ブログ ホーム」タグアーカイブ

丹後の古民家再生物件

音ステージ


 


 


 


 


 



上の写真は、一昨年の暮れから昨年の春にかけて京都府北部の与謝郡で工事を行った民家再生物件です。

もともとは着物問屋さんの『自宅+機織工場』だったものを改修して、
『喫茶+カラオケホール+ビリヤード』などの多目的商業施設にしたものです。

とっくに竣工していたのですが、竣工した後の写真を撮り忘れており、今回丹後へ行った折に寄ってオーナーの許可を頂き、写真を撮らせてもらってきました。



木が大好きなオーナーのご意向で、室内には
「これでもか」
というほどふんだんに木が使われており、お客様にもなかなか好評のようです。

近日中にホームページにこの物件の紹介ページを新設する予定ですが、取り急ぎ今日は外観写真のみご紹介します。

(株)木造建築東風のサイトはこちら
世界に、300年先も美しい風景を

古民家は誰のもの?

今、兵庫県佐用町平福という町で、築250年経過している町家を調査しています。
平福は昔の因幡街道の宿場町で、夢前川(ゆめさきがわ)沿いに
土壁塗りの土蔵が立ち並ぶ美しいまちなみが有名なところです。

「できればなんとかこの家を残したいのだが、どうだろう?
 構造的に、もつだろうか?」

というクライアントのご要望に応えるべく、建物全体の調査をしているというわけです。
この家のオーナーは、とある事情でずっと以前に関東へ移り住んでしまい、もう長い間空家になったままです。

空家になると家の傷みはドンドン進行するのですが、ご多分に漏れず、正直言ってこの家もかなりひどい状態です。
再生に耐えうるかどうかは微妙な情勢です。
11月に3回にわたって現場で様々な調査を詳細に行い、現在はそのデータをまとめているところです。

その第3回目の調査を今週の火曜日に行ったのですが、その時にとても印象深い出来事がありました。

その日は、一番肝心な柱の足元(柱が地面と接している根元の部分)が腐ったり虫に喰われたりしていないかどうかを調べるために、朝からまず職人さんに現場へ来てもらって、床組みの解体・撤去を行っていました。

床下に隠れて見えなくなってしまっている部分を見るためです。
もしここが傷んでいると、もう再生は難しくなってきますから、一番重要な部分です。

畳をめくり上げ、床板を外し、根太や大引(おおびき)といった床組みの構造材をガンガン解体している時でした。
あるおじいさん(70~80歳くらいに見えました)が、ふらふら~っと家の中に入ってきて、なにやら僕らのグループの一人に話し掛けているのです。

興味本位で工事を見に来て世間話をする人は結構いるので、そんなひとの内の一人だろうと思い、僕は自分の作業に没頭していました。
しばらくすると、そのおじいさんは帰っていき、職人さんによる床組み解体の作業も終わり、僕の調査も終わりました。

すると、先ほどおじいさんと話をしていたU氏がそのおじいさんとのやり取りを話してくれました。

おじいさん:「あんたたち、何をしているのかね?」

 U 氏  :「今、この家の調査をしているんですよ」

おじいさん:「この家は潰されてしまうのかい?」

 U 氏  :「いえ、まだわかりませんが、できれば何とか残したいと思い、
        それが可能かどうか、調査をしているところです」

おじいさん:「そうかい。それでちょっと安心したよ。
        実はワシはこの近くに住んでいる者じゃが、ワシは小さい頃
        この家でしょっちゅう遊ばせてもらったことがあるんじゃ。
        今は荒れ果てているが、昔はキレイで立派ないい家だったんや。
        それで今、前を通りかかったら、畳を運び出したり床を解体して
        いるのが見えたから、もしかしてこの家を潰してしまうんじゃないか
        と思い、心配になって覗いてみたんじゃ。
        確かに今はいろんなところが傷んだり腐ったりしてしまっているが、
        何とか残してもらえるといいなぁ・・・。」

そのおじいさんは、そんなやりとりを残して帰っていったそうなのです。

この家は確かにオーナーの所有物なので、解体するのも再生するのもオーナーの意思一つです。
そして、維持していくためには多額のお金がかかり、自治体も補助してはくれません。
その金額は数千万円(家が1軒建つ金額)です。
ですから、気持ちとしてはなんとか残したいと言っても、住む予定も無い家にそれだけの投資をするというのは、オーナーにとっても非常に苦しい決断だということはよくわかります。

しかし、同時にこの町に住んでいるたくさんの人の人生に何かしらの形で関わってきたという意味では、もうすでに一人だけの財産とは言い切れない存在になってきてしまっているのです。
過去250年という町の歴史を、いつも変わらずに黙って見守ってきた、貴重な存在なんだということをひしひしと感じ、何とか残してあげたいという気持ちがより強くなりました。

最終的な結論は、来週現地でこの民家のオーナーに調査報告を行った上で、オーナーが判断されることになります。

 

 

 

(株)木造建築東風のサイトはこちら
世界に、300年先も美しい風景を