月別アーカイブ: 2006年6月

木の香りがする家

先日、うちの事務所にお招きしたお客さんがこう言いました。
「さとうさんの事務所に入った途端、すごく木の香りがしました」
僕はそうでもないと思うんですが、初めて来た方がそうおっしゃるのですから、きっとそうなんでしょう。

うちの事務所は普通のマンションの中にありますので、木造でも何でもないのです。
ただ、事務机脇のカウンター(長さ4m×巾60cm)と、打ち合わせ室(和室)の座卓は杉の板で作っています。
他にあるのはサンプル用の木材だけですから、きっとこれらの板が木の香りを発散しているんでしょう。

その話を聴いていて思い出しましたが、うちで設計させてもらったお宅の中はとても木の香りにあふれています。
使う樹種によってその香は異なりますが、僕が個人的に好きなのは杉の香りです。

うちで設計する家では、構造材(柱とか梁)を全て露出させるので、もちろん構造材からも木の香りは出ているのですが、どうもその家の香りを最終的に強く左右するのは、床材(フローリング)の樹種によるようです。
うちで設計させてもらった六甲山麓の家(Wさん宅)や小花の家(Iさん宅)では、どちらも吉野杉のムクの床板を張っているのですが、2軒とも同じことを奥様から言われてビックリしました。

「さとうさん、うちの子供とか私がよそのお宅に遊びに行くとね、『○○さんのご家族が来たら木の香りがする』って言われるんですよ(笑)。
住んでいる当の本人達は、家の中に入っても木の香りがするかどうかなんて、慣れてしまって全然感じていないのにね。」

初めてWさんの奥様からこの話を伺った時は、
「いや、それはちょっと大げさな言い方なんちゃうかなぁ。半ば冗談やろ。」
と思ったのですが、さすがに2回しかも別の方から同じことを伺うと、
「あっ、それってホンマなんや!」
と確信に変わりました。

杉の床板は柔らかいので住み始めるとすぐ傷だらけになりますが、香りがとてもさわやかだし、木目もはっきりしていて嫌味がないので僕は大好きです。
僕も自分の家を建てる時は、きっと杉の床板を張るのだろうと思います。

しかしいつになることやら・・・。

【当ブログサポートのお願い】
人気ブログランキングに登録しています。
今回の記事が面白かったと感じてくださったら、こちらをクリックしてみてください
クリックするだけであなたの一票が僕のブログを応援してくれて、
ブログランキングでの順位が上がります。
するとより多くの方がこのブログの情報を目にする機会が増えて、
より多くの方に、より有益な情報をご提供できるというわけです。

 

(株)木造建築東風のサイトはこちら
世界に、300年先も美しい風景を

見学会を開催しました

昨日(6/11)、今年の3月に竣工した川西市内のリフォームの現場・小花(おばな)の家の見学会を行いました。

今回はすでにクライアントのご家族が入居されていることもあって、完全予約制とし、現場の住所なども申込者以外には公開しませんでした。
なんて高飛車な!とお叱りを受けるかもしれませんが、構わないと思って貫き通しました。

結果、来場してくださった方は3組と決して多くはありませんでしたが、1時間に1組だけしか受け容れなかったので、クライアントであるIさんご夫妻と来場者と私とで、ゆっくりと個別にいろんなお話をすることができて、とても良かったと感じました。

たくさんの方に来ていただくのが目的であれば、インターネットで現場の地図を公開し、
「誰でもいつでもどうぞ来て下さい!」
とそこら中に情報をばら撒けば、きっとよりたくさんの方が来場して下さったことでしょう。

でも、それではこちらとしてもきちんとした対応もできないし、せっかく来ていただいた方に失礼で、ご自宅を公開してくださったクライアントご夫妻やご家族にもご迷惑がかかってしまうと考え、完全予約制・匿名不可という条件をつけさせていただきました。

そのおかげで、来てくださったみなさんはとても満足していただけたようですし、Iさんご夫妻も多少は楽しんでいただけたのではないか(それでもご心労の方が大きかったことだろうとお察ししますが・・・)と感じました。

うちで開催する見学会は、今後もできるだけこういう地道なスタイルで行っていきたいと考えています。
来てくださったSさん、Uさん、Tさん、どうもありがとうございました。
そして何よりもご自宅を快く公開してくださったIさん、本当にどうもありがとうございました。

その見学会の合間に見せて頂いたのですが、Iさんのご主人が工事中に撮影された写真の中に、とてもいい写真があったのでここでご紹介します。

ここに写っているのはもちろんIさんの2人のお子様ですが、一生懸命磨いているのは、お父さん(=ご主人)が近所の解体現場から譲り受けて運んできた赤松の古材丸太です。
現在はこの小花の家のリビングのど真ん中に、屋根の荷重を支える大黒柱として象徴的に立っています。

その柱を夏の暑い日に幼い兄弟が一生懸命磨いていたとは、僕も昨日まで知りませんでしたが、ご家族のみなさんにとってはとてもいい思い出になったのではないかと感じて、僕もうれしくなりました。

古民家/石場建て伝統構法 を 高気密・高断熱で暮らしやすく
(株)木造建築 東風のサイトはこちら↓

蝉しぐれ

このところ、図面描きに追われています(笑)。
そんなわけでなかなか気持ちに余裕が無くてブログを更新できないのですが、手短に書いてみます。

ちょっと前のことですが、久しぶりにビデオを借りてきて『蝉しぐれ』を観ました。
原作は、以前観た『たそがれ清兵衛』と同じ故・藤沢周平です。
僕はいままでこの作家の小説を本では読んだことが無いので、近いうちに一冊読んでみたいと感じました。
江戸期の山形県を舞台にした時代劇です。

山形県なのに台詞に方言がない・・・という違和感はありましたが、ストーリーは単純でわかりやすく、勧善懲悪そしてすれ違う恋愛感情が描かれたものです。
人と人とのつながり、想い、運命に翻弄される人生、といったものが情感豊かに描かれていました。
台詞にならない間合いや、美しい日本の風景(建築も含めて)を切り取った映像美がなかなか良かったです。
言葉に表現できない思い(想い)というものは誰しも持っているものですが、一つの作品を通じてそこをうまく表現している構成力と想像力には感服しました。

学生の時には専ら小説しか読まなかった僕ですが、最近はビジネス関連の書籍を読む機会の方がすっかり増えてしまったので、この夏は以前から読みたいと思っていた小説を読んで心を少し柔らかくしたいと思っています。