月別アーカイブ: 2006年10月

薪ストーブ見学と草刈

このところ、日々の業務に忙殺されて全くブログの更新ができず、すっかりご無沙汰していましたが、ボチボチ更新していきます。
(↑書きたいことは、日々溜まっていっているので)

昨日は神戸市北区に30坪の1LDKの家を建てようとされているSさん家族5人と一緒に、神戸市兵庫区にある、グランビルという薪ストーブ屋さんに行きました。

設計した本人がこんなことを言うと全く説得力がないのですが(笑)、この家のプランは圧巻です。
30坪の平屋の建物で、廊下の面積が0(ゼロ=全くなし)、家の中央に薪ストーブが座っているという、こんな家(↓)です。

外壁は、上から下まで全面杉板張り。
とにかく、木・木・木・・・という家。
エアコン(=冷暖房)なし、床暖なし、暖房は薪ストーブのみ。
キッチンは無骨なステンレスの骨組みのみで良くて、食洗機なんて要らない。
でもサッシュは絶対木製!アルミはダメ。
という、クライアントであるSさんの割り切りがハッキリした家です。
完成は、来年6月の予定。
(↑楽しみ、楽しみ♪)

と、話がそれてしまいましたが、そんなSさん一家と薪ストーブを見に行きました。
僕が参画しているNPO法人・日本民家再生リサイクル協会の仲間である、グランビル神戸店へおじゃまして、実物のストーブを見て、実際にSさんのご主人が薪ストーブに火を入れてみました。

僕も、薪ストーブに火を入れる瞬間を見るのは、実は今回が初めてでした。
焚き付けに針葉樹(杉・桧・松など)の細く割った木を使って、その下に旅館の料理のお膳で活躍する小さな固形燃料を置きます。
この固形燃料が15分間燃え続けるらしいので、これを使うと火をつけるのはさほど難しくないようです。

意外だったのは、火を入れて薪に火がついてからも、薪ストーブから暖かい熱が放射され始めるまでに1時間くらいかかる、ということでした。
薪ストーブの中はバンバン火が燃えていても、厚い鋳物でできた重厚な薪ストーブは自分自身(←薪ストーブ)が暖まってからでないと、炉内部の熱を外に伝えることができません。

これは薪ストーブの熱容量が大きいためです。
熱容量が大きい物質は、暖まりにくく冷めにくい、という性質を持っています。
ですから、一旦薪ストーブ本体が暖まってしまえば、中で火が消えてしまってもまだずっと余熱で暖かさが持続するのですが、その逆に着火してから放熱し始めるまでにも時間がかかる、というわけです。

グランビル神戸の店長・赤路(あかじ)さんは、
「薪ストーブが暖まるまでの間は、補助暖房器具が必要だと思いますよ。」
とおっしゃっていました。

その後、Sさん一家と現場へ行き、家族総出で現場の草刈をしました。
(↑もちろん、僕も一緒にやりました)
来週、地盤調査(サウンディング)をするのに備えて、草ボウボウだった現場をきれいにするためです。

草刈をしていると、すすきの葉っぱにカマキリの卵(泡が固まったようなアレです)が産み付けられていたり、カブトムシの幼虫?みたいなのがいたり、バッタや青虫を発見したりして、子供達は大忙しでした。
もちろん子供たちも、刈った草を運んだりして草刈を一生懸命手伝いましたよ。

Sさんの一家は、「何をする時でも、家族全員で一緒にやる」という方針だそうで、今回の家づくりにおいても、草刈や地盤調査に参加して積極的に家づくりを楽しむというスタンスがにじみ出ています。

きっと、とってもいい家ができることでしょう。

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世界に、300年先も美しい風景を

木曽のみんながつくってくれる大阪の家  構造見学会を開催します

大阪府四条畷市内で建築中の現場の構造見学会を開催します。

開催日:2006/11/26(日) AM11:00開始 (終了予定時刻 13:00)
開催場所:大阪府四条畷市

この家は、すべて国産の木材(主に長野県木曽周辺産。ひのき、杉、ヒバ、赤松、唐松)をふんだんに使い、仕口や継手には金物を使わずに栓(せん)を打ち込んで止める、昔ながらの手刻みの組み方によって建てられています。

詳しくはこちらのページでご確認下さい。

 

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辯財天の皆様、おつかれさま。そしてありがとう!

ついに行ってきました!西条祭り。
と、いきなり言われても、何のことやらわかりませんよね?

西条祭りとは、愛媛県西条市で毎年10/16に行われている、伊曽乃神社の例大祭のことです。

総勢80基以上(壮観です!)ものだんじりと太鼓台が集結して、市内を練り歩くのですが、他のお祭りと大きく違うところは、だんじりを曳く(車が付いていてロープで引っ張って曳航する)のではなく、御輿のように実際に人間の肩で担いで持ち上げたまま練り歩くのです。

この担ぎ手のことを、【舁夫(かきふ)】と言いますが、僕もこの舁夫の1人として辯財天(べざいてんと読みます。べんざいてん、ではありません)のだんじりメンバーに加えていただいて、だんじりを舁(か)いてきました。

ここから先でご紹介している画像は全てクリックすると拡大表示できます。

深夜1:00に出発し、神様が待っている御旅所(おたびしょ)へ向かいます。
写真に写せないのが残念ですが、闇の中にゆらめくろうそくの炎と、漆塗りのだんじりの鈍い光は見とれるほどに美しく、素晴らしかったです。

提灯には、だんじりの名前である【辯財天】の文字が書かれています。
この明かりは、もちろんろうそくで電気などは使っていません。
たまに消えたりもします。

夜も明けて、辯財天の雄姿が拝めるようになりました。
この写真を写している最中も、総勢11名の肩で担ぎ上げて歩いているところで、もちろん車などは一切付いていません。

だんじりを舁(か)くメンバーは、背中にそれぞれの屋台名(うちは辯財天)が入ったハッピを着ています。
だんじりの舁夫は、お酒もビールも呑み放題。
お酒は豪快に一升瓶をラッパのみ×まわし飲みです。酔って舁けなくなってはイカンと思い、僕はお酒を飲む量を多少セーブしていましたが、暑さと重労働のせいか、ほとんど酔いませんでした。

市内を練り歩き、午前中のクライマックス・御殿前(ごてんまえ)に着いた後、他のだんじりと肩を並べて整列し、一服します。
ここで婦人会のみなさんが炊き出しをしてくださったのですが、そのおにぎりと味噌汁、最高でした。

辯財天のだんじりは1860年代に作られたもので、約150年経っているそうです。
今年は石川県の輪島に運んで、輪島塗の職人さんに漆を塗り直してもらったそうで、新聞の記事にもなったとのこと。

記事を読んだ方で
「このだんじりを見るために来た」
というギャラリーの人もいました。

ところで、ちょっと不思議なことがありました。
下の2枚の写真を見比べてみてください。

 

左の写真は、だんじりの真正面にカメラを据えて写したもの。
右の写真は、だんじりに対して約30°の角度から写したもの。
どう違うかわかりますか?

漆で仕上げただんじりの表面のツヤの出方が、正面から見たときと斜めから見たときで全く違うのです。
正面から見ると、落ち着いたつや消しのようで何も写りこまないのですが、
斜めから見ると、ピカーっとツヤツヤに光ってまわりの景色がきれいに写りこむんです。
一体どうなっているんでしょう?
今度輪島に行くことがあったらぜひ聞いてみたいと思います。

日も暮れようとする18:00ごろ、加茂川でフィナーレの宮入を迎えます。

加茂川の土手にだんじりを並べるために力を振り絞って土手の坂を担いで登るのですが、これが危ないのなんの。
自分も担ぎながら、「ここで脚を絡ませて誰かこけたりでもしたら、だんじりに曳かれて大惨事やで!」とヒヤヒヤしっぱなしでした。

宮入を見届けた後、各だんじりの提灯に灯がともり、またかついで自分たちの町内へ帰還します。

初めて西条祭りというものを知り(恥ずかしながら今まで知りませんでした。ごめんなさい)、いきなり舁夫として参加させていただいたわけですが、僕が一番印象に残ったのは、同じ地区(町内)の年齢バラバラのみなさんが、心を一つにしてだんじりを舁くという、そのプロセスです。

だんじりは400kgくらいあって、それをたったの11人で担ぐのですから、一人の肩で平均40kgくらいの荷重を支えていることになります。

必死になって担ぐ最中、そのつらさを跳ね飛ばすように、「よいやさ~!よいとさ~!」と大声を張り上げて掛け声をかけながら、いろんな唄を唄って進んでいきます。
5分担いで進んでは5分休み、また5分担ぐということを延々18時間くらい(もちろん交代しながら)続けるわけですが、そこには本当にたくさんのいい顔がありました。
自分が舁夫ではない時に、何枚か撮ったものをここでご紹介します。

同じ辯財天の舁夫の方が、

「このお祭りは誰かに見せるためにやるんやない。
自分たちのためにやるんじゃ。」

と言っていましたが、それが舁夫全員の顔に出ていました。
(どの画像も、クリックすると拡大表示できます)

今回、辯財天の舁夫の1人として、メンバーに加えて頂けたのは、僕の発行しているメルマガの読者である、西条市のKさんの多大なる尽力のおかげです。
全くの初対面だというのに、辯財天の仲間の皆様、Kさんのご家族のみなさまにも手厚く歓迎していただき、本当に何から何までお世話になりました。
厚く厚く御礼申し上げます。

手前でだんじりを担いでいるのがKさん。

最後に。

祭りの翌日の僕の体はボロボロで、歩く際にもペンギンのように体を揺らしながらでないと歩けないほどの筋肉痛です。

でも、来年も絶対行きます!
辯財天のみなさま、どうぞよろしくお願いします。

【参考まで】

僕は今回、舁夫として参加させてもらっていたので、お祭り全体の流れをうまくあなたにお伝えできるような写真は撮れませんでした。
また、祭りの詳しい解説などもうまくできていません。

「西条祭りってどんな祭りなんだろう?」
と興味をもたれた方は、下記サイトを見ていただくと、その全工程がよくわかると思いますので、ここでご紹介しておきます。

西条まつり 2005

現物の迫力

今日は朝から現場に行って、午前中だけ建前のお手伝いをしてきました。
久しぶりの手刻みの現場で、楽しかったですね。
やはりプレカットとは違って、とてもいいものです。

当然のことながら、この建物はうちの事務所で設計をしたので、建物の形は隅々まで大体自分の頭に入っていて、イメージ通りのものが目の前で出来上がっていく過程を見ているわけなのですが、やはり現物の迫力は違います。

何よりも
1. 木材の表情と香り
2. 職人の技術が凝縮している仕口(しくち)と継ぎ手(つぎて)
に圧倒されますね。
ここが木造の醍醐味です。

まぁ、僕なんかが口で言うよりも、実際に画像を見てもらった方がよく伝わると思うので、現場で撮ってきた写真を掲載します。
(すべての画像はクリックすると拡大表示できます)

柱に貫(ぬき)を通しているところです。
最近は土壁をつけるケースが少ないので
こんな作業風景を見ることはめったになくなりました

貫が通し終わりました。

通柱を貫く胴差のヤトイが抜けないように、車知(しゃち)栓を打ち込んで留めています

窓台の下端に車知栓を打ち込んでいる大工さん

鼻栓

通し柱と胴差し(どうざし)を緊結する仕口
ヤトイを込栓(こみせん)と鼻栓(はなせん)で結い、引き抜きに抵抗するように組んでいます。


吹き抜けにかかる、交差する丸太梁。
材料は木曽のヒバ(あすなろ)で、とても目の詰まった美しい材料です。そして、それを仕上げた大工さんの技術とセンスが素晴らしかった。

いくら設計をしていても、実際の建物がどう出来上がってくるか?というのは、やはり材料の持つ力や美しさ、実際に手を下してその木材を刻む職人さん達によって全く変わってきます。

ここは、残念ですが設計者の力の及ばないところです。

いかに職人さんに腕を震わせたくなるような設計をするか、というのが木造建築物における設計者の実は一番の腕の見せ所なのですが、それを感じさせないように建物全体をバランスよく仕上げることができて、材料の美しさと職人の技が引き立つ建物になってくれれば大成功だと僕は考えています。

このあたりの感覚は、ちょっと伝わりにくいでしょうね(笑)。

この現場を担当しているうちのスタッフも、
このところ水を得た魚のようになっています。
やはり木造は現場に全てがあるなぁ、と感じます。

最後に、とてもいい機会を与えてくださった建築主のTさんと、
素晴らしい仕事をしてくださった職人さんたちに感謝。

今週末の上棟式とその後の宴会が楽しみです。

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昨日は地鎮祭でした

昨日は西宮市内の現場で、地鎮祭を執り行いました。
ご覧のように素晴らしい天気の中、つつがなく終わりました。
今回は現場の近くの神社の宮司さんに、地鎮祭をお願いしました。

地鎮祭には2つの目的があります。

その1 日本の土地の神様である大地主命(おおとこぬしのみこと)と
地域の氏神様の両方をお祀りして、土地を清める
その2 工事の安全を祈願する

鯛や野菜、餅などの供物を祭壇にお供えし、盛り砂に鋤(すき)や鍬(くわ)を入れて、
「これから工事をさせていただきます、どうぞよろしくお願いいたします」
ということを神様にご報告する儀式が地鎮祭です。

地鎮祭をやったからといって、科学的にその効用が認められているわけではありませんが、やはり式が完了した後は気分がすがすがしく、安心します。

宮司さんもおっしゃっていましたが、最近は地鎮祭を行わないケースも多いですね。
僕は割と建築にまつわるこういう神事が好きなので好意的に受け止めている性質(タチ)ですが、改めてこういう神事に際すると、その土地固有の歴史や来し方などを宮司さんから聴かせて頂く機会にも恵まれて興味深いです。

今回は名前の通った大きな神社などに依頼せず、すぐ近くの小さな神社にお願いしましたが、それがとてもよかったと感じました。

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木曽のみんなが作ってくれる大阪の家~建前が始まりました

昨日から、大阪府四条畷市内で、建前が始まりました。
この家のプロジェクト名は、

【木曽のみんなが作ってくれる大阪の家】

です。
読んで字のごとく、長野県の木曽の大工さんが木曽の木を使って手刻みで建てる、木の家です。
クライアントの奥様が木曽出身ということで、この話が実現しました。

この家では、筋交いを一本も使いません。
昔ながらの日本の民家と全く同じ構造で、耐力壁は貫と土壁と竹小舞だけで構成されています。
あとは木組みでもたせます。
それでも、筋交いで固める家よりもずっと粘り強く、大地震の際にはこちらの方が安全です。
(↑なぜこうなるのか? については、また別の機会にご説明しますね)

昨日は雨が降ったり止んだりの天候だったのですが、前日に長野県を出発した10tトラック(←デカイ!)がなんと2台、積荷満載で大阪に到着し、荷降ろしから土台敷きまでを行いました。

最近は大工さんが構造材を一本一本刻んでいく手刻みではなく、工場でのプレカット(機械が自動で仕口や継手を刻んでくれるやりかた)が圧倒的多数を占めています。
おそらくその割合は98%を超えているでしょう。

そういう建物の場合と比較すると、今回の建物がどう違うのか?
それはこんな具合になります。

【1.構造材の刻みにかかる時間】
プレカットの場合・・・全て機械が行う。所要時間/約8~10時間
手刻みの場合 ・・・全て職人(大工)が行う。所用期間/約3~4ヶ月

【2.木材を現場に搬入してから建前完了(上棟)までの所用日数】
プレカットの場合・・・所要時間/約2日
手刻みの場合 ・・・所用時間/約7日

なぜそうなるのか?についてはここで説明すると長くなり、またうまくお伝えできないと考えるので、別の機会に改めます。
というのも、今回の現場は手刻みで民家型の伝統構法を新築し、きちんと竹小舞下地を編んで土壁をつける、というとても珍しいケースなので、建ててくれる大工さんに敬意を表して、現場で構造見学会を開催します。
ぜひ、実際に手で刻んでくれた大工さんの思いを、あなたにも直接聴いて頂きたいと思っています。

日程は目下大工さんと調整中ですが、10月下旬~11月中旬の日曜日になります。
決まり次第このブログでもお知らせしますが、

「そんなん、いつもブログチェックばかりしてられへんで。
ぜひ見たいので決まったらすぐにメールで知らせてくれたらいいのに。」

という方もいらっしゃるでしょう。
そういう方は、さとうまで、

件名 : 構造見学会 日程告知希望
本文 : お知らせをお送りするあなたのメールアドレス、お名前

を書いてメールを送ってください。

Q1 大工さんがどんな思いで構造材を刻んでいったのか?
Q2 どんな苦労があったのか?
Q3 なぜ、この昔ながらの木と土と竹で構成される建物が
金物で補強する建物より安全なの?
Q4 そして現在に至るまでに木曽と大阪でどんな準備を重ねてきたの?
Q5 こういう建物を作ろうと思ったら、いったいいくらかかるの?

というようなことについて、その時に現場で実際に建物を見ながらお話しする予定です。
どうぞお楽しみに。

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