T様との打合せが終わり、これから改修計画を立てる建物の材料や状態を見ていました。
もともとしっかりした建物であることは、以前調査した折にわかっていたのですが、床の間の材料を良く見ていると大変珍しい玉杢の材料が使われているのに気付きました。
現場がちょっと暗かったことと埃をかぶっていたので、樹種の特定まではできなかったのですが、ケヤキかタモと思われる表情の、上品な玉杢の床框でした。
T様がおっしゃるには、この家は100年前に地元の名家からここへ移築されてきた建物だとのこと。
それを聞いて、なるほどなぁ~と合点がいきました。
僕らは古い建物を観るとき、まず材料を観ます。
材料は良いけれど、全体の構成が悪い・・・という残念な建物は、近年建てられたものの中には割と多いのですが、100年くらい経過している建物の中にはほとんどないですね。
昔の職人さんは基本をきっちり抑えていたからでしょう。
近年は設計者と施工者の分業が進んできたことや技術が進んだ弊害で、建物をつくる上での基本が軽視されているように感じます。
そうすると、基本構成が全然できていないのに、材料だけはものすごく立派・・・というバランスの悪い建物が増えてしまうのです。
・・・と、話がそれてしまいました。
T様のお宅は、100年前に移築されようとしている時点で、すでに最低でも50-60年は経っていたでしょう。
とても大切なことですね。