月別アーカイブ: 2012年4月

玄関式台-杉のナグリ加工

先週末の土曜日、京都市右京区に行って、尼崎市・H様邸の玄関式台をなぐってもらってきました。

いつもお世話になっている京都市上京区の中儀銘木さんを通じて、これまでにも何度かお願いしているナグリ職人・原田さんがなぐってくれました。

材料はいつもどおり杉です。
厚みは50mm。

今回はクライアントのH様もご家族全員4人で京北町にある原田さんの加工場まで足を運んで下さいました。

naguri2

いよいよチョウナによるナグリ作業開始。

端で観ていると、原田さんは何気なくサクサクとなぐっているように見えますが、刃物の切れや力加減、刃の当て方や一目ごとの仕上がり巾など、本当に絶妙な技です。

まずは一番大きい平面をなぐっていきます。
ずっと同じ方向からなぐり続けるのではありません。

なぐることで目を起こしてしまわないように、 木の目を見ながら途中で何度も体の向きを変えてなぐります。

naguri

平の部分をなぐり終えたら、次は側面です。
後ろで板を支えて下さっているのは、原田さんのお父さんです。

naguri6

側面もなぐり終えたら、最後に角の面取りです。
面取りもチョウナで一目ずつとっていきます。

naguri5

そしてついに完成です。
おとなしくて、なぐる前にはあまり個性的ではなかった板が、ナグリ加工によって
こんなに魅力的な表情に仕上がりました。

鈍い光沢がありますが、表面はハツっただけです。
サンドペーパーもあてていないし、まして何も塗布していません。

naguri3

仕上がった後、クライアントのH様ご家族には、靴を脱いで足で
踏んだ時の感触を味わってもらいました。

うちの事務所にもナグリ式台のサンプルを置いていますが、
ナグリの板を踏んだ時の感触はとっても気持ちがいいんです。

H様の息子さんは、その感触があまりに気持ちよかったのでしょうか(?)
ついにべたっとうつぶせに寝転んでしまいました(笑)。

ジャストサイズ!って感じです。

naguri4

今回は写真でしか撮っていませんが、過去に原田さんにお願いした折、
動画で撮影したものがあります。
東風のyoutubeページで公開していますので、もしよろしければ
こちらのページで動画も見てください。

 あなたはどちらが好きですか?
 30年後に「そろそろ建て替えようか・・・」と言われる家と
「200年前のおじいちゃんが建てたの」と2212年に言ってもらえる家 

むくり屋根-後編

前回に引き続き、むくり屋根のことを書いてみます。

前回は大工さんによる木下地ができるまでをご紹介しました。
木下地が完成したら、次は瓦屋さんの工事に移ります。

まずは防水層の設置(下葺き)工事です。

rolltonton

上の写真は瓦の下の防水層となる、ロールトントンを葺いたところです。
ロールトントンは杉を薄~く削った板を縫い合わせたもので、一般的に
よく使われているアスファルトルーフィングなどよりも通気性に優れているので
小屋裏での結露防止のためにはこの方が有利です。

軒先は角度が一旦折れてしまったりすることから、ルーフィングで
部分補強しています。

mukuri1

瓦を葺き終えた後、棟付近に登って下を見下ろして見たところです。
結構むくりが付いて屋根が全体に丸みを帯びている様子がお分かりに
なっていただけると思います。

ケラバ瓦と破風を棟付近から見下ろしたのが下の写真です。 

mukuri2

下の画像はちょうど春の嵐が来た翌日に撮った写真です。

足場のシートが風をはらまないようにと、ネットシートをたたんだので
この時は建物の姿がよく見えました。
(今はまたネットシートで覆われていて、これほどよく見えません)

hhouse_outside

H様邸の外観は、最終的には木製の面格子がついて杉板張りと
漆喰仕上になるので、町家のようなイメージになります。

 あなたはどちらが好きですか?
 30年後に「そろそろ建て替えようか・・・」と言われる家と
「200年前のおじいちゃんが建てたの」と2212年に言ってもらえる家 

むくり屋根 前編

先月の工事内容ですが、尼崎市H様邸・屋根の工事についてご紹介します。

H様からは
「屋根にはむくりをつけて下さい」
というご希望を伺っていました。

お客様から屋根にむくりをつけて欲しい、と希望されるケースは珍しいです。

ほとんどの場合、ご予算や建物の全体イメージ・屋根葺き材などの事情を
考慮して、むくりをつけるかつけないかをこちらで判断・ご提案する、という
流れが一般的です。

ですから今回のH様のお宅の場合は、建物のプランや屋根の形なども
【むくりがきれいに見えるように】ということを最初から強く意識して設計しました。

棟の位置・建物全体の軒の高さ、下屋の流れ長さや大黒柱の位置まで
【屋根をきれいに見せたい】ということを意識してつくり始めると、いろんな
事柄をそれにむけて統一していく作業が必要になります。

実は東風で建物をつくる上で、最重要なデザイン要素が屋根です。

  屋根をどう見せるか?
  どんな高さにするか?
  棟の位置=大黒柱の位置→構造の組み方は? 
  軒の深さやケラバの出は?
  垂木の寸法や面取りの大きさ、垂木の間隔は?
  ケラバの納まりと軒先の見せ方は?

屋根のデザインを決定する上では、上記のような様々な要素が
絡んできます。

こと屋根に関しては、おそらく
「東風さんはちょっと異常なんじゃないか?」
と思われるくらい、こだわっています(苦笑)。

でも、それだけ重要なんです。

屋根がきれいに見せられたら、もうそれだけで建物のデザインの
半分以上は成功したようなものです。

逆に、屋根がきれいに見せられなければ全てが台無しになります。

ですから、屋根の納め方については現場ごとにかなり頭を悩ませますし、
今現在も別物件の屋根の納まりで頭を悩ませている真っ最中です。

さて、前置きが長くなってしまいました。
そろそろ写真をお見せしますね。

まずは屋根に垂木(たるき)を流します。

東風では垂木にも杉を使うことが多いです。
今回は大屋根の垂木と下屋の垂木、どちらも静岡の杉を
使っているのですが、大屋根の杉と下屋の杉は全く違う材料の
採り方をしています

taruki

これは大屋根の垂木の写真ですが、大屋根では芯持ち節有りの杉を使い、
下屋では芯去り・無節の杉を使っています。

そして、もちろん双方の太さも変えています。
大屋根は遠く離れて見えますから少し太く。
下屋は目の前すぐ近くで見えますから、野暮ったくならないように少し細めにします。

垂木を流したら、その上に化粧野地板を張っていきます。

nojiita

化粧野地板を張り終えたら、その上にもう一度野垂木を流して
垂木-垂木の間に断熱材を充填します。

yaneshitaji

上の写真右半分はすでに断熱材(グレー色)の充填を終えて、
上から野野地を張っているところです。

左半分はまだ断熱材が入っておらず、野垂木が見えている状態。

hahu3

屋根のむくり曲線に合わせて破風を造り出して取り付け、
木下地は完成です。

屋根がゆるやかに弧を描いている(=むくりがついている)様子が
お分かりになっていただけると思います。

明日は瓦工事について書いてみます。

桧の床板と杉の床板を張ってます

尼崎市H様邸では床張り作業の真っ最中です。

今回使う床板の厚みは40mm.
実(さね)の部分は雇い実(やといさね)にして大工さんに加工をお願いしました。

hinoki_floor2

上の写真は、1階のリビングと玄関に張る桧の床板の加工作業中に写したものです。

hinoki_floor3

樹齢100~120年の大きな桧から製材した板なので、一番広いものでは巾が240mmもあります。
実物を見ると、住宅用の床板というよりはお寺なんかで使うための板なんじゃないの?っていう印象を受けます。

2階は杉の板を張っています(↓)。 

2f_floor1

大工さんが丁寧に張ってくれていて、大黒柱(桧・八寸角)と床板の取り合い部(↓)などをみても、ビシッとくっついていて一分の隙も無いのは見ていて気持ちが良いです。

2f_floor2

こういうのってすごく嬉しくて、見ているとにんまりしてしまいます(笑)。

 あなたはどちらが好きですか?
 30年後に「そろそろ建て替えようか・・・」と言われる家と
「200年前のおじいちゃんが建てたの」と2212年に言ってもらえる家

京都市U様邸新築工事 墨付けが始まりました

京都市左京区内で初夏に上棟予定のU様邸。

今週月曜日から大工による墨付け作業が始まりました。

kyoto_structure

構造材は静岡で新月期に伐採・葉枯らし乾燥後、3年寝かして天然乾燥させた、東風特製の杉・桧です。
樹齢100~130年、目がよく詰んだ北向き斜面に生えていた素直な木ばかりです。
原木を提供してくれたのは、静岡の鈴木林業さん。

修正挽きは静岡の杉山製材所さんにて行った後、プレナー加工をしてもらい、上の写真に写っているような感じで加工場に届きました。

3月末には、クライアントのU様ご家族がみなさまでわざわざ静岡まで足を運んで下さり、伐採現場を見学したり、製材所・林業家の方々と言葉を交わされました。
(U様、杉山さん、鈴木さん、その節は大変お世話になり、ありがとうございました)

kyoto_sumituke0417

今回木工事をお願いしたのは、以前もうちの工事を手がけてくれた京都の大工さんです。

上棟は6月、竣工は10月末の予定で、プレカットではなく全て手刻みで仕上げる現場なので、手際よく進めなければなりません 。

この大工さん達はいつも非常にいい仕事をしてくれるので、今から仕上がりがとても楽しみです。
また経過をご報告しますのでどうぞお楽しみに。

 あなたはどちらが好きですか?
 30年後に「そろそろ建て替えようか・・・」と言われる家と
 「200年前のおじいちゃんが建てたの」と2212年に言ってもらえる家

淡路市 T様邸古民家改修工事の杉

ながらく更新が滞っておりました。
すみません。
相変わらず毎日あちこち走り回っていて椅子の温まる暇が無いのですが、何とかブログを更新していきたいと思っております。
これまではfacebookも読者専門でしたが、もうちょっと勉強してfacebookも更新していかねばなりませんね。
(でも、facebookはどう活用すべきメディアなのか?というところが
今ひとつ ピンときていません・・・)

ブログを更新していなかった間も、着々と現場は進んでおります。
(そしてもちろん、僕も現場を渡り歩いております)

淡路市のT様邸改修工事は、大工さんが1人でゆっくりコツコツと進めてきてくださっているので、かなりスローペースです。
2月に着工したのですが、4月に入ってようやく床を張り始めたところ。

awaji_flooring

上の写真は来客用の部屋の
床板です。 
厚み35mmの本実加工した杉板張り仕上げです。

工事契約の時には、【特一等材】という節がいっぱいあるグレードの
並材で見積されていたのですが、たまたま材料屋さんが無節の板を
入れてくれた(工務店さん談)とのことで、とてもきれいな板が張られています。

圧巻だったのが、2階の柱です。
契約時には杉の源平・小節程度でいいですよ、という設定だったのですが
実際に現場へ届いたのが吉野産赤杉の3方無地の柱たち。

awaji_yoshinosugipost

工務店さん、こんないい材料入れたら大赤字とちゃいますか?
と心配になるほど素晴らしい柱でした。 
T様宅の現場には、2階にこんな柱が林立しています。

杉が大好きな僕としては、とっても嬉しい限りですが
クライアントのT様ご夫妻も大喜びでした。