今週から神戸市で I 様邸改修工事が始まったので、毎朝神戸へ行っています。
阪神高速神戸線を京橋ICで降りて現場へ行き、帰りも京橋から西宮まで乗ってくるのですが、その京橋の乗り口の手前、メリケンパーク入口の交差点に信号待ちで停まると、いつも見てしまう建物がこれです。
神戸や横浜にお住まいの方にとっては、この手の建物はすっかりお馴染みかもしれませんが、見慣れない方にとっては
「なんだこれ?」
という方もいらっしゃるでしょうね 。
写真中央の高層ビルですが、よく見ると高層部分がガラス張りの現代的な建物なのに、低層部分は明治~大正時代のようなレトロな外観です。
明治期に一気に近代化の波が押し寄せた港町には、西洋風(?)の洋式建築が多く建てられましたが、それらが昭和の後期から平成の初期にかけて老朽化し、
「保存か?それとも建て替えか?」
という議論がなされました。
その結果、 中庸案とも言える【外壁保存】という手法が生まれました。
このように低層階のみ洋式建築の外壁だけを残したまま、構造的には新しい高層建築を新築する、というのがその外壁保存の考え方です。
外壁保存では、
「建物のすぐ目の前を歩く歩行者の目には低層階しか見えない
=今までの街の景観を維持するために、低層階のみ外壁を残す。
しかし、低層階のみでは建物の容積が足りないので、建物を高層化し
高層部分は現代的なガラスを多用した建築とする」
という考え方に基づいています。
僕も学生時代(かれこれ17-8年前)に、ゼミの在籍生を真っ二つに分け、外壁保存は是か非か?というようなディベートを課題としてやった覚えがあります。
神戸市内を走っていると、本当にこの外壁保存の建物が多いんですよね。
外壁保存でも、京都の新風館のように上部に高層階を継ぎ足さないものであれば大変結構なんですが、どうしてもこのような組み合わせは違和感を覚えます・・・。
(あれ、新風館は外壁保存だったかな? もしかしたらちょっと違うかも・・・。)
かといって、決して批判しているわけではないんですよ。
今日お伝えしたかったのは、そういう考え方で作られている建物もあるんですよ、っていうことです。
建築って難しいんですよ。
世の中にあるほとんどの建築は、私有財産としてつくるものなのですが、それが街の景観を構成するものになってしまうために、建築の外観には社会性が求められます。
学生の時に先生に言われました。
「だから美しくない建築を作るのは罪なんだ」
と。
やればやるほど、建築というのは面白い世界です。
【お知らせ】
今週末の2/27(日)に、奈良市と四条畷市で2つの現場が一度に見られる、欲張りな見学会を開催します。
奈良の現場では、吹抜けにこんな赤松のきれいな丸太梁も架かっています。
大工さんが手できれいに刻んでくれました。
どうぞお楽しみに。
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