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伐採した杉と桧を製材/旬切り、伐採、天然乾燥、伝統構法(工法)、石場建て

5月に奈良県桜井市の製材所で原木の製材を行いました。
あまり本数は多くなかったのですが、今回はどれも節が少ない木ばかりを挽いています。

まずは大阪府河内長野市・金剛山のヒノキ。
カウンターなどに使う幅広の板を採るために製材しました。

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次の木は奈良県桜井市の多武峰(とおのみね)という地域で伐採された、樹齢約120年の杉。
伐採に立ち会った時の様子はこちら

↓ 大黒柱用 (9寸角×長さ6m) 4面節がない、とってもいい柱が採れました。
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多武峰(とおのみね)というのは、大化の改新(645年)のための密談が行われたといわれている、奈良県桜井市の談山(たんざん)神社がある周辺一帯の地域のことです。

吉野で原木を扱う木材関係者の間では、多武峰の木はよく手入れがなされた良い木が採れる地域としてよく知られているそうです。
( ↑  東風の木を伐って下さっている、福本林業の福本さんから教わりました)

実際に挽いてみると、その評判に違わず本当にきめ細かな手入れがなされた木が揃っているのが良くわかります。

この木も、南西斜面という木としては温かく育ち過ぎやすい斜面にありながら、植林の際に非常に密植されていたため、育つスピードが制限され、年輪が大変細かくて木目が非常に美しい木に育っています。

そして樹齢10~20年の若い時(今から100年前)に丁寧に枝打ちがなされているため、かなり芯の方に行かないと節が出てきません。
すばらしい木です。

次の写真の木も同じく多武峰の木です。

しかしこの木はちょっと特別な思い入れがありました。

長さは4.6m。全景はこんな姿の木です。
樹齢は同じく約120年。

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下の写真が木口の全体写真です。

伐採したときのものと思われますが、ちょっと割れが入っています。

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この木の特徴は芯目(中心部の目)にあります。

上の写真ではちょっと良くわかりませんが、下の拡大写真を見て下さい。

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中心部の年輪が異常なまでに詰んでいます。
木の年輪というのは中心部が古く、外側に行くほど新しい層ですから、この木は直径約5.5cmの太さになるまでに、25~30年程度を要している木です。

この木を買うために多武峰山の土場(どば)に行ったとき、山のように積まれた原木の中から、僕がこの木を引っ張り出してみてほしいとお願いしたときに、福本さんいわく
「この木は若いときに、苦労して×苦労して育った木やなぁ~」
とおっしゃっていました。

これは植林された木ではなく、おそらく実生の木だと思います。

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木の年輪は1本1本それぞれみんな違っていて、それを見れば木の歴史がわかります。
こんな木は、ぜひ東風に来てもらわねば!と思い、一目惚れして選びました。
その木を挽いたときの目がこちら ↓ 。

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こんな目の板が何枚か採れて、ついに芯の部分まで挽いていくと、ようやく節が出てきました。

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木の直径は50cmくらいあるのですが、そのうちの直径5cmあたりまでで全ての枝が打たれているのがわかります。

この木はこれから1年くらいかけて乾燥させてから使いますが、どんな家にお嫁に行くことになるんでしょうね。
今から楽しみです。

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静岡の桧

気付けば前回のブログの更新から10日も経ってしまっていました。
すみません。

出張に行ったりしていたので、ネタは充分たまってますから、今日からまたチョコチョコ更新していきます。
どうぞお楽しみに。

静岡の桧-1

一昨日は静岡へ行ってきました。

静岡市内の林業家グループ(SGEC認証林)の山を見せていただくためです。

上記の林業家グループはこの6人の林業家が協力し合って活動されていますが、同じ静岡市内で木を作っているとは言え、それぞれの山は土壌や地形も少しずつ個性が違っているので、当然のことながらそこから生産される木(杉・桧)も性格が違います。
(こういうところがとてもおもしろいんですよね!)

今回は2ヶ所の山に入らせてもらいました。

1つ目は枝打ちをして40年生前後になると伐採し、節のない桧の柱を作っている武田さんの山。

2つ目はとても赤身の大きい桧を作られている大石さんの山です。

静岡の桧-3

現在大石さんが作業をされているのは、75年前に植林された桧の森(上の写真)です。

大石さんは劣性間伐(れっせいかんばつ)と言って、同じ75年生の桧でもあまり太く育っていない木だけを選んで伐採し、太い木をさらに育てるために残す作業をされているところでした。

今回はおよそ30~40%の木材を間伐するそうですが、この間伐作業によって風倒木(※)などによる材の傷みのリスクを減らすことができるようになります。
※ 風倒木(ふうとうぼく)とは、台風など強い風を受けて倒れてしまう木のこと。
 木が強風で倒されてしまう時に、生きている木の幹を傷つけたりすると、
 そこから腐りが入って木が立ったまま枯れてしまったり、その傷が商品価値を
 落としてしまうことがあります。

間伐して木を間引いてあげると山の地表面に光が入るようになるので、下草の植生も豊かになり、山も健全な状態になっていきます。

多くの品種の下草が山を覆って根を張れば、それだけ山の保水力が上がります。
すると大雨の際に洪水が起こるリスクを減らすことができ、同時に川を通じて海に流れ込む水の質も良くなる(滋養が高い)ので、海の生態系を豊かにすることにも貢献します。

今大石さんが間伐されている木は75年生と言っても細い木ばかりなので、年輪の間隔が細かく、非常に緻密でとてもいい材料でした(下記写真参照)。
出荷した際の市場の評価も高かったようです。

静岡の桧-2

(画像をクリックして頂くと、拡大画像で僕の手の大きさと年輪の細かさを
 比べてみることができます。
 白太が薄く、赤身がとても大きいのがいいですね)

夜は静岡市内で他の林業家のみなさんも交え、楽しくお酒を呑みながらいろんな情報交換をしました。

木造の建物をつくるという最終目的は同じと言っても、林業家と建築家とではやはりそれぞれの専門性が異なるため、これまで知らなかった山や木に関する新しいことをいろいろ教わることができて非常に有意義でした。

僕からは日本の古い木造建築物(古民家や社寺など)の耐震性について最近徐々に解明されてきている事柄についてお話しました。

今年はたびたび静岡に行くことになりそうなので、今後お互いに協力し合うことで新しい取組みができそうです。

楽しみ、楽しみ ♪

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静岡へ行ってきました

先週末、静岡へ行ってきました。

中学時代の同級生の結婚式へ出席するのに合わせて行ったのですが、11月に伐採する山の下見と打ち合わせをするためです。

(結婚式では懐かしい面々に会うことができました。
友揮、加奈子さん、おめでとう!)

上の写真は、11/3から伐採を行う現場です。

ここは僕の曽祖父が植えた山だそうで、植林後約90年経過している山です。
今回伐採してくれるのは僕の従兄弟なので、木を植えてから伐採するまで4世代に渡って手をかけていることになります。
(曽祖父→祖父→叔父→従兄弟の4代)

今回は皆伐(※)するのではなく、間伐(※)を行って木材を出すので、まだ今後も残った木は生長し続けます。

従兄弟とは、
「これからきちんと残していって、200年生ぐらいの山に育ってくれたらうれしいね」
ということも話しました。

(※) 皆伐/かいばつ・・・立っている木を全部伐ってしまうこと
間伐/かんばつ・・・木を残しながら間引き伐採をしていくこと

山で拾った杉と桧の葉っぱです。

立体的に葉が生えている左の葉っぱが杉。
茶色い実がついていてぺたっとした平面的な右の葉っぱが桧です。
(全ての画像はクリックすると拡大表示できます)

上述の山とは別の場所ですが、静岡市内のもう一ヶ所の山で今回同時に伐採します。
その山も今回見てきました。

この山の土壌は栄養分が高く、うちの従兄弟の山よりも育ちが早い環境でした。
土壌の違いに起因するものでしょうが、おなじ静岡市内の杉とはいえ、樹芯の色が全く違っていたのが興味深かったですね。

冒頭でご紹介したうちの従兄弟の山は安倍川(あべかわ)流域の谷にあるのですが、こちらの山は藁科川(わらしながわ)流域の谷にあります。

藁科川流域の杉は夏に見学に行った、天竜杉の色にそっくりでした。
一山超えるだけでこんなに違うものかと驚きました。

これは枝振りがとても美しい桂の木です。

川のそばの生態系を守る目的で整備している水辺林(みずべりん)という林の入り口に立っています。

この水辺林を川に沿って少し上っていくと、山葵田(わさびた)がありました。
下がその写真です。

山葵田というと、「田んぼのようなところか?」と思われそうですが、実際はそうではありません。
サワガニが大喜びしそうな、チョロチョロと浅い水が流れる川床を細かい砂利でつくってやり、そこにわさびを植えている畑という感じです。
この山葵田にもサワガニが顔をのぞかせていました。

静岡市内の山中では山葵田を割とよくみかけますが、他の地域ではなじみが薄いでしょうね。
僕は静岡出身(かつ山葵が大好物)なので、山葵田を見るとうれしくなってしまいます。

実は、僕は7年前(西暦2000年)に独立した当初から、

「家を建てる建築主の方にぜひ山で木を伐るところから立ち会っていただいて、その木を使って家を建てたい」

と考えていたのですが、7年かかってようやくそのプロジェクトに着手できるようになりました。

そして今回伐採する木材は一般的にはほとんど知られていないのですが、質がとても良い木材なので自信を持ってお奨めできます。
( ↑ 当然、数には限りがありますが)

もっと広く、静岡の良い木材をみなさんに知っていただきたいという気持ちと、あまり有名になりすぎてもたくさんご提供できないので秘密にしておきたい(笑)という気持ちが入り混じっていますが、見ていただければその良さは一目瞭然です。
現場に来ていただいた方にはきちんとご説明しますのでどうぞお楽しみに。

下記サイトでお知らせしているように、新月伐採の現場を見学していただける機会を設けていますが、今回の見学会に関しては正直あまり力を入れて宣伝しておりません(笑)。

なぜなら、実を言うと本当に大切にしてくださる方だけにしかご紹介したくないものだからです。

今回も、京都からわざわざクライアントのNさんが静岡の伐採現場まで足を運んでくださるのですが、Nさんがゆっくりと林業家と話をしてもらえる時間もとりたいので、その日はNさんだけをご案内することになっています。
( ↑ 見学会とは別の日です)

なんだかすごく贅沢なようですが、年間2棟分しか採れない木を使っていただくのですからこれは当然のことです。
きっとご満足いただける、かけがえの無い家をご提供できると自負しております。

今年伐採する木材はあと一棟分残っておりますので、興味のある方はどうぞお早めに。

【お知らせ】
11/3(土・祝)に静岡市の山で
新月伐採現場見学会を開催します。
詳しくはこちらをご覧下さい。

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天然檜の産地(メルマガのつづき)

※木曽の天然檜の木口の写真です。
写真をクリックすると拡大できますから
ぜひその年輪の細かさを確認してみてください

今週のメルマガ(04/10配信)で触れた、木曽檜(←関西では尾州檜として名が通っていますね)のことについて補足します。
(メルマガを購読されていない方はまずこちらでバックナンバーを読んでください)

これは最近読んだ本からの話です。

檜が天然に分布している地域は、北は福島県から南は屋久島にまでわたっています。
標高では、海抜200m~1700mの間に分布しているようですが、中でも海抜1000m前後の温暖地帯に、最も良質のヒノキ林が形成されているようです。
(ちなみに、今回行った木曽は、ちょうど海抜1000m付近でした)

木曽だけではなく、全国各地いろんなところに、天然ヒノキの自生林が存在しています。
例をあげると、
○ 高知県長岡郡の奥白髪(おくしらが)山
○ 和歌山県高野山
などがそうです。

しかし、上記の2つの山(奥白髪山、高野山)では伐採活動を禁止しているため、老朽木を除いてはこれらの山から伐り出されたヒノキが一般の市場に出回ることはないらしい。
たまに微量だけ出てくるものを除き、天然ヒノキが数多く産出されている森としては、木曽が唯一の天然ヒノキ産地だとのことです。

木曽では、昔は
「檜一本首一つ」
と言われていたそうで、無断で檜を伐った者は打ち首にされるほど厳しく管理され、大事に守られていたようです。
(→この逸話は、本を読む前に現地でもよく耳にしました)

今回の内容は、
『法隆寺を支えた木』西岡常一、小原二郎共著
という本からの抜粋です。

1978年に初版された古い本ですが、内容はとんでもなくすばらしいもので、僕は赤線を引きまくってページの右肩も折りまくってしまったので、もしブックオフに持っていっても

「すみませんがこの本は買取できません」

と絶対に断言されてしまいそうな状態になってしまいました。

木曽も現在ではその産出量も減り、大径木も格段に減ったとはいえ、いまだに木曽では植林によってできたヒノキを民材(みんざい)と呼ぶのに対し、天然ヒノキを

【 官材 / かんざい 】

と呼んで区別し、一般に流通し取引されています。
興味のある方は、下記サイトをぜひ一度ご覧下さい。

木曽官材市売協同組合

当方で発行しているメールマガジン

『最低目標200年! 古民家にならうこれからの家づくり』
(配信元:まぐまぐ)

では、このような情報(木・家・職人・技術などなど)を定期的に無料で配信しています。
興味をもたれた方は、ぜひこちらでご登録ください。

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