月別アーカイブ: 2009年6月

伝統構法は先端技術

昨日、大阪市内の綿業会館にて、2009年度のきんき民家塾第1回講義が開催されました。

主催はNPO法人・日本民家再生協会 近畿地区運営委員会。
今回の講義のテーマは 『伝統構法の耐震性』 というもので、建築の専門家向けの講座としてもかなり高度な内容でした。

講師は京都大学名誉教授で、現在は立命館大学教授の鈴木祥之先生。


このテーマに関する関心はかなり高いようで、定員30名+α だったところに約50名の参加者が集まりました。
(受講できなかったみなさん、ごめんなさい)

きんき民家塾200906_2








上の写真は、開講の挨拶をしている小原塾長と参加者のみなさん。



きんき民家塾200906_1

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

↑ 今回の講師を引き受けてくださった、鈴木祥之先生。



印象に残った内容を簡単にまとめると以下の通りです。

○ 大きな地震で倒壊した木造建造物を詳細に調べていくと、倒壊原因は築造年数
  (=古さ)に関係ないことがわかる。築造年数よりもむしろ、不適切なな増改築、
  メンテナンスを適切に行っていないこと、シロアリ被害・木部の腐朽などによる
  建物の構造的な劣化が主な原因
○ 柔らかい建物には変形能力の大きな耐震要素で耐震補強することが重要。
  土壁で構成された柔らかい伝統構法に、安易に筋交いなどの耐震補強要素を付け
  加えることはかえって危険になるケースもある
○ 極めて大きな地震時に柱脚が滑ることによって上部建物への地震力は軽減される。
  しかし、柱脚が実際どのくらい滑るか?などについてはまだ研究途上で今後の課題である

というような木造柔構造に関する最前線の貴重なお話を聴くことができました。



最後に、今回の講義に際して鈴木先生が配布してくださった参考資料の中の一文に大変感銘を受けたので、抜粋して以下にご紹介します。



『伝統構法は、「伝統」という表現に古いイメージがあるが、決してそうではなく、大工棟梁の永年の技や知恵が盛り込まれた伝統技法は、今後の科学的な光のもとで先端技術になり得ること、また木造建築物の長寿命化、良質化を図るための技術として、伝統構法は有力な技術であると確信している。』
      -「伝統構法木造建築物の耐震性」(著・鈴木祥之氏)より抜粋ー



鈴木先生、ならびに参加してくださった皆様、どうもありがとうございました。



【見学会開催のお知らせ】
2007年に竣工した伝統構法の家で、2年間住んでみた感想を聞く見学会を
8/2(日)に大阪府四條畷市で開催します。詳しくはこちら

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障子の引手

水曜日に京都へ行った折、事務所に置いておくサンプル用として障子の引手を買ってきました。

行ったのは室(ムロ)金物さん。
室金物さんは、京都のその筋の人の中では知らぬ人はいないという有名な金物屋さんです。


障子の引手


 


 


 


 


 


 


 



上の写真は今回買ってきた障子用の引手です。
全て材料は黒檀(こくたん)という木材です。

同じ形のものを4つ買ってきたのですが、見てお分かりのように、大きさがそれぞれビミョーに違います。

右の小さいものから順番に、大きさを書いてみますね。

巾 13mm × 長さ 60mm ・・・一番右の小さいもの
巾 15mm × 長さ 65mm
巾 16mm × 長さ 67mm
巾 16mm × 長さ 72mm ・・・一番左の大きいもの



これらの引手は、障子自身の大きさや、たて框の太さなどによって使い分けます。
あたりまえの話ですが、小さくて華奢な障子には小さな引き手を。
大きくてどっしりした障子には大きな引き手を使います。

実はこれら以外にも、さらにもっと小さな引手や、さらに大きな引手もありますが、今回はそれらは不要と考えて買ってきませんでした。



こんな違いは、並べずにバラバラに見たら見分けがつかないような微妙な差ですが、実際に建具にはめてみると、えらく違って見えるものです。



この写真のように黒檀で作ったもの以外にも、紫檀とか桑、ゴマ竹で作ったものなどもあり、結構面白いものです。

あなたのお宅の障子にはどんな引き手が入っているか、一度よ~く見てみてください。

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壁土作りレポート 第4弾

京都の現場で寝かせている壁土も、ようやく一ヶ月が経過しました。

昨日現場へ行って寸法などの確認作業をした際に、土の発酵状態を確認してきましたのでご紹介します。

土作り0603

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

↑ 今はこんな状態です。
  かなり色が変化して、グレーになってきました。

  一週間前に左官屋さんが全体の練り返しをしてくれたのですが、
  それで土の状態が一気に変わった気がします。



参考までに、これまでの経過を写真でたどってみます。


土づくり

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

↑ これが土を現場に搬入した当日(4/30)
  まったく普通の土の色をしています。

土づくり0511

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

↑ 12日後(5/11)の状態。
  まだほとんど変化はありません。

土づくり0518_5

 

 

 

 

 

 

 

 

 


↑ 19日後(5/18)の状態。
  表面が少しグレーに変わってきました。

土作り0603

 

 

 

 

 

 

 

 

 


↑ そしてこれが冒頭に紹介した昨日の写真。
  搬入から34日経過しています。



この土はあと約2ヶ月間寝かせます。

これから気温も上がり、発酵には最適な気候になってくるので変化が楽しみです。
またご報告しますのでどうぞお楽しみに。



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京都市N邸・伝統構法の刻み、進行中です

昨日、兵庫県三田市の西本製材所へ行ってきました。
2月から取り掛かっている京都市N邸の刻みの作業状況を見るためです。

大工の西田さんがいつもの調子で丁寧に刻んでくれていました。
コツコツ、コツコツと、本当に気長に1人で黙々と作業を続けてくれています。
(西田さん、いつもありがとうございます)


刻み

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

上の写真は管柱の長ホゾを刻んで、最後にのみで仕上げているところです。
このホゾはメチャメチャ長くて、7寸の足固めを貫通した後、床束に4寸刺さるので、ホゾだけで1尺1寸あります。
(1尺1寸=約33cm)

 

だから普通ののみでは仕上げられなくて、特注の首長のみでないとうまく仕上げられません。



大工さんの道具を見ていると、同じのみにもいろんな種類があるんですが、
「これ、どんなときに使うの?」
って疑問に思うような道具ばかりです。

一度全部集めて詳しく話を聞いてみたいのですが、そんなことをしていたら半日くらいはゆうにかかりそうです。

でも、こういうことの積み重ねがこういう結果(↓)につながるんですよね。

 

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400年前の柱

昨日(5/31)は大阪府豊中市の服部緑地の中にある日本民家集落博物館で、子供民家塾というイベントを開催したので、参加してきました。

これから将来を担っていく子供たちに、古い民家や建物への関心を持ってもらおうという趣旨で、日本民家再生協会が企画したものです。

小学生の子供たちとその親ら、総勢21名が集まって、おくどさん(←関西ではかまどのことをこう呼びます)といろりに火を入れて、ご飯と豚汁をつくってみんなで食べました。

子供民家塾


 


 


 


 


 


 


 


かまどに火を入れているときの様子。
子供たちは興味津々で見入っていました。
帽子をかぶっているおじさんは、今回指導してくださった江頭(えがしら)さんです。



日本民家集落博物館の中にある、能勢の民家をお借りして今回のイベントを開催したのですが、日本民家集落博物館の中でも一番古いというこの能勢の民家が建てられたのは今から400年前=江戸時代初期のことだそうです。

この建物は普通の農家の建物だったので、ごくごく質素な材料が使われた、飾り気の無い普通の家です。

でも築400年と聞いて改めて材料を見てみると、なるほど柱はほとんど栗の木です。

400年前の柱























仕上も大鋸で挽いただけと思われる粗野な仕上で、大きさもそんなに太くない4寸弱の柱でしたが、まだまだこれからも充分耐えうる力強い表情でした。

さすが栗ですね。

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ちょっと期待

今朝の日経の記事より。

農水省が木材の利用拡大促進のために新法を検討しているようです。
国産材を使うなど環境配慮の住宅に税制面で優遇措置が適用されるなど。

木材利用増へ新法、農水省検討 国産材住宅の税優遇 

どんな形で進むのでしょうか。
ちょっと期待しています。