兵庫県龍野(たつの)市で、築約100年の古民家再生のための工事が始まり、昨日現場へ様子を見に行ってきました。
台風が来て大荒れの天気になるのでは?と、朝のうちは気をもみながら車を走らせて行ったのですが、昼過ぎに現場へ着いたころには、もう雨も止んで、晴れ間がのぞいていました。
昨日は、別棟の蔵を解体・撤去したり、不必要な天井・床組み部分を解体・撤去する工事が行われているところでした。
自分の仕事(←ボランティアを除く)として携わる現場としては、久々の古民家ですが、やはりなかなかおもしろいものです。
特に解体作業中は、これまでの家の工事の歴史が一挙に見られるので、大変興味深いです。
一般の方(←建築業関係者以外)は、なかなかこういった現場に立ち会う機会がないと思うので、少し写真を交えてご紹介したいと思います。
(ちなみに、それぞれの写真は小さく表示されていますが、写真をクリックすると別ウィンドウで大きく表示されます。
詳しく見てみたい時にはお試しください。)
最初に、全ての建具を外して、部屋をがらんどうの状態にします。
畳ももちろん上げて、保管場所に移しておきます。
そして壁の上塗り部分をこそげ落としたり、ベニヤ張りの壁・天井なども撤去して、木軸の骨組(←柱・梁など)と土塗り壁だけの状態にします。
次に床をめくっていきます。
古民家ではよくあることですが、床組材である根太(ねだ)とか大引(おおびき)、床束(ゆかづか)など、床下の構造材は人目に触れないため、解体された古材が使われていることが多いです。
上の写真の中でグニャリと曲がっている太い材料(←大引)も、以前は別の場所で使われていた痕跡がありました。
なぜかというと、昔は木材が非常に高価だったため、新しい木材を買ってくるとお金がかかって仕方なかったからです。
近所で家の解体などがあったりすると、材料をもらってきて保管しておき、それを自分の家の建て直しの際に使ったりしていたようです。
人目に触れる柱や梁などには、きれいな新材を使っても、見えない部分の木材には見栄えはよくないが耐久性に問題のない古材を使うというのが一般的でした。
今回のお宅でもご多分に漏れず、床組材はほとんどが解体材を転用したものでした。
解体工事に立ち会っていると、こういう当時の社会情勢や家の歴史を目の当たりにすることができて、とてもおもしろいのです。
この柱は、床下の部分で柱を継いでいたことがわかりました。
これを
【 根継ぎ (ねつぎ) 】
と言います。
この家が建てられたあと、何度か近くを流れる揖保川(いぼがわ)の水害による床下浸水があったようです。
そのせいかどうかはわかりませんが、何らかの事情により、この柱の根元が腐ってしまったので、当時の大工さんが苦労して根継ぎしたのでしょう。
ここにもまた歴史を垣間見ることができます。
解体した木材や廃材を、大工さんが前庭で一枚一枚ていねいに整理してくれていました。
こういう心遣いはとってもうれしいものですね。
今は産業廃棄物処理の際にきちんと分別をしないといけないので、分別はどこでもやっていることなのですが、廃材をきれいに部材別に分けて整理していることは珍しいです。
『 気は心 』
と言いますが、本当にそうだと思います。
もちろん、僕からも大工さんにきちんとお礼を言って、うれしく感じたこともちゃんと伝えておきました。
僕はこういう小さなコミュニケーションを大切にしていきたいと思っています。
今回の現場では敷地が広いためにこういった整理作業もやりやすかったのですが、なかなかここまできれいにやってくださる工務店は少ないと思います。
本当に感心しました。
大工さん、これからもどうぞよろしくお願いします。
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