お客様の幸せのために」カテゴリーアーカイブ

伝統構法は先端技術

昨日、大阪市内の綿業会館にて、2009年度のきんき民家塾第1回講義が開催されました。

主催はNPO法人・日本民家再生協会 近畿地区運営委員会。
今回の講義のテーマは 『伝統構法の耐震性』 というもので、建築の専門家向けの講座としてもかなり高度な内容でした。

講師は京都大学名誉教授で、現在は立命館大学教授の鈴木祥之先生。


このテーマに関する関心はかなり高いようで、定員30名+α だったところに約50名の参加者が集まりました。
(受講できなかったみなさん、ごめんなさい)

きんき民家塾200906_2








上の写真は、開講の挨拶をしている小原塾長と参加者のみなさん。



きんき民家塾200906_1

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

↑ 今回の講師を引き受けてくださった、鈴木祥之先生。



印象に残った内容を簡単にまとめると以下の通りです。

○ 大きな地震で倒壊した木造建造物を詳細に調べていくと、倒壊原因は築造年数
  (=古さ)に関係ないことがわかる。築造年数よりもむしろ、不適切なな増改築、
  メンテナンスを適切に行っていないこと、シロアリ被害・木部の腐朽などによる
  建物の構造的な劣化が主な原因
○ 柔らかい建物には変形能力の大きな耐震要素で耐震補強することが重要。
  土壁で構成された柔らかい伝統構法に、安易に筋交いなどの耐震補強要素を付け
  加えることはかえって危険になるケースもある
○ 極めて大きな地震時に柱脚が滑ることによって上部建物への地震力は軽減される。
  しかし、柱脚が実際どのくらい滑るか?などについてはまだ研究途上で今後の課題である

というような木造柔構造に関する最前線の貴重なお話を聴くことができました。



最後に、今回の講義に際して鈴木先生が配布してくださった参考資料の中の一文に大変感銘を受けたので、抜粋して以下にご紹介します。



『伝統構法は、「伝統」という表現に古いイメージがあるが、決してそうではなく、大工棟梁の永年の技や知恵が盛り込まれた伝統技法は、今後の科学的な光のもとで先端技術になり得ること、また木造建築物の長寿命化、良質化を図るための技術として、伝統構法は有力な技術であると確信している。』
      -「伝統構法木造建築物の耐震性」(著・鈴木祥之氏)より抜粋ー



鈴木先生、ならびに参加してくださった皆様、どうもありがとうございました。



【見学会開催のお知らせ】
2007年に竣工した伝統構法の家で、2年間住んでみた感想を聞く見学会を
8/2(日)に大阪府四條畷市で開催します。詳しくはこちら

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世界に、300年先も美しい風景を

400年前の柱

昨日(5/31)は大阪府豊中市の服部緑地の中にある日本民家集落博物館で、子供民家塾というイベントを開催したので、参加してきました。

これから将来を担っていく子供たちに、古い民家や建物への関心を持ってもらおうという趣旨で、日本民家再生協会が企画したものです。

小学生の子供たちとその親ら、総勢21名が集まって、おくどさん(←関西ではかまどのことをこう呼びます)といろりに火を入れて、ご飯と豚汁をつくってみんなで食べました。

子供民家塾


 


 


 


 


 


 


 


かまどに火を入れているときの様子。
子供たちは興味津々で見入っていました。
帽子をかぶっているおじさんは、今回指導してくださった江頭(えがしら)さんです。



日本民家集落博物館の中にある、能勢の民家をお借りして今回のイベントを開催したのですが、日本民家集落博物館の中でも一番古いというこの能勢の民家が建てられたのは今から400年前=江戸時代初期のことだそうです。

この建物は普通の農家の建物だったので、ごくごく質素な材料が使われた、飾り気の無い普通の家です。

でも築400年と聞いて改めて材料を見てみると、なるほど柱はほとんど栗の木です。

400年前の柱























仕上も大鋸で挽いただけと思われる粗野な仕上で、大きさもそんなに太くない4寸弱の柱でしたが、まだまだこれからも充分耐えうる力強い表情でした。

さすが栗ですね。

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ちょっと期待

今朝の日経の記事より。

農水省が木材の利用拡大促進のために新法を検討しているようです。
国産材を使うなど環境配慮の住宅に税制面で優遇措置が適用されるなど。

木材利用増へ新法、農水省検討 国産材住宅の税優遇 

どんな形で進むのでしょうか。
ちょっと期待しています。

うめぼし

建築とは全く関係の無い話題ですが、木曜日にまた事務所でご飯を炊いておにぎりを作りました。

いつもガスコンロ+土鍋で炊くのですが、前回よりも少し上手に炊けました。



前回作った時は中身の具なしで作りましたが、今回は梅干を入れてみようと思い、梅干を求めてスーパーへ。

僕は紀州・南高梅の薄味の梅干が好きなのですが(←塩辛いのが苦手・・・)、購入時にパックをひっくり返して添加物なんかをよく見てみると、僕が好きな薄味の梅干にはどれもナンダカヨクワカラナイ添加物が入っています。

そうやって選んでいくと、結局たどり着いた梅干は紀州の薄味タイプではなく、
【原材料:梅、食塩、紫蘇】
という、いかにも塩辛そうな梅干・・・。

しかも、値段は他のものの倍ほど高い。



そのパックを手に持ちながらまざまざと僕の脳裏に浮かんできたのは、子供のときにいつもうちの母親が作っていた梅干の工程映像。

う~ん、これはきっと辛そう・・・と思いつつ、でも食べてみよう!と思って購入。



食べてみると、うちの母が作ったものよりは数段塩分控えめでしたが、最近食べ慣れた梅干よりは倍ほど辛い。

やはり保存するためには、このくらいの塩分が必要なのかなぁ?と思いつつ、じゃあ和歌山の今の梅干も、昔はもっと辛かったんだろうか?とか新たな疑問が沸いてきました。

どなたかご存知ありませんか?

建具

今、世田谷のリフォーム物件の木製建具のデザインを考えています。

木製建具とは、障子・襖や板戸などのことです。



木製建具のデザインというのは、実はヒジョ~に繊細で難しくて、

○ 材料     ・・・木材の樹種/木目の出方と色・艶
○ 框の大きさ ・・・巾と厚み
○ 組子(くみこ)・・・本数/プロポーションと配置と厚み

をどのように設定するか?によって室内の雰囲気ががらっと変わってしまう、デザイン上非常に重要なファクターです。

品と深みの中に、ほんのちょっとだけの華やかさを持たせる程度がいいのですが、そのさじ加減がとても難しい・・・。



華やかにするだけだと薄っぺらくて飽きがくる。
どっしりと落ち着きがあるだけだと野暮ったくなります。

ぼくがいつもデザインの時に考えるのはそのどちらだけではなくて、全体的には非常に落ち着いたデザインなのに、どこかはかなさを感じさせるような緊張感を持つ姿。
これを演出するための最後の要素が木割り(部材寸法のバランス)と樹種です。

これで全てが変わってしまいます。



建具というのは出来上がってしまうと何気ないもののようですが、とても気を使う繊細な仕事で、製作してくれる職人さんの気遣いによっても完成度が大きく変わってきます。

同時にまた、設計者の力量とセンスが如実に現れてしまうのも、この建具です。
だからこの建具のデザインを考える際には、また僕は原寸図を描きます。

どうしても原寸で考えないと最後の雰囲気が把握できないからです。



なんだか抽象的で面白くない話になってしまいましたね(笑)。
にも関わらず、最後まで読んでくださってありがとうございます。



蛇足ですが。
いつもね、記事を書きながら(または書く前に)思うんですよ。

このブログを毎日見に来て下さっているたくさんの方々のために、何か役に立つ情報やちょっと面白いネタを提供したい。

昨日は何かそんなネタがあったかな?
って思い起こしながら書いているんです。

だから、
「こんなことについて知りたいので記事を書いてみて欲しい」
っていうようなリクエストなどがありましたら、遠慮なくさとうまで送ってみてくださいね。
その方がみなさんのためになりますから。

お待ちしております。

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シロアリ対策

昨日、うちの事務所に阪神ターマイトラボの水谷さんが来て下さいました。

西宮と京都で計画している新築物件のシロアリ対策について、設計段階でのコンサルティングをお願いしたので来所してくれました。



僕もごく常識的なシロアリの知識はありますが、やはりその道のプロは違いますね。
物件の詳細な図面を見ながら相談して、いろいろとアドバイスを頂きました。



水谷さんの営業に差し障るといけないので詳しく書くことは控えますが、

○ シロアリの生態
○ シロアリの分布(ヤマトシロアリ・イエシロアリ・アメリカカンザイシロアリ)
○ それぞれの種別の生息分布状況・生態を踏まえた対策

について、非常に具体的で有効なアドバイスを頂くことができました。



とにかくシロアリ対策として重要なのは、

○ 定期的な点検ができる構造にしておくこと
○ シロアリを遠ざける仕組みづくり
○ 被害を受けたときにもそれに気付ける仕組みづくり

ということだそうです。



これからも定期的にお世話になることになりそうですが、大変いいお話を聞かせて頂くことができました。

水谷さん、どうもありがとうございました。



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東京・世田谷でのリフォーム

この週末は東京に行っていました。

土曜日の午後に日本民家再生リサイクル協会の総会があったのと、その後世田谷区で設計中のリフォーム物件の打合せがあったためです。

この世田谷のクライアントは僕が札幌に住んでいた高校の時の親友です。

中古・木造のリフォームという僕の得意分野とは言え、現場が東京だったので最初は軽く相談に乗る程度かな、と思っていたのが、結局気心の知れた安心感からか、最後まで設計を担当することになりました。

でも、これが実現しているのはインターネットと携帯電話のおかげですね。
本当に情報交換のためには便利な時代です。



3月から打合せを重ねてきたため、間取りはほぼ固まっていて、今回はより細かい空間のディテールや建具・電気など設備面の打ち合わせまで、かなり盛りだくさんでした。

今回の打ち合わせに際しては、当方スタッフが内観のイメージパースを描いてくれたので、それを持って行って提示しながら話をしました。

やはり3Dを見せながら話をすると、わかりやすいし話が早い!
設計イメージの共有が一気に進んだ感じです。

今回製作したイメージパースのうち、2枚をご紹介します。
(どの画像もクリックすると拡大表示できます)


世田谷1


 


 


 


 


 



上の画像はリビングの内観です。

黒く見える梁は、長年の屋根荷重を受けて沈下してしまっている2階の床の補強のために、今回新しく入れる予定の古材丸太です。


世田谷2











この画像はダイニングキッチンです。

左手に見えるのがシステムキッチン、右手に見える格子戸は造りつけの食器棚です。
この食器棚は中にしまった食器がよく見えるように、ガラス入りの格子戸にする予定です。



以前、工務店に勤務していたときは東京の現場を担当したことは珍しくありませんでしたが、独立してから手がける物件としては初めてです。

現場が遠いと大変なこともありますが、クライアントが喜んでくれる顔や満足感が高まっていく様子を見ていると、引き受けて良かったなぁと思います。



この物件は設計期間が極端に短いので、スタッフにも手伝ってもらって一気に進めなくてはなりません。

ここ数週間はパソコンの前に座る時間を長くしないと・・・。

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埋木

昨日ご報告したリフォーム現場の続きです。

リフォームで真壁納まり(※)とする場合に、よく問題となるのが構造材の穴です。

【真壁納まりとは?】
柱や梁などの構造材を壁の中に埋め込んで隠してしまわずに、すべて化粧材として見せる、和室のような納め方です。
真壁の反対は大壁という納め方ですが、昨今の住宅はおよそ9割以上(←数字は僕の勘)が大壁納まりだと思います。
構造材と壁面との位置関係によって、真壁/大壁が決まります。
参考までに、東風で設計する建物は基本的に真壁納まりです



リフォームの際に壁などを解体・撤去していくと、土壁の下地のための貫(ぬき)穴とか、鴨居が取り付いていた目地の穴(ほぞ穴)などが柱に残ります。

今回のK邸でも、大工の森元さんが、そういった柱に残る穴を一つ一つ丁寧に埋木(うめき)してくれました。


埋木


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


写真中、青丸で囲んだ部分が埋木したところ



この埋木のやり方にも実はいろいろと手法があります。

どんな手法を採択するかは目的によって使い分けるのですが、今回のようにリフォーム後の傷穴を処理する際には、上の写真のように傷穴の形をそのままにして同じ形の木材をあてがって埋木を行います。



他の手法もまたご紹介する機会があると思いますが、埋木もなかなか知恵と経験やセンスが必要で、実は奥が深いんですよ。

今回のクライアントであるKさんも、大工さんがこの埋木を丁寧にしてくださったおかげで、柱の傷がすっかり目立たなくなり、きれいに仕上がったことをとても喜んでおられました。

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竣工しました

4月から取り掛かっていた、兵庫県佐用町K邸リビングのリフォーム(築40年・在来工法)が完了しました。

今日、朝から担当スタッフと一緒に現場に確認に行ってきました。



もともとこの部屋は2間続きの和室だったのですが、東面のとても明るい部屋だったので、
「ダイニングルームをリフォームしたい」
と申し出て下さったKさんに
「この和室をLDKにリフォームしませんか?」
と、ご提案して始まったプランでした。



リフォームする前の部屋は、よくあるこんな感じ(↓)の和室でした。
(ちょっとアングルが悪いので、もともとの部屋の全景がわかりにくく、申訳ありません)

佐用町0521_3

 

 

 

 

 

 

 

 

 



奥の突き当たりには、床の間もあります。
(出書院もありました)

この床の間を潰してしまうのはすこし気が引けたのですが、こんないい場所はもっと家族のために積極的に使うべきだ!と思って説明し、Kさんも納得してくださいました。



で、出来上がった新しい部屋が下の写真です。
(画像をクリックすると、拡大表示できます)

 

佐用町0521_1

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


奥に見える壁の向こう側に、移設したキッチンがあります。
(この写真では見えませんが)

以前と比べて格段に明るく風通しの良い部屋になって、Kさんご夫妻はとても喜んでくださっていました。
その喜んで下さっている様子を見て、僕達はとても喜び、安心しました。

やはりこの仕事をしていると、クライアントが喜んで下さる姿を見る瞬間が最高ですね。
住宅の仕事をやっていて良かったなぁ・・・としみじみ思う時です。



ここまでうまく工事ができたのも、丁寧に施工をしてくださった森元建築さんの尽力のおかげです。

森元さん、どうもありがとうございました。

 

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イメージパース

昨日、東風の事務所にお客様がいらっしゃいました。
大阪府の北部で新築住宅を計画されているKさんです。

Kさんのお宅はとても素晴らしい景観が楽しめる敷地なので、郊外型の住宅では珍しいのですが、2階リビング型のプランをご提案しました。
( ↑ 都市部では採光・通風などの事情から、2階リビング型のプランにすることがよくありますよね)

今回のご提案に際して、当方のスタッフが描いたイメージパースをご紹介します。
(画像をクリックすると、拡大表示できます。ぜひご覧下さい)

 

能勢の家

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

能勢の家

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


これを見てくれたKさんの娘さんは
「うわぁ~木がいっぱい!」
と言ってくれました。

直感的にうちの建物の特徴を捉えてくれて、うれしかったですね。



僕には絵の才能がないので、恥ずかしながらこんな絵は描けません。
( ↑ 才能ではなく、実は努力が足りない・・・反省)

いつもスタッフが描く絵には恐れ入るのと同時に、表現力不足のダメ所長を支えてくれて感謝しております。

どうもありがとう。



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