「浮造り」と書いて、「うづくり」と読みます。
上の写真は、現在改修工事中の築110年の古民家ですが、先日現場で材料を見ていてふと思いついたので、今回はちょっと材料のお話をしたいと思います。
浮造りというのは加工の方法のことです。
ちょっと下の写真をクリックして、板の表面をよーく見てください。
よ~く、よ~く見ましたか?
ホンマですか?(笑)
じゃあ、下の2点に気付きましたか?
○ その1:板の黒い部分が筋状に盛り上がり、白い部分が凹んでいる
○ その2:白い部分にスクラッチ状の傷が無数についている
気がつかなかったアナタ!
はい、もう一度写真をクリックしましょう。(笑)
(↑でも、普通は気付かないと思いますので、落ち込まないで下さい)
これは意図的に加工したからこうなっているのです。
どうやってこういう板ができるのか?をご説明しますね。
浮造り加工を施すのは、ほとんどの場合、杉板です。
杉板でも特に、焼杉(やきすぎ)といって板の表面をバーナーで焼いて炭化させたものに使うケースが多いです。
みなさんご存知の通り、木には年輪がありますよね?
一年に1本、同心円状に作られていく年輪のことで、切り株の木口(こぐち)を見るとあるやつです。
年輪とは、夏目と冬目とが1セットになって構成されるものを差します。
下の写真を見てください。
(写真をクリックすると、別ウィンドウで拡大表示できます)
○ 冬目・・・冬に引き締められる目(同心円状の黒い筋の部分)
○ 夏目・・・夏に育つ、冬目と冬目の間の肉(?)の部分
夏場には、温暖な気候×豊かな日射のもとで木はドンドン成長(太くなる)します。
ところが冬場にはあまり気温が上がらないため、木は夏目のようにあまり成長せず、引き締まった黒い筋(冬目)ができます。
これを毎年繰り返して年輪が形成されていく、というわけです。
なんだか小難しい表現になってしまいましたが、イッタイ何が言いたいのか?というと、こういうこと(↓)です。
【 木の夏目の部分はやわらかく、冬目の部分は固い 】
ちょっと言い方を変えてみましょうか。
【 木の夏目の部分は削り取られやすく、冬目の部分は削り取られにくい 】
焼杉をうづくり加工する順序はこう(↓)です。
1. まず、杉板の表面にバーナーをあてて、表面を炭化させる
2. 炭化したら、表面を特別な道具でこすって、
やわらかい夏目の部分を削り取る(下の写真参照)
(こうすることで、夏目の部分が凹み、スクラッチ状の傷がつく)
←うづくり加工するための道具
←こうやって杉板にあてて
←ひたすらこすってやわらかい夏目を削り取る
※注:場合によっては1の炭化をしないケース(座敷の天井板や建具の腰板などに使う場合)もありますが、最近ではそういうケースは稀なので、今回は焼杉に限ってご説明します。
うづくりの目的は何か?
それは、
【 杉の木目をより立体的に目立たせること 】
です。
うづくり加工をすると、カンナで削って仕上げただけの板よりも表面に凹凸ができますから、それによって微妙な影が発生します。
それで立体的に木目が浮き上がって見える、というわけです。
こういう微妙な加工には、やわらかい杉の木がうってつけです。
固いケヤキやナラなどではうづくり加工はできません。
また、このうづくり加工、
「サンドペーパーでも同じことができるんちゃうか?」
と思うでしょ?
でも、それができないんですよ。
というのも、サンドペーパーでは刃が鋭すぎて、夏目はもちろん冬目まで削り取ってしまうので凹凸ができないんです。
先人の美意識の高さと繊細さには毎回脱帽、ですね。
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