月別アーカイブ: 2011年2月

外壁保存

今週から神戸市で I 様邸改修工事が始まったので、毎朝神戸へ行っています。

阪神高速神戸線を京橋ICで降りて現場へ行き、帰りも京橋から西宮まで乗ってくるのですが、その京橋の乗り口の手前、メリケンパーク入口の交差点に信号待ちで停まると、いつも見てしまう建物がこれです。

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神戸や横浜にお住まいの方にとっては、この手の建物はすっかりお馴染みかもしれませんが、見慣れない方にとっては

「なんだこれ?」

という方もいらっしゃるでしょうね 。

写真中央の高層ビルですが、よく見ると高層部分がガラス張りの現代的な建物なのに、低層部分は明治~大正時代のようなレトロな外観です。

明治期に一気に近代化の波が押し寄せた港町には、西洋風(?)の洋式建築が多く建てられましたが、それらが昭和の後期から平成の初期にかけて老朽化し、

「保存か?それとも建て替えか?」

という議論がなされました。

その結果、 中庸案とも言える【外壁保存】という手法が生まれました。

このように低層階のみ洋式建築の外壁だけを残したまま、構造的には新しい高層建築を新築する、というのがその外壁保存の考え方です。

外壁保存では、
「建物のすぐ目の前を歩く歩行者の目には低層階しか見えない
=今までの街の景観を維持するために、低層階のみ外壁を残す。
しかし、低層階のみでは建物の容積が足りないので、建物を高層化し
高層部分は現代的なガラスを多用した建築とする」
という考え方に基づいています。

僕も学生時代(かれこれ17-8年前)に、ゼミの在籍生を真っ二つに分け、外壁保存は是か非か?というようなディベートを課題としてやった覚えがあります。

神戸市内を走っていると、本当にこの外壁保存の建物が多いんですよね。

外壁保存でも、京都の新風館のように上部に高層階を継ぎ足さないものであれば大変結構なんですが、どうしてもこのような組み合わせは違和感を覚えます・・・。
(あれ、新風館は外壁保存だったかな? もしかしたらちょっと違うかも・・・。)

かといって、決して批判しているわけではないんですよ。
今日お伝えしたかったのは、そういう考え方で作られている建物もあるんですよ、っていうことです。

建築って難しいんですよ。

世の中にあるほとんどの建築は、私有財産としてつくるものなのですが、それが街の景観を構成するものになってしまうために、建築の外観には社会性が求められます。 

学生の時に先生に言われました。
「だから美しくない建築を作るのは罪なんだ」
と。 

やればやるほど、建築というのは面白い世界です。

【お知らせ】
今週末の2/27(日)に、奈良市と四条畷市で2つの現場が一度に見られる、欲張りな見学会を開催します。

奈良の現場では、吹抜けにこんな赤松のきれいな丸太梁も架かっています。
大工さんが手できれいに刻んでくれました。

tekizamimaruta 

どうぞお楽しみに。
詳しくはこちらからどうぞ 

着工式

start

神戸市内で改修工事を行う I 様邸の着工式を、2/19(土)に現場で行いました。

上の写真は、部分解体予定の既存建物の周りをお酒とお塩で清めて廻る I 様ご家族です。

お父さんとおじいちゃんに挟まれて、長女のおねえちゃん(お孫さん)がお清めをしているところです。
今回の建物が完成してお引越しが終わると、3世代が一つの敷地内にある2つの建物に暮らすことになります。

部分解体してリフォーム&増築される建物はさらにもう1世代上のひいおじいちゃんが建てた家。

連綿と受け継がれていく様を目の当たりにして、こちらも嬉しくなります。

今日(2/21)からいよいよ解体工事が始まりました。
またこれからブログで現場の様子をご報告していきます。

どうぞお楽しみに。

さてさて、ブログの更新が滞っていたせいでなかなかお知らせができなかったのですが、吉野杉の新築住宅(構造見学会)と伝統構法+薪ストーブの家のジョイント見学会はいよいよ今度の週末(2/27・日曜日)に開催されます。

いまのところ、ごくごく少ないお申込みしか頂いていないので、まだまだ定員には余裕がありますよ。

ぜひ遊びに来てください。
詳しくはこちらのページをご確認下さい。 

仕切りなおし

このところ、すっかりブログの更新をさぼってしまいました。

いつも覗いてくださるみなさま、申訳ありません。

理由も無くサボってしまったわけではなく、書けなかった(というよりも書く気になれなかった)というのが更新が滞った理由です。
言い訳するつもりではないのですが、気持ちの整理をつけるために書いてみようと思っています。
個人的なことなので、興味のない方はどうぞ遠慮なく読み飛ばして下さい。

発端は先週の初め(2/7)に、僕の師が急逝したことに始まります。
僕に木造建築のつくり方を教え、育てて下さった、(株)鈴木工務店の鈴木義計社長が急逝されました。
2月の初旬に急に体調を崩されて入院され、数日後の急な出来事でした。

ここでいろいろと書き連ねることはできないのですが、鈴木社長なくして今の僕はあり得ません。
個人的にあまりに大きな出来事でした。
心よりご冥福をお祈り申し上げます。

その後も日々の業務に追われ、身辺が何かとバタバタして心身ともに疲労がたまっている状況の中、余裕のない日々を送っているうちにブログを書く気になれなかった、というわけです。

元通りブログを更新していくためには、自分自身一度仕切りなおしが必要だったので書いてみました。

さぁ、今後はまた以前のように、みなさまの役に立つような情報発信に努めていきたいと思っております。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

【見学会】薪ストーブのある木の家に住みたい方、ぜひお越し下さい!

20110227

今回は初のジョイント企画です!
奈良市吉野杉の家構造見学会 + 伝統構法で薪ストーブを体験
2011/02/27(日)開催

奈良市内で建築中の新築住宅構造見学会を行った後

大阪府四條畷市で伝統構法住宅に薪ストーブを備えたお宅で、薪ストーブ+伝統構法の魅力を味わって頂こうという企画です。

まず奈良市内で建築中のO様宅を見ていただきます。

国産杉材のトップブランド、吉野産の杉だけをふんだんに使ったO様邸は、延べ床面積30坪の小規模住宅ですが、大変腕の良い大工さんの丁寧な仕事ぶりと吉野杉の美しさを見ていただくことができます。

その後、車で四条畷市のT様邸へ移動。

T様宅は2008年に竣工した伝統構法型住宅ですが、暖房には薪ストーブを使っていらっしゃいます。
伝統構法の家と薪ストーブって、実はすご~く相性が良いのですが、それを実感して頂くにはとても良い機会です。
 
東風のクライアントのみなさまは薪ストーブが大好きのようで、薪ストーブを使う上では薪集めの苦労などいろいろ障害もあるのですが、そのあたりの事情もユーザーのT様からじっくりお話を伺いたいと思っています。
薪ストーブのある木の家に住みたい!と思っていらっしゃる方はぜひご参加下さい。

なお、T様宅は桧のトップブランドである木曾檜をふんだんに使ってで建てた家です。

1日で杉の家&檜の家を見て、その違いなどを体感できる機会としてもとても貴重ですね。

【 日  程 】 02/27(日)

【 現場住所 】 奈良市内→移動して大阪府四條畷市へ
(お申込頂いた方へ住所をお知らせします)
【 時  間 】 13:00集合 16:00解散予定
【 定  員 】 20名

お申し込みはこちらからどうぞ。

すごい木が届きました・・・

2/2(水)に日帰りで静岡へ行ってきました。

昨年の夏に製材をお願いしていた原木を預けたままだったのですが、それをストックヤードに運んで頂くことになったので、材料の整理をするのと状態を確認するために静岡へ行ったのです。

今回運ばれてきた木は、2008年の晩秋・新月期に伐採した、樹齢120-130年の杉の木です。
もちろん、きちんと葉枯らしをした後に玉切りをした木です。

写真ではよくわからないかもしれませんが、ここに写っている木はどれも全て長さ7m~9mの特殊材で、通常は一般市場で流通しない長さの物ばかりです。
もちろん全て天然乾燥材で、すでに含水率はほとんどが25%以下という状態ですが、普通こういう材料を持っているところはほとんど無いでしょう。

林産地に問い合わせても、
「今から伐採して人工乾燥にかければ用意できるけど、天乾(自然乾燥のこと)でそんなに大きな材料は用意できないよ」
と言われるのがオチです。

2006年の秋に初めて自分で10本の原木の購入を始めてから、5年目でようやくここまで準備ができました。

さて、これをどう使っていくか・・・。
どれもとても素性の良い木だけに、喜んで頂ける方に使って頂きたいですね。

あなたはどちらが好きですか?
30年後に「そろそろ建て替えようか・・・」と言われる家と
「200年前のおじいちゃんが建てたの」と2211年に言ってもらえる家

今日は誕生日

このところ、日に日に日が長くなっているのを感じますね。
ちょっと前まで、関西では夕方5時を廻ると真っ暗だったのに、今は5時半を過ぎてもまだ少しの間は明るいです。
季節は着実に春に向かっています。

昨日は節分。
今日は立春。

2009年の立春に木造建築 東風と事務所名を改称して満2年が過ぎ、今日から3年目が始まります。

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この絵は、東風の字を書いて下さったゆらきの芦田様が書と一緒に描いて贈って下さったものです。
僕の机の前の壁に、東を向いて掛けてあります。
芦田様、いつも気にかけてくださってありがとうございます。

多くの皆様に支えられて木造建築だけをつくり続けていられることに、心から感謝しております。
本当にありがとうございます。

東風の名前に恥じないよう、そしてみなさまのご期待に応えるべく、また気持ちを新たにしてスタッフ一同頑張ります。
どうぞよろしくお願い申し上げます。

原木から家をつくる

先週末に桧の製材第2弾を行いました。

1/23には、第1弾として長さ6mの桧から長尺幅広の床板を木取りしたのですが、今回は3m・4mの原木から床板を採っていきました。

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原木を製材していくと、1本の木から全く節のないきれいな板も採れるし、また一方で節だらけの板も採れます。

これは木が山の斜面に生えている時の谷方向に向かって枝を多く出すことが原因なのですが、谷方向を向いていた面には節が多くなり、山方向を向いていた面からは節の少ない材料が採れます。

上の写真では節の多少に関らずみんな一緒にして積んでありますが、実際に部材として加工する前には節の有無によって一度材料を選別します。

今回は、節の多い材料は床板に使い、節が少ない材料は敷居などの造作材に使う、という具合で使い分けることになります。

魚に例えると、1匹のマグロからは赤身や中トロ・大トロが同時に採れ、少ないけれどもホホ肉も採れる、というのと良く似ていますね。

ちょっと想像してみて下さい。

ネタを市場で仕入れているお寿司屋さんに行って食べる時に、確かに味は美味しいけれどもネタに関する話を聞かされないで「美味しかったね」と言って食べて帰ってきた場合。

かたや、
「今日のネタはね、知り合いの漁師に直接頼んでおいて、水揚げされたやつを1匹丸ごと仕入れてきたんですよ。
だから今食べてもらった魚のあら煮とかホホ肉も用意できますよ。
ちょっと食べてみませんか?」
と板前さんが話してくれた店で食べて帰ってきた場合。

どっちが後々まで思い出に残るでしょうね? 

今回挽いた桧はせっかく90年もかけて育ってきた木なのですから、無駄なく使ってあげないと。
こういう材料の設計によって建物の印象や意味合いが全く違ってきます。

常々感じているのですが、もっと多くの方がこういう家づくりを自由にできるようにしたいなぁと思っています。
決してとんでもなく高くつくわけではないのですが、風評に押されてしまったり、住宅ローンの期限の制約などがあるせいで、現代ではまだまだ一般的ではありません。

東風では、できる限りこういう家づくりをクライアントの皆様にご提案していきます。

だって、こういうつくり方をすると、同じ家ような家は絶対にできなくて、つくっている職人もワクワクするし、山も木も林業家も喜ぶし、何よりクライアントの皆様にはとても喜んで頂けるからです。

東風のホームページでは、原木の伐採から家づくりを行った実例を公開しています

昔はこれが当たり前のつくり方だったんですけどね・・・。
やらねばならないことはまだまだ山積みです。