月別アーカイブ: 2025年2月

沓脱石と土間タイルのバランス/大和棟古民家再生工事

奈良県北西部にある平群町(へぐりちょう)というところで、明治期に建てられた大和棟(やまとむね)の古民家を再生工事しています。

大和棟というのはあまり聞きなれない言葉かもしれませんが、このような外観の建物のことを差します。

中央の一番高い大屋根部分が急勾配になっているのがわかると思います。
この急勾配屋根のグレーでフラットになっている斜面の部分は、オリジナルは茅葺きでした。

大和棟は、その地区でかなり財力があったり地位が高い庄屋さんを務めるような家によくみられる形です。
残念ながら最近は大和棟の家がどんどん少なくなっていますが、とても美しい形なので、何とか後世に遺したいと思う建築の一つです。

この現場は2024年の春から工事が始まっていたのですが、今週からタイル工事に取り掛かっています。

↑ 玄関土間のタイルの割付を検討すべく、職人さんが水糸を張って寸法や矩手(かねて=直角のこと)を確認しています。

↑ 今回土間に貼ることになった600角の大きな土間用タイル。
お客様がタイルのショールームに行って選んでこられたもので、とても個性的で色ムラの大きいタイルです。
この写真では3枚だけが並んでいますが、それぞれに模様が全然違っているのがわかりますよね。

張り上がったらきっととても迫力のある仕上がりになりそうで、今からとても楽しみです。

これは玄関の沓脱石(くつぬぎいし)です。
ちょっと変わった石だなぁ・・・と思われたことでしょう。

こういうことをするのはとても珍しい(というか、うちも初めて)のですが、中央に座っている石がもともとこの家にあった沓脱石です。
しかしこの大きさでは、約8畳ほどの広さがあるこの家の玄関の沓脱石としては、あまりに小さくてバランスが悪く、かといって新しい石に取り替えてしまうのはこの家の歴史やご先祖様に対して失礼なので、お客様と相談して両脇につくり足すことにしたものです。

最初はもっと個性的な石を使って、デザイン的にも少し目を引くような仕上げにしようかと思っていたのですが、先述の土間タイルがかなり個性の強いものになったので、沓脱石と土間タイルとがお互いに喧嘩してしまうと全体のバランスが崩れてマズイな・・・という話になり、この沓脱石はボリュームを大きくするだけで、あまり目立たない仕上げにしようということになりました。

古民家の再生工事を進める上では、こういう既存の部材と新しく足す部材とのバランスをどうやってとっていくか?ということが、最終的な建物全体の印象や品格を左右するので、いろいろと判断が難しいことが多いのです。

絶対的な正解は無いという状況の中で、施主であるお客様の好みの方向性を尊重しながらも、どんな人に見られても住まい手のご家族が恥をかくようなことにならないように、理性的でバランスが取れた、全体として品の良い建物に仕上げる必要があります。

奇抜なものにしてしまうと住まい手やつくり手の品性を疑われてしまうし、
かと言ってあまりに没個性的だと建物の魅力が乏しくなってしまう。

全体としてどんな品格にまとめ上げるのか?というところが、一番難しいのですが建物をつくる上で最も重要視される点になります。

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和室 敷居の仕口(しくち)/御所市 江戸後期古民家再生

2025年1月から、御所市内にある古民家で再生工事をやらせて頂いております。
現在は既存和室の床組み(ゆかぐみ)作業を進めているところ。

すでに柱のジャッキアップや根継ぎなどは終えていて、今日は床板を張りかけているところでした。

これから、解体時に一旦取り外した敷居を再び復旧するための準備を大工さんが進めているところだったので、なかなか一般の方は見ることの少ない機会だろうなと思って写真を撮ってきました。

上の写真の両端に黒い柱が建っているのがわかりますか?
水色の丸と黄色の丸のところが柱の根本です。
この2本の柱の間に、これから古い敷居を入れ直そうとしているところです。

敷居と柱の接続部分を仕口(しくち)というのですが、柱と敷居の仕口でよく見るのが、今回ご紹介するやり方です。

片側は【横ほぞ】という仕口。
そして反対側は【待ちほぞ】という仕口。

ちょっとわかりにくいかもしれないのですが、水色の丸のところには、柱に横長長方形のような形で穴が掘られています。
これが【横ほぞ】のメス側仕口です。

上の写真は敷居の端部につくられた【横ほぞ】のオス側の仕口。
このオスとメスがかみ合わさって仕口となります。

次に反対側の仕口を見てみましょう。↓

これが先ほどとは反対側に建っている柱の根本。
先ほどの【横ほぞ】の穴は水平方向に長方形の穴が掘られていましたが、こちらは形が違っていて、垂直方向に2本細い溝が切られています。

上記の柱に組み合わせる敷居の端部がこれになります。
黄色〇印のところにはヤトイほぞという、薄い木の板を柱側に差し込んでおき、この敷居を上から回転させながら落とし込んでいきます。

ちょっとわかりにくいな・・・と思ったので、簡単なスケッチを描きました。

まず1枚目が水色丸印で囲まれていた【横ほぞ】部分のスケッチ

そして2枚目が、黄色〇印で囲まれていた【待ちほぞ】部分のスケッチ

このように敷居の両端分でそれぞれ違う形の仕口をつくっておくことで、一旦設置すれば水平・垂直方向にもズレたりしない状態に設置できるようになるわけです。

しかし釘などは使っていないので、修理の際などには傷つけることなく敷居を取外すことができ、また再度設置することができます。

現代の新築の時は、ビスやボルトを使ったりすることも多いので、これと同じ仕口を用いることは少ないと思うのですが、古民家の再生の時にはよく目にするやり方です。

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木の香りを活かして、洗剤や石鹸を試作したい

お風呂(浴槽)を掃除しているときに特に思うのですが、市販の「〇〇マジックリン」みたいな洗剤って、かなり強力な薬剤ではないかと不安になります。
(そのため、僕は必要に迫られたときしか使わないのですが……。)

確かに汚れはよく落ちるものの、人工的な香りがついていたり、手で触れて大丈夫なのか、噴霧したときに空気中に漂う成分を吸い込んでも問題ないのか、とても気になります。

いろんなところの掃除や洗浄をするのに、普段僕らはこうした市販の洗剤を使うことが一般化しているのですが、こんなに強い洗剤を使わなければならないのでしょうか?

もっとシンプルな方法、たとえば薪ストーブの灰でこすれば汚れが落ちるとか、そういう昔ながらの方法でもいいのではないか、と考えています。

そんなことを思いながら、ここ数日木の香りについて考えていました。


木には種類ごとに独自の香りがあります。
僕は楢(なら)や黒文字(くろもじ)の香りが特に好きです。
もっと身近にある木で言うと、桧(ひのき)や杉(すぎ)、楠(くすのき)なども、それぞれ個性的な香りを持っています。

先日事務所の裏庭の手入れをした時に、大きく育ってきたユリノキの枝(↓)を間引くために切ったのですが、この木もとてもいい香りがしました。

そこで、これらの木の香りを活かして、何か作れないか調べてみたところ、技術的には可能だとわかったので、今年はワークショップを開催してみたいと考えています。
最終的には、木の香りを活かした製品を試作できるといいな。

本当は廃材でお香がつくれるといいななんて考えているのですが、もう少し手軽に試せるものとして、洗剤や石鹸を作ることを考えています。
ワークショップの企画も進める予定なので、具体的に決まったら改めてお知らせしますね。

まずはエッセンシャルオイルを抽出することになりそうです。
木の種類によって香りがどう変わるのか、実際に試すのが楽しみです。

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