7/17(日)に、奈良県の室生寺へ行ってきました。
学芸出版社が主催している連続セミナー
【 ここが見どころ!古建築/第4回 平安前期時代の建築~室生寺 】
に参加するためです。
講師は古建築の解説においては大変定評のある、妻木靖延先生です。
当日は真夏の日照りがジリジリ・・・と大変な暑さでしたが、木々が生い茂る室生寺は木陰に入るといくぶん過ごしやすかったです。
もみじの葉の緑がきれいでした。
石段を登っていってまず説明を受けたのが、金堂。
平安前期の建立(859~876)で、国宝です。
写真手前に映っている、屋根が一段下がっている(縋る/すがるといいます)部分は江戸時代に増築されたものだそうです。
江戸時代とは言え、当時でも約1000年前の国宝級の建物を
「増築しちゃおう ♪」 ← こんなに軽い雰囲気ではなかっただろうと思いますが
と踏み切ったことに、僕はとってもビックリしました。
金堂の後、弥勒堂(重文)や灌頂(かんちょう)堂(国宝)を見学し、さらに登ると五重塔が見えてきます。
五重塔は平安前期(8世紀末)の建立とされているそうですが、正確な記録はないのだそうです。
しかし、細部のデザインや構法などから推測すると、どうみても平安前期の建物だろうということになっているのだと妻木先生が説明して下さいました。
この五重塔はとても小ぶりです。
京都の東寺・奈良の法隆寺・浅草の浅草寺などにある五重塔と比べると、と~っても小さいです。
外部にある五重塔としては日本で一番小さいものだとか。
当日、参加者のみなさんが口を揃えて仰っていましたが、軒先の裏甲(うらご)と軒付(のきづけ)の部分を白く塗っているのが、デザイン的にとても効いていました。
今は観られませんが、妻木先生が初めて室生寺を観に行った昭和28年には、夜中でも自由に境内に入れたそうで、ちょうど月がとても明るい夜だったので、軒先の白い部分が鈍く光り輝いてなんとも言えず美しかったとのこと。
一度観てみたいなぁ。
室生寺の一番高いところにあるのが御影堂です。
鎌倉時代後期の建立で、重要文化財に指定されています。
この建物、屋根がとても珍しいものです。
どこが珍しいのかわかりますか?
(画像をクリックすると拡大表示できますが、それでもわからないかもしれません)
正解は ↓
それでは正解です。
なんとこの屋根、瓦葺のように見えますが、実は屋根葺き材が木なのだそうです。
使われているのは槙(まき←おそらく高野槙)の木で、厚みは7cmあるとのこと。
伊勢神宮にも厚板葺きの建物がありましたが、ここの御影堂のように瓦の形をした厚板葺きを観たのは初めてです。
槙は木製の浴槽に使われる材としては最高のもので、桧よりも香りが柔らかくて上品で、濡れたり乾いたりする環境においては抜群の耐久性を持った木です。
今は大きな槙の木が大変少なくなり、入手が大変難しくなっています。
妻木先生の講義は大変素晴らしく、また次回もぜひ参加したいと思っています。
やはり古典に学ぶということは原点ですね。
関西に暮らしていると、このように貴重な古建築をすぐに観に行けるというのは大変恵まれたことですね。