月別アーカイブ: 2006年8月

手描きの味わい

関東へ来ています。

昨日、新宿センタービルの17階にある、ギャルリータイセイへ行って、
『大熊喜英(おおくまよしひで)の建築』
という展覧会を観てきました。
僕はこれまで大熊氏のことはほんど知りませんでしたが、滋賀県の友人・Mさんがこの展覧会のことをおしえてくれたので、ぜひ観たいと思い足を運びました。

大熊氏(1905~1984)は、日本の伝統的な民家の調査・研究に若いときから関わっていたそうで、民家のデザインを採り入れた近代的な和風住宅の設計を数多く手がけられ、その作風は一世を風靡したそうです。
(知りませんでした)

会場には、大熊氏の手による図面・スケッチなどが数多く展示されていました。
大熊氏が活躍されたのは今から数十年前ですから、もちろん全ての図面は手描きでした。

しかし大熊氏の図面は、手描きは手描きでも、定規を使わないフリーハンドの線だけで構成された図面なのです。
丁寧に描かれたそれらの線には、やはり深い味わいがあり、すっかり魅了されてしまいました。

今はうちの事務所でもコンピューターで図面を描いています。
しかし、
「手描きに戻そうかなぁ~」
と本気で考えてしまいました。

確かにコンピューターで図面を描く利点は大きいので、全ての図面を手描きに戻すつもりはありませんが、コンピューターで図面を描くことの弊害も実は大きいのです。

その弊害として一番大きいのは、スケール感覚が薄れることです。
寸法が一番重要な、建築家という職業にとってこれは致命的です。
正直なところ、僕のスケール感覚もかなり鈍ってきています。

ここで言うスケール感覚というのは、木材の大きさを(定規をあてずに)目で見ただけで、それが何ミリ(センチではありません)あるのか?ということがパッとわかる、という能力です。

こういう能力は、常に現場で木材に触れて仕事をしているか、または原寸(実物大)の図面を描いていると、長年かけて自然に身についてくる能力なのですが、コンピューターで図面を描いている限り、絶対にこういう能力は身につきません。

もう一つの弊害は、図面一枚一枚のありがたみや存在感が薄れることです。

手描きの図面は、一枚一枚にそれぞれ個性やクセがあるので、一目見ただけでも鮮明な画像となって記憶の中に残ります。
しかしコンピューターで描いた図面は、文字も線の太さも均一ですから、手描きの図面に比べるとどうも記憶に残りにくく、存在感も薄くなってしまいます。

僕が建築家として売っているものは、図面ではなくコミュニケーションやコンサルティングを含めたトータルのサービスなので、必ずしも図面に味わいを求めなくてもいいのでしょうが、やはり図面を受け取るクライアントの立場に立って考えてみれば、味わい深い図面を渡された方がきっとうれしいのだろうなぁ、と思うのです。

スタッフにはきっと反対されるでしょうが(笑)、これからは手描きの図面を増やしていこうと考えるようになりました。
まずは自分で描く図面から始めればいいことですから、そんなに難しい事ではありませんけどね。

Mさんのおかげで、いい機会に恵まれました。
どうもありがとうございました。

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トマコマありがとう、そして早実おめでとう!

いやぁ、一気に夏が終わった感じです。
ついに敗れてしまいました。
我らが駒大苫小牧。
(↑と言っても、別に僕の母校でも何でもありませんが)

それにしても、早実のエース・斉藤君、本当にすごかったですねぇ。
この2日間の死闘は、まさに高校野球史に残る名勝負だったと思います。



今日の試合はトマコマが負けてしまったので、うれし泣きはできませんでしたが、早実・斉藤君の最後の姿に感動してポロリときてしまいました。

斉藤君には絶対ドラフト1位指名で複数球団から声がかかることは間違いないのでしょうが、今後の彼の野球人生に、このところの連投が悪い影響を及ぼさなければいいが・・・とちょっと心配してしまいます。

駒大苫小牧ナイン、感動をありがとう。
そして早実ナイン、これまで努力してきてよかったね。
本当におめでとう。

トマコマがんばれ!

明日はいよいよ決勝戦です!

駒大苫小牧 VS 早実。
もちろん、高校野球です。



準々決勝は、息子を連れて甲子園へ応援に行きました。
4点差をひっくり返して、逆転勝ちしてくれた姿に感動し、
アルプススタンドでメチャメチャエキサイトしてました。

今となっては、駒大=常勝校ですが、北海道の学校が優勝するなんて、数年前まではダ~レも思っていなかったでしょう。
こうやって歴史がつくられていくんですね。

明日駒大苫小牧が優勝すれば、夏の甲子園大会史上73年ぶりの3連覇だそうです。
それを南北海道代表校が成し遂げる。
明日は絶対泣けそうです。

ここ数日は、試合を観るたび泣きそうになって鼻の奥が【ツーン】とすることがしばしば。
僕はプロ野球は観ませんが、高校野球は大好きです。
あの、「負けたらそこでおしまい」という状況に弱いのです。



がんばれ!トマコマ!



申し遅れましたが、僕は静岡産北海道育ちです。

なるほどなぁ・・・

昨日、京都へ行っていました。

以前勤めていた職場で一緒だった後輩から、

「リフォームをするのにあたって、お客さんにわかりやすいようにコンピューターでパースを描いて欲しいんですけど・・・。」

と頼まれたので、現場を観に行ったのです。

この後輩からの依頼でなければ断るところです(※)が、今回は引き受けました。
というのも今から数年前、彼は20代後半でお父さんの事業を突然引き継ぐことになり、不況の中、苦労して頑張っていたのを良く知っていたからです。

※うちではプレゼン用のパース作成業務のみを引き受けることはしません

一通り現場の状況を調べて、

クライアントからリフォームに際しての要望も聞き、

役所で基本的な事柄を調べて、

京都に行ったら必ず食べる塩ラーメン専門店にも立ち寄って(笑)、

さあ、これで用事も全て済んだし帰ろうか、と思ったら、
仏光寺(ぶっこうじ)の塀の脇に、こんなこと(↓)が書いてありました。

(画像をクリックして、ぜひ読んでみて下さい。
右半分の細かい文字の方は、お寺の行事予定ですから
読まなくてもいいですよ)

なるほど・・・まさにその通りです。

感謝の心を忘れずにがんばります。

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あなたはどちらが好きですか?
30年後に「そろそろ建て替えようか・・・」と言われる家、と
「200年前のおじいちゃんが建てたの」と2206年に言ってもらえる家
 

井戸

夏だからでしょうか?
最近、

「どうやったら、エネルギーを使わずに涼しく快適に過ごせるだろうか?」

ということばかり考えてしまいます。

そんな中、どうしても欲しくなってきたのが、【井戸】。
あのギッコギッコとやると、ドバーっと水が出てくるやつです。

まぁ別に手押しでなくてもいいのですが。
飲用に使う場合、今の井戸はほとんど電気式のポンプでくみ上げて、普通に蛇口から出るようにして使います。

でも、手押しポンプがあって、そこからは冷たくてきれいな水がたっぷり出てくる家ってすごく魅力的だと思いませんか?

昨年水道局で教えてもらったのですが、井戸には深井戸と浅井戸があるそうです。
浅井戸は深度10mくらいの井戸で、雨が降ったりすると水が濁るなど、周囲の環境の影響を受けやすいそうで、主に洗濯などの生活用水につかうそうです。
一方、深井戸は深度50m以上のものを指すそうで、こちらは雨が降ったりしても水が濁ったりすることはないし、河川の水が枯れたりした時でも深井戸の水は簡単に枯れたりしないそうです。
主に飲用としては深井戸が向いていると聞きました。

なぜ欲しいのか?

それは、
 1. 冷た~い水がいくらでもタダで使える
 2. とにかく、おいしい水が欲しい
という2つの理由からです。

以前、比良山(ひらさん)という滋賀県の山に友人と登って下山した時、登山口のふもとにある料亭では、門前に流れているせせらぎで、エビスビールをケースごと 「ドボン」 と比良山から湧き出る冷たい沢の水に浸して冷やしていました。

登山が終わってくたくたの状態でそれを見たとき、
「やばすぎる・・・。
 あんなにダイレクトで魅力的な看板が他にあるだろうか・・・?」
と強烈に脳裏に焼きつきました。

どうやら僕は水に惹かれてしまうようです。

今チラホラとサイト検索してみたところ、家庭用の井戸は100万円弱くらいで掘ることができるようです。
水をくみ上げて普通に使うだけではなく、井戸水の冷気を使って緩やかな冷房ができるようにすれば、100万円は決して高くないのでは?なんて考えてしまいます。

まぁ、そんなに大そうなシステムを考案しなくても、井戸水をたらいに満たして、そこにポチャンと両足を浸して
「冷メタ~イ!」
と言いながら、ボーっとするだけでもいいんですけどね(笑)。

先日調査を行った古民家の裏庭には、崖の中腹に200m横穴を掘って山から地下水を採り出している水場がありました。

そこで飲ませてもらった水はやっぱりとっても美味しくて、チョロチョロと、しかし絶え間なく流れてくる自然の恩恵に豊かさを感じました。

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水のチカラ

昨日の日経新聞の朝刊で、打ち水のことを採り上げた記事があった。

ビルの外壁に打ち水をすることで室内の気温を下げる取り組みや、
国会議事堂は1960年代まで氷で冷やした井戸水で冷房をしていた事実などを紹介していた。
(↑国会議事堂の話は初耳だったが、スゴイ!と感じた)

僕は数年前からやってみたいと考えていることがある。

住宅の屋根に噴霧器のようなものを取り付けておいて、集めておいた雨水を再利用して屋根面に打ち水をして冷却するという案だ。
真夏の屋根面(特に板金)は、焼き肉ができそうなほど熱くなる(僕は新米の頃、何度も現場でやけどした。笑)ので、あれを水で冷やせればかなり冷却効果があるだろうと思うのである。

きっとどこかですでに実践されている方はいると思うのだが、チャンスを待っているので、
「そのアイデア、いいやん! うちの家でやってみようかなぁ」
という方がおられたら、さとう(info@mokuzo-architect.jp)までご連絡を。

昨日の夕方、また息子と2人で六甲山に出かけていって、冷た~い沢の水に足を浸しながら、

「この冷たい水のエネルギーを使うことができれば、
 エアコンに頼らなくても冷房なんか簡単にできるのになぁ・・・
 ついでにビールも冷えそう♪」

と、ぼんやり考えていた。
でも熱エネルギーは運ぶのが難しいからね。

原油価格が高騰してガソリンの価格が上がっている。
この冬の灯油価格もまだまだ上がったままだろう。
その原因を今朝のテレビでエコノミストが解説していたが、向こう数年はこの状態が続くようだ。

建物で消費するエネルギーを抜本的に減らすシステムを考えないと・・・。
これが当面の僕の課題。
難しい・・・。

やはり自然はすごい、と畏敬の念を新たにした。

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傑作ができる機会

今日、新築の計画案を持って神戸市北区のクライアント(以下Sさん)のご自宅へ打合せに行ってきました。

Sさんに図面を描いてプレゼンテーションするのは今回が初めてでした。
(これまでに何度かSさんと会った際には、話を聞いたり現場を見ていただいたりというところで止まっていたのです)

今週僕はとにかくバタバタしていて、体調もあまり良くなくて、プランを練る時間も極々限られた時間だけしかとれませんでした。
しかし、Sさんご夫妻の要望を整理して頭に叩き込み、敷地の特性を活かしたプランを作ることに集中すると、自分としては過去最高の出来と断言できるほどのいいプランができました。

そして今日、プレゼンテーションを行ったところ・・・。
何と!
初めての提案図面でプラン(基本的な間取りや建物の形)が決まってしまったのです。
僕にとってこんなことは初めてでした。
Sさんご夫妻も今回ご提案したプランを大変気に入ってくださった様子で、

「テレビの位置とか、食器棚の位置とか、細かいところは少し調整していかないといけないけど、基本的にはこのままのプランでOK。
この家は楽しそう♪」

と言ってくださいました。
(Sさん、どうもありがとうございました)

帰りがけに車を運転しながら、

「どうして今回のSさんの家のプランは、こんなに早く決まったのだろう・・・?」

と考えてみました。
通常、基本プランが決定するまでには、2~3ヶ月で延べ5~6回の打合せを要します。
(↑僕の場合は、です。全ての建築家が必ずしもそうだとは思いません)
すると、いくつかSさん特有の条件が重なったことがその理由ではないか?と思えてきました。

それは、

 ○ 夫婦間で、家づくりに対する自分達の考えを、よく話し合っていて、
   各自(夫・妻)のこだわりや希望を、お互いがきちんと認識し合っている
 ○ 上記のような話し合いを重ねてきたことにより、自分達の家に必要なもの
   と不要なものをはっきり認識していて、家の機能や間取り決定に対する
   優先順位が非常に明確になっている
 ○ 夫・妻2人とも家づくりをとても楽しんでいる

というものです。

おそらくこの家は、僕にとっての最高傑作の一つになると思います。
まだ始まったばかりですが、今からとっても楽しみです。

コルビュジェが彼の代表作・ロンシャン教会の図面を4日で描き上げたというのは建築設計業界では有名な話ですが、確かに傑作というものは考え抜いて時間をかけまくって作ればいつか出来る、というものでもないなぁとも思いました。
(そうやって出来る場合も、確かにあると思います)

でも、優れた建築(←図面ではありません。実際の建物です)というのは時間と手間と情熱をかけなければ決して出来ません。
(お金をかければいいものが出来る、などということは絶対にありません)
Sさんの家はまだまだ始まったばかりですので、これからどれだけ煮詰めて味わい深いものに育てていくか、が大事です。

Sさん、貴重な機会を与えてくださってどうもありがとうございました。
これからもどうぞよろしくお願いいたします。

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