月別アーカイブ: 2007年11月

晩秋のかき

早いもので、もう今年もあと1ヶ月を残すのみとなりました。

この前の週末に、3年前から行っている
【ボランティアによるかやぶき民家再生プロジェクト】
の今年最後の現場での作業を行いました。

今回は、前回(9月)に解体した納屋から出てきた残材の後片付けが主な作業でした。
下の写真は、全ての作業が完了したところで、少数精鋭の参加者全員で撮ったものです。

この活動は2005年に開始したので、実質3年間続けてきたことになります。
参加者のみなさんが毎回毎回遠くから足を運んでくださるおかげで、この信じられないプロジェクトが運営できています。
(参加者のみなさん、いつも本当にありがとうございます!)

今後もまだあと7年続ける予定ですが、過去3年間の活動内容を今週末(12/1)に東京で行われる民家フォーラム2007で僕が報告・発表することになりました。

会場は東京・池袋にある自由学園の講堂です。
自由学園はフランクロイドライトが設計した建物としても有名です。
興味がある方はぜひお越し下さい。

この活動(←かやぶき民家再生プロジェクト)を行うときは、いつも参加者の皆さんと一緒に、近隣の古い民家が残っているまちなみを見学しに行きます。
今回は坂越(さこし)という瀬戸内に面した静かな港町に行きました。

この坂越は小さな町ですが、丘の上から見下ろせる瓦の家並みがとてもきれいです。
(上の画像はぜひ拡大表示してご覧下さい)

この景色を見るたびに、
「こんな町をみんなで作ってみたいなぁ・・・」
といつも感じます。

やはり瓦葺きの屋根で統一された景観は美しいですね
フィレンツェやベニスでも素焼きの赤い瓦で統一されたまちなみはやはり美しかった。
日本の古都・京都でこのような景観が見られないのが本当に残念です。
( ↑ なんで京都はああなってしまったんでしょうね?)

僕が以前から死ぬまでに一度は行ってみたい!と思っている中国の麗江(リーチャン)という町があるのですが、ここも美しい瓦葺の家並みが眼下一面に広がる景色を見られます。

話が少し逸れましたが、その坂越に行った折、その日の朝に水揚げしたと思われる海産物を海辺で販売していました。
坂越は牡蠣の産地なんだそうです。
( ↑ 初めて知りました)

牡蠣を買ってきて、上述のボランティア現場でお昼に炭火で焼いてみんなで頂きました。
美味しかった~♪
ついでに、現場で採り放題だった敷地内の柿も並べて撮ったのが上の写真です。

自然の恩恵に触れると本当に豊かな気持ちになりますね。
感謝。

今週末(12/1-2)、民家フォーラム2007が
東京・池袋の自由学園で開催されます
詳しくはこちら

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世界に、300年先も美しい風景を

勉強

このところ出張やクライアントとの打合せが重なっているため、なかなかブログの更新ができていませんが、書きたいことはどんどん溜まってきていて書ききれない状態です。

出張の移動時間に本を読んだり、研究発表会に参加したりして様々な事柄について新しいことを学ばせてもらっています。
「へぇ~」
「ホェ~!」
「・・・(涙)」
ということの連続です。

またそのうちにみなさんにもお伝えしたいと思っていますが、少しお待ち下さい。



これも後日もっと詳しくご報告したいと思いますが、11/18(日)に東京・築地で行われた新月の木国際協会の研究発表会でも、目からうろこの情報満載でした。

新月期(下弦の月から新月に至る7日間)に伐った木が、どうして腐りにくくカビがつきにくいのか?ということが、目下新月伐採最大の疑問です。
これについても、現状の研究報告がなされました。

僕もこれからさらに勉強していくところなのであまり詳しくはお答えできないのですが、この問題の根幹の部分を解明するためには、ヒッグス理論という最先端の量子物理学理論が証明されることを待たねばならないそうです。

今後2年かけて、このヒッグス理論証明のための実験がスイスにある世界最大級の施設(スーパーカミオカンデよりもっとデカイ加速器)で行われるそうです。
この実験は、分子同士をものすごいエネルギーで衝突させて破壊するものらしく、この証明が成立すれば現在の物理学では証明できない事柄が次々に解明されるとのこと。
しかし逆に証明できない結果がでると、現在の物理学が根底から覆されてしまうという、とんでもなく重要な実験だそうです。
(物理学が嫌いな方、ややこしい話でゴメンナサイ)

他にも、熊の話、しいたけ、稲、電磁波と太陽風、暦の話などいろいろ勉強する糸口を頂いてきました。
(暦の話についてはとてもおもしろいので、何とか近いうちに書きたいと思っていますが・・・)
読まないといけない本もわんさか出てきて、来年は研究・勉強の一年になるかもしれません。

わけのわからない近況報告ですみません。
来月になったらもう少し頻繁に更新できると思いますのでしばらくお待ち下さい。

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早朝の散歩

1週間前から、毎朝45分くらいかけて約3km歩くことを始めました。
今月上旬に行った新月伐採の際に、山道を歩いていて息が上がってしまったため、
「これはマズイ・・・」
と思い、林業家のいとこの勧めもあって早足で歩くことにしたのです。

歩くだけですからハードな運動ではありませんが、完歩するころには全身が温まってきます。
僕の自宅のすぐ近くには瑞ヶ池(ずがいけ)という貯水池があって、その池の周囲1.5kmは様々な木々が植えられた緑豊かなランニングコースとして整備されているので、歩いている人や走っている人はわりとたくさんいます。
ここを毎朝、日の出時刻を狙って2周してくるのです。

調べてはいませんが、最近大阪近辺での日の出時刻はおそらく6時近辺でしょうね。
6:15くらいになるとほんのり明るくなってきます。

毎朝僕は4時ごろには起きて仕事を始めるのでもっと早い時間帯に歩くこともできるのですが、暗いときに歩くと景色が面白くないので空が白み始めた時間帯に歩くようにしています。

先述したように、この池の周りにはいろんな木が植えられているので、現在はちょうど紅葉していて色鮮やかです。
でも木を一本ずつ見比べると、紅葉の速度に違いがあるのがわかります。
例えば同じ桜の木同士でも、もう見頃なくらいきれいに紅葉しているものと、まだまだこれからという木があります。

それが個体差によるものなのか、同じ桜に見えて実は微妙に品種が違うものだからなのか僕にはよくわかりませんが、木も頑張って生きているんだなぁということが感じられ、なかなか面白いです。

歩きながら木を見ていると、前々から植物のことをもっと深く勉強してみたい、と思っていた欲求がまたムクムクと湧き上がってくるのですが、まだなかなか着手できていません。
(↑高校生の時、僕は理科の生物が大の苦手で常に赤点でした。
それを大好きな物理で補っていたので何とか落第せずに済んだのですが)
植物の勉強、来年の研究テーマにしようかな?

今日は東京・晴海で開催される新月の木国際協会の研究発表会に参加するため、昨夜から関東に来ています。
新月材や葉枯らし過程において、木の内部の分子レベルで起こっている化学変化などについても研究結果が発表されると聞いていて、とても楽しみです。
またご報告しますね。
どうぞお楽しみに。

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丹後の古民家改修工事

天橋立(あまのはしだて)から車で20分くらいのところで、店舗の改修工事を行っています。
着工してから約1ヶ月が経過して、工事もだいぶ進んできました。
上の写真はカラオケや社交ダンスを行うホールの工事中の様子です。
2階の梁がたわんでいたので、解体した古材(曲がった松の梁)を柱に転用し、補強しました。

この現場では、現場内に数棟残っていた既存建物のうち、3棟のみを残してそれ以外は解体しました。
解体した建物から出てきた古材を出来る限り使って内装を仕上げて欲しい、というクライアントのご要望に沿って、いろんな材料を加工して再利用しています。

下の写真は、元々小屋梁として使われていた6mの梁を挽き割って、カウンターの天板として使おうとしている材料です。
これを3枚はぎ合わせてカウンターに仕上げます。

さてどんな風に仕上がることやら。

古材を使っていくのは頭の体操みたいなところがあって、材料を基に柔軟にデザインを変更しながら考えていく面白さがあります。
大工さんもなかなか話のわかる方で、僕よりも少し若いのですがちゃんと話が通じるので楽しいです。
(こういう仕事ができない=話が通じない大工さんの方が、今は実は多いんですよ)

竣工は1月末の予定です。

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新材なのに古い木?

ブログの更新が1週間も滞ってしまいました。

静岡へ行って、帰ってきてからバタバタとクライアントとの打合せやその準備が数件重なり、更新ができなかったためです。
いつも見に来てくださるみなさん、どうもすみません。
そしてありがとうございます。

ご報告が遅くなりましたが、11/9(金)(←新月の前日)に今年の新月伐採作業@静岡を無事完了しました。

上の写真は、静岡市葵区梅ヶ島(うめがしま)の伐採完了現場の状態です。
斜面に横たわっているのが、今回の新月期に伐採した木材です。
(全ての画像はクリックすると拡大表示できます)

このままの状態で、山の斜面に来年の3月まで(4ヶ月間)寝かせておいて葉枯らし乾燥させます。

今回この山では、90年生(←植えてから90年経っているという意味)の杉と桧の林で伐採を行いましたが、これからさらに生長させる木を残しながら、必要な本数だけを伐採しました。
立っている木は今回伐採せずに残した木です。
これを間伐といいます。
(→全部の木を伐採することを、皆伐:かいばつと言います)

この山は今後当分は伐採せずに山の管理を続けていきます。
あと110年維持していって、200年生くらいの山ができるといいなぁ、などと勝手な夢を膨らませています(笑)。

伐採後の現場の状態を確認するために、NPO法人・新月の木国際協会の現認者・大山さんが小田原から再び来て下さいました。
(大山さん、何度も足を運んでくださってどうもありがとうございます)

倒した木と大山さんを比べると、大山さんが小さく見えます(笑)。
でも本当に、木は立っている時(←伐採前)は割と細く感じるんですが、いざ倒してみると大きいんですよね。

今回は静岡市内の2つの山で伐採を行いました。

一つは上述の梅ヶ島。
ここは僕の曽祖父(ひいおじいちゃん)が90年前に植えた木です。

もう一つが静岡市葵区坂本という場所にある、山田さんの山です。
この山田さんがおもしろいことを言っていましたのでご紹介します。

上の2枚の写真を見てください。
どちらも同じ山(←山田さんの山)に生えていた杉の木ですが、樹皮の表面が違いますよね?

左は50年生、右は70年生の杉です。
左の杉は樹皮が赤々としていますが、右の杉は樹皮の表面にびっしりと薄く苔が生えて緑色になっています。
( ↑ 苔が生えていても病気などで木が傷んでいるわけではありません。
全く健康な状態です)

山田さんはこれを、「若い木、古い木」と言っていました。
50年生はまだ若いのです。
そして70年生はそれに比べて古い木だと言います。

これらの木は製材すると、こんな風にどちらも同じく真新しい木材=新材(※)になります。
(※) 古民家などを解体すると出てくる【古材】に対して、古民家業界では【新材】と呼ばれます。

でも実際は、植えてから70年、90年、100年以上と長い時間を生き抜いてきた、新材なのに「古い木」なのです。
( ※ 昨年は110年生の木を伐採しました。
来年はまたこの110年生の山を伐採する予定です)

市中の喧騒が届かない、静かな山に入って古い木と対峙していると、いろんなことを感じます。
木はとても優しく黙っていて何も言いませんが、

遠い祖先の恩恵を受けて今僕たちが木を使わせてもらえること
山の中に生えている様々な植物やそれを食べて育っていく動物たち
そして山に降り注いだ雨水が土の中に染み込んで浄化され、
人間を含めた全ての生物がそれによって生かされていること

などを無言で表現しています。
こちらがそこに意識を向けなければ気付かない、とても静かな言葉です。

自分がいかに小さな存在かということを感じ、同時に生かされている者としてこの豊かな自然環境を大切に守っていくために自分に何が出来るだろうか?ということに、自然と思いが向いていきます。

今回何度も何度も山に入って、とても大切なことを改めて木に教わりました。

もちろん、こういうことは頭ではわかっていたんですけどね。
うまく表現できませんが、腑に落ちたというか、頭だけではなく心と体に染み込んだという感じがします。

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Bird’s eye Maple

昨日、東京の材木屋さんから板が届きました。
関西近辺の建築用材としては滅多に使うことのない、楓(かえで)の木です。

北海道辺りに行くと、もしかするとたまに使われることがあるかもしれませんね。

この板はこの家の表札にするために特別に頼んだ板なのですが、楓特有のBird’s eye (バーズアイ)という杢目が出ています。

上記の画像をクリックして拡大写真を見ていただくとわかると思うのですが、板の表面に小さな丸いプツプツとした模様があります。

これが小鳥の目のように見えることから Bird’s eye と呼ぶのですが、この杢目は楓特有の目です。

この家の表札を作ると決まったときに、
「楓の木で作りませんか?」
とクライアントにご提案しました。

一般に、日本の家で古くから表札に一番良く使われるのは桧(ひのき)です。

じゃあどうして今回は桧ではなくて楓にしたのか?
その理由は、2つあります。

その1 この家がすごく風通しのいい家だから。
夏もエアコンなしで過ごす為に、メチャメチャ風通しがいいように
設計しています。
この家にとって、風は無形財産のようなものです。

その2 この家の3人の子供たちの名前が、飛・風・空など、
全て風につながるようなイメージの漢字が使われているから

です。
楓という字を見ていただければお分かりの通り、かえでは木+風と書きます。
だから、形や色・字体などを決める前に、まず材料が決まりました。
クライアントのSさんも、このアイデアにはすぐ同意して下さいました。

これからこの木をどう料理して表札に仕上げるか、いろいろ実験をしてみてから着手します。

仕上がりを公表できるかどうかはクライアントと要相談ですが、もし了承が得られれば完成してから公開しますね。

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2007年度の新月伐採を開始しました

11/3(土)、静岡市内のSGEC認証林2ヶ所で今年の新月材の伐採に着手しました。
(今回の新月伐採に協力してくださった静岡市の認証林を所有・管理されているグループはこちら

今年は11/9(金)までのわずか7日間に、2棟分の住宅の用材を確保する木材量を伐採します。

そしてNPO法人・新月の木国際協会の現認を受け、新月材であることの証明を行います。

2007新月伐採-2

今回の現認者、新月の木国際協会理事の大山さん。
山の状況(方位・斜度・植生・緯度・軽度・標高)などを記録します。
大山さんは小田原から深夜の電車に乗って静岡まで来て下さいました。

2007新月伐採-1

林業家(左)と大山さん(右)。
お互い木が大好きな者同士で話が弾みました。

2007新月伐採-3

伐採した木には、その場で全て木口にナンバーを打ちます。
(上の写真をクリックしていただければ、画像を拡大表示できて
 よくおわかり頂けると思います)

これにより、いつ(何年の何月何日)どこで・誰が・何番目に伐った木か?
ということが全て記録として残ります。

2007新月伐採-4

11/5(月)には、京都よりクライアントのNさんがわざわざ現場を見学しに来て下さいました。
(Nさん、どうもありがとうございました)

Nさんも初めて見る伐採作業にいろいろと感じることがあったようです。

その一方で、毎日山に入って黙々と伐採作業をして下さっている林業家のみなさんにとっても、

 〇 実際に今、自分たちが伐っているこの木を使って下さる予定の
   Nさんが京都から現場まで観に来て下さったこと
 〇 現場で一緒にお弁当を食べながらいろんな会話を交わしたこと

などが、とても励みになったことだろうと思います。

生産者と消費者を直接引き合わせ、お互いの顔や人となりが見える機会が設けられたことは、これから行う家づくりをより温かく強いものにしていく上でとても大きな意味をもってくることでしょう。

消費者であるNさんにはより深い満足感を、生産者である林業家には誇りと自信をそれぞれに感じていただけたのであれば、僕も少しはお役に立てたのだろうと思います。

11/5の夜に一旦兵庫へ帰ってきましたが、11/9には伐採完了を確認するために再び静岡へ戻ります。

先述の新月の木国際協会の大山さんにもそのときには現場へ来て頂いて、現認をして今年の伐採工程は完了です。
(もちろん、それから4ヶ月の葉枯らしは行いますよ)

またご報告いたしますので、どうぞお楽しみに。

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