前から発行しているメルマガ
【最低目標200年!古民家にならうこれからの家づくり】
の読者で、かつ日本民家再生リサイクル協会会員でもある、
普段から親しくさせていただいている滋賀県のMさんが・・・

なんと!
桜を送ってくださったのです!!!
こちらの写真をご覧下さい。

(画像をクリックすると、拡大表示できます)

ほらね?
おかげで、今、うちの事務所の応接間では、桜が満開です。
Mさん、どうもありがとうございました。

実物は高さ1.2mほどある、背の高い切花(枝)なのですが、
今回はその先端の花の部分のみ写真に収めてみました。

なんとも言えない幸せで豊かな気持ちにさせていただき、
この上ない形で新しい事務所を開くことができ、うれしく思っています。

これからもより一層努力を重ねて精進していく所存であります。
みなさま、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

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