低炭素
これからの社会に欠かせないキーワードですね。
今朝も新聞を読んでいて、このことが書かれていたのでふと思い出して記事を書いています。
今は構造用木材の乾燥というと、人工乾燥がほとんどです。
率で言うと、90%以上って感じではないでしょうか?
一般に広く行われている人工乾燥には、たくさんの重油を燃焼させます。
つまり、木材を乾燥させるために、たくさんのCO2を排出しているという、奇妙な構造になってしまっています。
そんな中、何度も申し上げていますがうちでは天然乾燥に取り組んでいます。
言葉では何度もご説明してきたのですが、順を追って写真で説明したことが無かったなぁ・・・と思ったので一度書いてみますね。
まず、1枚目の写真は伐採です。
これは2007年11月末に行った新月期の伐採の時の写真です。
うちではまず伐採時期を11月の新月期に限定します。
この木は樹齢120-130年の杉の木です。
次に、伐採した木をそのまま4ヶ月間山の斜面に放置します。
これを【葉枯らし】と言います。
その様子が下の写真です。
幹に枝葉を残したままで放置すると、木は葉の部分で光合成します。
すると樹芯に残っている水分や養分を消費するので、木材の乾燥が進みます。
同時に木の色も変化します。
発色がとても良くなると言われています。
(注:うちで過去に行った伐採の際には、全て4ヶ月の葉枯らしを行っていて、その樹芯の色は確かに素晴らしい色が出ています。
しかし、逆に同じ木を葉枯らししていないとどうなるのか?という実験をしていないので、葉枯らしをすることでどれだけ樹芯の発色が変わるのか?という正確なところは掴めていません)
3枚目の写真(↓)は、伐採直後の木の木口の写真です。
伐ってみて判ったのですが、この木は植林された木ではなくどうやら実生(みしょう)の天然木だったようで、年輪の中心部の詰み具合(年輪の間隔)が植林の木とは全く違います。
画像をクリックして拡大して見て頂くと、僕の手の大きさに比してその年輪の細かさが良くわかっていただけるのではないかと思います。
4枚目の写真(↓)は、2007年3月に撮った写真で、上の木とは別の木です。
上の写真と樹芯(赤身)部分の色を比べてみて頂くと、木材の乾燥が進んでいる様子が良く判ると思います。
(上の写真はまだ多くの水分を含んでいるボトボトの状態。
一方、下の写真は4ヶ月の葉枯らし期間を経た後のため、
木材中の水分をかなり消費して、乾燥が進んでいます。)
この写真を見ると、色がくすんでしまっていてあまり美しくないように見えますよね?
でもそれが製材して仕上げると、こんな色(↓)になるんです。
新月伐採というと、
「新月の日に伐ればいいのか!」
と勘違いされている方がとても多いのですが、実は【いつ伐るか?】ということ以上にこの4ヶ月間の葉枯らしがと~っても重要です。
葉枯らしを終えたら、角材に製材して雨にあて、乾燥させます。
雨に当てる期間は人によってまちまちで、いろんなやり方があるようです。
昨年うちでは3ヶ月程度まず雨に当てて、その後屋根を架けて材料を濡らさないようにしておきました。
しかし、最初から最後までず~っと雨ざらしにして乾燥させるやり方もあるようで、今後もいろいろな方法を試しながら一番いい方法を探りたいと思っているところです。
昨年の11月に伐採した木材の葉枯らし期間がもうすぐ満了します。
3月の下旬にはまた静岡へ行って玉切りに立ち会ってきますが、今年はいろんな乾燥方法を試してみるつもりです。
こうやって乾燥させた木材は、乾燥工程で一切炭素(資源)を消費しません。
そして木材の質も格段に良くなり、発色も大変美しい色が出ます。
ただ難点は、時間がかかることと保管中の管理が難しいこと。
最近は、このような天然乾燥材だけを扱う材木屋さんも少~しだけ出てきていますが、まだまだめったにありません。
僕は木材のもつポテンシャルを最大限引き出したいのでこのような取り組みをしているのですが、これが同時に地球温暖化防止のためにも役立つのですから、絶対に今後はこのような取り組みがもっと広く一般化していくと思います。
でもそうなるのにはまだ5年くらいはかかりそう・・・?
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