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桧(ひのき)の丸太梁の加工

この秋から構造材の準備に取り掛かっている、尼崎市H様邸の墨付け・刻み作業が少しずつ進んでいます。

今日は2階の屋根を支える丸太梁の加工の様子をご紹介します。

 

 

まだ本格的に刻みの作業工程に入ったわけではなく、墨付け作業(※)の途中ですが、この丸太梁自身および、これに絡む梁の墨付けをするためには、丸太のフォルムを決めてしまう必要があり、削っています。
 
※【墨付け(すみつけ)】とは、木材を組み合わせるホゾや蟻(あり)などの位置・大きさなどを実際の部材にすべて記載していく作業のことです。
 全ての部材に対して、まずこの墨付け作業を施してから実際にノミなどを使ってホゾなどを刻んでいく【刻み】の工程に進みます 
 
 
 
今回H様のお宅で使うことになっている丸太梁は全部で9本あり、全て桧でご用意しています。
一般的に、丸太梁には松を使うことが多いのですが、今回のお宅では化粧梁として見えてくるので、仕上がった表面の光沢や艶など、後年の梁の美しさも考え合わせて桧を使うことにしました。

なお今回の桧の丸太梁も、東風では全て原木の状態で購入しています。

 

 
以下に現在行っている丸太の仕上手順をご紹介します。
 
 最初はこんな状態(↓)です。
 
maruta01

 
原木で購入した桧を、2面のみ帯鋸(おびのこ)で製材して面(つら)をつけます。
この写真ではわかりにくいのですが、製材の際にも2面を平行に挽くのではなく、木の元(もと:根に近い方)は厚く、末(すえ:天を向く方)は少しだけ薄く挽いて自然なテーパーがつくように挽いています。

上の写真は平積みしている状態なので丸太が横を向いていますが、実際には右に90度回転させた向きで梁として組み上げます。 

 丸太の製材はこんな要領(↓)でテーパーをつけて行いました。

 
maruta02
  
今回は丸太の断面を円形→八角形に削って仕上げます。
 
皮をむいた丸太のままの表面もおだやかできれいですが、8角形に削り落として仕上げると、ぐっと締まった表情になり、同じ材料とは思えないほど格が上がった雰囲気になります。
 
まずは丸太の木口に仕上がり位置の墨をつけ、鋸でざっと荒削りしてから電気鉋で少しずつ削っていきます。
(昔はこの作業を斧とチョウナで行っていました)
 
 maruta03

 
 ↓ 電気鉋で削っている様子
 
 maruta04
 

maruta05
 
 
上の写真が、全ての梁を電気鉋で仕上げ終えた状態です。
部材の断面形状としてはこのような8角形になりますが、表面はこの後、墨付け作業+刻み作業を終えてから、手鉋で削って仕上げます。
 
ダイナミックでいて、なおかつ上品さも持ち合わせるような雰囲気にするため、今回は材料選定の際、丸太の曲がりが緩やかなもの(=直線に近いもの)を意図的に選んでいます。
 
 
 
東風でつくる建物では丸太梁を見せることが多いのですが、こういう仕上を施すのも機械で刻むプレカットの際には行っていません。
手刻みならではの仕上げ方です。

よく、
「手刻みとプレカットとでは、どこがどう違うのですか?」
という質問を受けて、説明に困ることがよくあります。
( ↑ 一言では説明しにくいのです・・・)

手刻みには手刻みにしかできないことがあります。

建物の強度・仕組み・特性も、プレカットか手刻みかで変わるのですが 、こういった細やかな仕上作業に要する手間の違いもデザインに大きく関ってきますし、このように削って仕上げる場合にはそれだけ大きな材料が必要になってくるので、材料単価も上がります。

そういった小さなことを積み重ねていくと
「やっぱりプレカットではこういう風にはできないよね~」
という形になっていくので、当然費用も変わってくるのですが、やはりそれだけの意味や価値はあります。

手刻みとプレカットの違いを分かりやすく説明できる資料、作らないといけないなぁ・・・。

よし、この正月にはなんとか作って公開することに、今決めました。
どうぞお楽しみに。