月別アーカイブ: 2005年11月

【民家】を通じて日本の歴史が見えるようになる

住まいを4寸で

最近読んだ本の紹介です。
『住まいを四寸角で考える』 安藤邦廣 著

本のタイトルを一見すると、著者による設計技術論的な内容か?とイメージしがちですが、そのような内容はごく一部に過ぎません。
むしろ、これからの地球環境を「民家」という視点から紐解いて考える緒となる重要な知恵を授けてくれる本だと、僕は強く感じました。

この本には、日本の豊かな森林資源に根ざしたこれまでの住文化の歴史の変遷が、俯瞰した視点からまとめられていて、とても深い示唆に富んでいます。
そのことを著者はわかりやすいエピソードで紹介して下さっていますので、ここで少しご紹介します。

○ 古来(~15世紀)戦災が多かった西日本では森林資源が枯渇したため、土壁の民家や焼き物の器に代表される土の文化が発展したのに対し、
東日本では戦災が比較的少なかったため、豊かな森林資源に支えられて板壁の民家と木地の塗り器が一般的であったという話。

○ 実は食物として、樹木は優れた建築用材として縄文以来長年にわたって用いられてきた栗の木が、明治以降の鉄道施設によって枕木として大量に伐採されたために日本の住文化の表舞台から姿を消してしまった話など。

こうした歴史的な俯瞰に基づいて、著者は

「都市部への民家の移築再生を安易に進めてはいけない」

という警鐘も鳴らしています。
それはこれまでに長年かけて培われてきた、地域固有の文化の消滅を助長すると同時に、地方経済のこれからの永続的な発展にも決して寄与しないという観点からです。

僕もこの本に触れてから、民家の変遷を日本の歴史と並列して捉えられるようになり、おかげで民家再生という行為を今までより一段高い視点から俯瞰できるようになった気がします。
オススメの一冊です。

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金沢21世紀美術館

金沢紀行その2です。

成巽閣へ行った後、金沢21世紀美術館へ行きました。

当初の目的は建物をみることで、建物自体はこんな感じでした。
(僕が美術館へ着いたときには、すでにあたりは暗くなりかけ&次の約束までの時間が差し迫っていたので、建物の写真はほとんど撮れませんでした)

この建物は、SANAA/妹島和代+西沢立衛という建築家ユニットの設計による、最先端の現代建築です。
彼らの設計した建物は今まで実物を(本などの写真でしか)見たことがなかったので、
「実物はどうやねん」
と、非常に楽しみにしていました。

楽しみにしていた建築は、なんというか雑誌に載っている写真のイメージ通りでした。
見た目のデザインがどうこう、というよりも、空間やコンセプトの構築に彼らの独自性が遺憾なく発揮されている、魅力的な建物だなぁ、というのが僕の感想です。
いろいろ触発された部分はありますが、自分なりにはまだ消化できていませんね。
これからじっくり自分と向き合って考えていこうと思いました。

ただ一点。
僕は建物を観るときに、必ずトイレを注目して見るようにしている(←ある種の職業病)のですが、この美術館に関しては、トイレはすごくフツーでした。
ちょっと残念です。

さてこの美術館では、建物よりも展示作品に感じるところが大でした。
正直、展示作品に対する予備知識は0(ゼロ)だったので、より一層楽しめたのかもしれません。

入館料は高かった(¥1200-)のですが、様々な現代美術作家(多くは若手)の多様な表現に触れて、自分の頭もいくぶん柔らかくしてもらったような気がします。
今回の作品は、絵画などの平面的な作品はほとんどなくて、個々の展示空間に合わせて作家が自分の作品を製作していったのでは?と感じるような立体作品がほとんどで、とてもいい時間を過ごせました。


こんなことをツラツラと書いていても、きっとこれを読んで下さっているあなたには、全く何がなんだかよくわからん、ということなんでしょうね。
すみません。
全くふがいない限りです。

ただ、この美術館は一見の価値があります。
金沢に行かれたら、ぜひ訪れてみてください。
新しい美術館のカタチ(建物・展示作品・手法などすべてひっくるめて)を感じることができると思います。

今回金沢へ一緒に行った僕の友人達も、みな一様に満足していましたので、客観的に見ても一定以上の評価は得られていると思います。

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昔の人が建築に込めた思い~金沢・成巽閣にて

この週末、金沢へ行ってきました。

 

NPO法人・日本民家再生リサイクル協会主催の、民家フォーラム2005に参加するためです。

いろいろと感じることが多かったので何回かに分けて金沢でのことをご報告するつもりですが、とりあえず今日は、金沢に着いてまず一番に訪れた成巽閣(せいそんかく)という建物を見学した際に感じたことについて書いてみます。

 

 

成巽閣は1863年(江戸時代末期)に加賀藩・前田家13代当主が、彼の母12代奥方のために建てた奥方御殿です。

成巽閣では、現地の学芸員の方に解説をお願いしたおかげで、じっくり堪能できました。

(吉竹さん、どうもありがとうございました)

 

 

まず、奥方(女性)のために建てたため、建物の随所に施されているデザインが女性好みの柔らかなものでした。

例えば、お城の謁見の間などで権威を象徴する際には、松や虎など力強く豪華なものがモチーフとされるのに対し、成巽閣の襖・障子の腰板などに描かれていたのは、タンポポやすみれ、ちょうちょ、小鳥などの柔らかいイメージのものという具合です。

 

そして部屋の名前も、鮎の廊下、貝の廊下、亀の間、蝶の間などの名前がつけられており、建築主への温かな配慮をもって設計に取り組んだ、当時のデザイナーの粋な計らいを感じ取ることができました。

 

 

おそらく、今回の見学にあたってこういった説明を学芸員の吉竹さんがして下さらなかったら、建物の本当の価値や建築に携わった現場のみなさんの思い入れを、ここまで感じ取ることはできなかっただろうと思います。

(誤解のないように申し上げておくと、もちろん僕もプロの木造建築家ですから、どれだけ技巧を凝らして建物の造作がなされているのか?という技術的なことは読み取ることができます)

 

 

 

もしも説明を受けずに見学した場合、

「なんかすごく贅沢にお金をかけた建物だなぁ。つくった職人さんはきっと大変だっただろうなぁ。」

というレベルで見学を終えてしまったことでしょう。

 

 

つまり。

今回僕が何を言いたいか?というと、こういう(↓)ことです。

 

 

 

建物の価値というのは、使われている材料や、施されている細工の技術的な価値だけで決まるものではなく、そこに込めた製作者(建築主・施工者・設計者)の思い入れがとても大切だ、ということです。

 

一言で言うと、それは(建物の)コンセプトであり、(建物の)プログラムとも呼ばれるものです。

このコンセプト(またはプログラム)に基づいて設計がなされ、建物に課せられた目的に添ったデザイン、材料の選定などが行われていきます。

そして、建築主・施工者・設計者の3者が、まさに三位一体となって初めて、素晴らしいものができあがります。

 

僕はこれこそが建築の醍醐味だと思います。

一人だけの力でできることは、はっきり言ってたかが知れています。

やはりみんなで力を合わせて1つのものをつくり上げようと知恵を絞って考えて努力するからこそ、人の心を打つものができるのではないでしょうか。

 

 

 

あなたはどう思いますか?

もし何か感じることなどがありましたら、ぜひコメントを書いてみてください。

 

 

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木造でつくっておけばよかったのに・・・

今朝の日経新聞に載っていたんですが、東京銀座にある歌舞伎専門劇場【歌舞伎座】の建て替えを決めたそうです。

詳しくはこちら
   → 
松竹、歌舞伎座を建て替え(日経新聞)

この建物は1950年末に建てられたというから、現在たったの築後55年。
設計者は近代日本建築界の巨匠・吉田五十八(いそや)氏。
2002年に登録文化財指定を受けたばかり。

木造でしっかりしたものを建てておけば、最低あと200年くらいは使えただろうに・・・。
実はこんな話、これからワンサカ出てきますよ。

なぜなら、戦後日本の高度成長期に建てられた、多くの(当時は)最新鋭だった建築のほとんどは鉄筋コンクリート造や鉄骨造で、その寿命は50年前後だからです。

 

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風力発電機一機で、いったいどのくらいの電力がまかなえるのか?

『風力発電で、いったいどのくらいの電力がまかなえるのか?』

あなたはご存知ですか?

以前にも紹介したことのある、京都府の丹後半島にある太鼓山(たいこやま)風力発電所の写真です。
上の写真をクリックして拡大写真を表示してもらうとわかりますが、風車の足元に人間が写っています。
この風車の柱の高さは30m、羽根一本あたりの長さは25mだそうです。

この風車が回ると、

「ブルン ブルン ぶるん ぶるん ブルン ブルン・・・」

という音がします。

さて、あなたはコレ一機でいったいどのくらいの電力がまかなえると思いますか?
ちょっと雲をつかむような話になってもイヤなので、普通の家庭何世帯分がまかなえるか?という基準で考えてみてください。

(↓下に正解を書いてあります。)

いらっしゃいませ!

ここまでスクロールしてくれたってことは、あなたもやっぱり、正解知りたいですよね?(笑)

じゃあお教えします。
(って、別にそんな勿体つけるようなデータでもありませんが・・・)

コレ一機で、約400世帯分の電気がまかなえるそうです。

つまり、もし大地震が起きて、山奥にある400世帯の集落が孤立してしまったとしても(←なにもそんなに苦しい状況作らなくても・・・って?)、

条件その1) 集落の中にこの風車が1機あって
条件その2) 集落内の全戸がオール電化住宅で (←チョットありえない)
条件その3) 村民が風車の音を気にしない♪

という条件が整えば、電気面に関しては何年でも何不自由なく生活が営める、という実力です。

風力発電の実力、結構すごいと思いませんか?

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ここの会社サイコー!

『風に吹かれて豆腐屋ジョニー』 
『男前豆腐』
『喧嘩上等やっこ野郎』


(↑)ご存知の方も多いと思いますが、これ、ぜ~んぶ豆腐の商品名です。
僕もテレビで見て(というのも、関西では京都にしか売っていないらしい)こういうオモシロイ商品があるということは知っていましたが、今朝、はじめてこの会社のホームページを見ました。



これが、メチャメチャ痛快で気持ちよくて、オモロイんですよ!



ぜひ見てください。
(↑)元気出ます。

最近(ここ2~3年特に)、自分が涙もろくなってきたように思います。

とにかく、結構簡単に泣いてしまうのです。
まぁ、ストレス解消になってよいのですが(笑)。
近年の泣きネタをピックアップしてみると、

 ○ 甲子園の決勝戦(北海道代表・駒大苫小牧の優勝)
 ○ 昨シーズンのイチローのメジャーリーグ記録達成

などのスポーツネタはまだ良いのですが、ほんのちょっとした映画やドラマ、テレビのドキュメンタリー番組など、

「オイオイ・・・」

と突っ込まれてしまいそうなほど結構簡単に泣いてしまいます。
ちょっと恥ずかしいのですが、昨日もドラマ「1リットルの涙」で沢尻エリカの演技に泣かされてしまいました。
テレビを観ながらすすり泣いていると、うちのカミサンが横から

「また泣いてるんか~?」

とシケタ事を、のうのうと言ってきます。
最初はちょっと恥ずかしさもあったのですが、最近は開きなおっておおっぴらに泣いています。
といっても声をあげて泣くほどではありませんが。

しかし僕は、自分が小学校五年生(10歳)の時におばあさんが亡くなった時を最後に、30歳くらいまで、なぜか悲しい時にもほとんど涙が出ませんでした。
原因はなぜかわかりませんが、何か自己暗示のようなものにかかっていたような気もします。
最近とみに涙もろくなってきたのはその反動でしょうか・・・?

某TV番組で1年位前に
「血液型がO型の人は一番涙もろい」
と言っていましたが、それって結構当っているのかも?
ちなみに僕はもちろんO型です。

それともただ単に、自分がオッサンと呼ばれる年齢になってきて、羞恥心という名のブレーキがゆるくなったんでしょうか(笑)。



まぁ、泣くのはとても気持ちがいいので、これからもドンドン泣いていくつもりです。
今回はあまり意味の無い、木造建築家のヒトリゴトでした。

生の古民家が見られる貴重なイベントのご案内です

上の写真は、御所の町家の写真です。
(写真をクリックすると、別ウィンドウで拡大表示できます)

今週末11/13(日)に、奈良県・御所(ごせ)の一般の町家を公開するイベント

「霜月祭(そうげつさい)」

が、行われます。

御所は昔からの古いまちなみが観光地化されずに息づいている静かな町です。

霜月祭は数年前から毎年開催されているイベントです。
年を追うごとに公開される町家が増えていて、今年は御所市街に建つ19軒が玄関先程度まで公開されます。
普段生活に使っているそのままの姿ですので、伝建地区のきれいな姿を期待されるとつらいところですが、
逆に観光ズレしていない、素朴な風情が楽しめると思います。

特に、本町通の赤塚邸は江戸中期ごろの大和棟で、初公開。
その他、大和絣(今は途絶えた綿織物)を商いしていた家では、絣の着物や端切れが
見られます。

当日は、町の各所でミニコンサートが開かれたり、縁日には出店も並ぶようです。
ホームページなどはないのですが、こちら(↓)のページからパンフレットをPDFファイルでダウンロードしていただけます。

御所まち「霜月祭(そうげつさい)」のパンフレット(491KB)

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【ウヅクリ】って何?

「浮造り」と書いて、「うづくり」と読みます。
上の写真は、現在改修工事中の築110年の古民家ですが、先日現場で材料を見ていてふと思いついたので、今回はちょっと材料のお話をしたいと思います。

浮造りというのは加工の方法のことです。
ちょっと下の写真をクリックして、板の表面をよーく見てください。

よ~く、よ~く見ましたか?

ホンマですか?(笑)
じゃあ、下の2点に気付きましたか?

○ その1:板の黒い部分が筋状に盛り上がり、白い部分が凹んでいる
○ その2:白い部分にスクラッチ状の傷が無数についている

気がつかなかったアナタ!
はい、もう一度写真をクリックしましょう。(笑)
(↑でも、普通は気付かないと思いますので、落ち込まないで下さい)

これは意図的に加工したからこうなっているのです。
どうやってこういう板ができるのか?をご説明しますね。

浮造り加工を施すのは、ほとんどの場合、杉板です。
杉板でも特に、焼杉(やきすぎ)といって板の表面をバーナーで焼いて炭化させたものに使うケースが多いです。

みなさんご存知の通り、木には年輪がありますよね?
一年に1本、同心円状に作られていく年輪のことで、切り株の木口(こぐち)を見るとあるやつです。
年輪とは、夏目と冬目とが1セットになって構成されるものを差します。
下の写真を見てください。
(写真をクリックすると、別ウィンドウで拡大表示できます)

○ 冬目・・・冬に引き締められる目(同心円状の黒い筋の部分)
○ 夏目・・・夏に育つ、冬目と冬目の間の肉(?)の部分

夏場には、温暖な気候×豊かな日射のもとで木はドンドン成長(太くなる)します。
ところが冬場にはあまり気温が上がらないため、木は夏目のようにあまり成長せず、引き締まった黒い筋(冬目)ができます。
これを毎年繰り返して年輪が形成されていく、というわけです。

なんだか小難しい表現になってしまいましたが、イッタイ何が言いたいのか?というと、こういうこと(↓)です。

【 木の夏目の部分はやわらかく、冬目の部分は固い 】

ちょっと言い方を変えてみましょうか。

【 木の夏目の部分は削り取られやすく、冬目の部分は削り取られにくい 】

焼杉をうづくり加工する順序はこう(↓)です。

1. まず、杉板の表面にバーナーをあてて、表面を炭化させる
2. 炭化したら、表面を特別な道具でこすって、
やわらかい夏目の部分を削り取る(下の写真参照)
(こうすることで、夏目の部分が凹み、スクラッチ状の傷がつく)

←うづくり加工するための道具

←こうやって杉板にあてて

←ひたすらこすってやわらかい夏目を削り取る

※注:場合によっては1の炭化をしないケース(座敷の天井板や建具の腰板などに使う場合)もありますが、最近ではそういうケースは稀なので、今回は焼杉に限ってご説明します。

うづくりの目的は何か?
それは、

【 杉の木目をより立体的に目立たせること 】

です。
うづくり加工をすると、カンナで削って仕上げただけの板よりも表面に凹凸ができますから、それによって微妙な影が発生します。
それで立体的に木目が浮き上がって見える、というわけです。

こういう微妙な加工には、やわらかい杉の木がうってつけです。
固いケヤキやナラなどではうづくり加工はできません。

また、このうづくり加工、

「サンドペーパーでも同じことができるんちゃうか?」

と思うでしょ?
でも、それができないんですよ。
というのも、サンドペーパーでは刃が鋭すぎて、夏目はもちろん冬目まで削り取ってしまうので凹凸ができないんです。

先人の美意識の高さと繊細さには毎回脱帽、ですね。

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