僕は頭が煮詰まったり、精神的にしんどくなったりした時には、早朝に散歩へ出かけます。
本当は毎日散歩に出かけるべきなのですが、なかなか精神的にその余裕も無いことが多く、ここ最近は毎日は行っていません。
でも、このところいろいろとストレスが溜まったり頭の中がごちゃごちゃになったりしている影響で、昨日・今日は2日続けて早朝の散歩に行っています(苦笑)。
今朝もいろいろと頭の中の考えの整理をして、自分自身の視点を変えるために散歩に行きました。
でも、精神的に煮詰まっている時は、頭の切り替えなんてなかなかうまくはできないんですよね。
そうやって半ば悶々としながらいつものお決まりの散歩コース(近所の池の周回コース)を歩いていると、いきなり
「おはようございます!」
とすれ違ったおじさんから大きな声で挨拶をされました。
( ↑ この方、年齢的にはすっかりおじいさんでしたが、めちゃめちゃシャキシャキした人でした)
もちろん僕もすかさず
「おはようございます」
と返しましたが、そのおじさんはすれ違う全ての人に対して、同じように
「おはようございます」
「おはようございます」
と挨拶をされていました。
その姿を見て、とても気持ちが良かったです。
以前にもこのようなことはあったし、自分からおはようございます、と全ての人に言いたい気持ちは以前から持っているのですが、小心者の僕にはこのおじさんのようなことはなかなか実践できません(恥)。
でも、今日はこのおじさんの一言の挨拶にとっても救われた気がします。
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僕の教科書
こと建築のことに関して言うと、僕は最近の雑誌とかは全くといっていいほど読みません。
確かに最新の雑誌を読むことで得られる情報もあると思うのですが、本質的に重要で深い事柄が書かれている雑誌というのは、今発行されている雑誌の中では皆無だと思っていますし、実際手にとって読んでみても、
「おっ、これはすごい!」
と感じた雑誌はありません。
僕が
「これは必死になって読まなくては・・・」
と思う本や雑誌というのは、なぜかほとんどが絶版になっているものばかりです。
なぜだろう・・・と考えるとなぜだか本当によくわからないのですが、とんでもなく貴重で素晴らしく深いことを書いているものはアマゾンにも売っていなくて、図書館にもなかなか置いてないという本がほとんどです。
(でも、僕の母校の関西大学図書館に行くと、欲しい本が結構見つかるので、とても重宝しています。
で、借りてみると僕以外に誰も借りていなかったりするので、ちょっと寂しかったりもするのですが・・・)
そんな中、久しぶりに押入の奥から引っ張り出してきた雑誌がこれ(↓)です。
月刊 『木』
発刊 1965.01~1976.03
発行者 篠田銘木店
この雑誌には、すごい人たちのインタビューや寄稿がたくさん掲載されています。
堀口捨己、吉田五十八、北村伝兵衛、大熊喜英、伊藤平左衛門、西岡常一、小原二郎、(すべて敬称略)などなど。
しかもこの雑誌がすごいのは、銘木屋さんが自費出版したと思われる点です。
僕は大変恵まれたことに、ある人からこの雑誌の全巻を数年前に譲り受けました。
まだ読んでいないものの方が多いのですが、この雑誌の内容はすごいです。
木造建築の専門家であれば、垂涎ものです。
(でも、一般の方にとってはちんぷんかんぷんだと思いますが。苦笑)
他にも1980年代に季刊で発行された『和風建築』(全24巻)とか、もう国会図書館に行かないと観られないんじゃないか?というような本が、実はうちの事務所にはあるんですよ。
これらの雑誌は、これから一生かけて使っていく、僕の教科書です。
こういう骨太な雑誌、もう出てこないのかなぁ・・・。
僕が雑誌を読まない理由は、昨今店頭に並ぶ雑誌の内容は、情報の劣化が早すぎるものが多いからなんです。
建築の材料や工法などは、2-3年使ってみたってその耐久性はわからないものが多いですから、新製品や新しい工法に簡単に手を出すわけには行きませんしね。
結局信頼の置ける材料・工法は昔からすでにあるものだったりするわけです。
そんな最新の雑誌を読まない弊害として、僕よりもお客さんの方が最新情報に詳しい、なんていう状況に出くわすこともたまにあります(苦笑)。
お客さんに最新情報を教わることも多いんですが、そういうときには素直に
「すみません、僕知らないんですよ」
と言って教えてもらっています。
というよりも、あまり新しい情報に振り回されたくないから雑誌を読まないようにしている、という側面もあるんですけどね。
僕が新製品に飛びついたりするようになって振り回されて、お客さんに
「これ良さそうですよ。使ってみませんか?」
なんて簡単にお薦めすると、その製品が原因になってお客さんに迷惑をかけてしまったら目も当てられませんからね。
というわけで、みなさまどうぞお手柔らかにお願いいたします。 m (_ _) m
管理建築士の法定講習を受けてきました
昨日、一級建築士事務所の管理建築士向けの法定講習を受けてきました。
朝から晩までびっちり丸一日。
結構疲れます・・・。
建築士法では、一定の条件に該当する建築士(※)は定められた期間(3年)ごとに法定講習を受講することが、平成20年に義務づけられました。
※・・・一級建築士・二級建築士・木造建築士・構造設計一級建築士・設備設計一級建築士が該当
ほとんどの内容は、建築基準法および関連法令の再確認なのですが、実はそれ以外にも最近のエンドユーザーを対象とした統計結果なども紹介されており、なかなか興味深いデータがありましたのでご紹介します。
下の表がそのデータです。
タイトル : 建築設計者選定時の重視事項
対象 : 建設業を除く東証一部上場企業を主な不動産会社、生命保険会社、
学校・医療・社会福祉法人
出典 : 日経アーキテクチュア 2007年4月9日号
薄いグレーは複数の設計候補者をリストアップする時点で重視する点
濃いグレーは最終的に設計者と契約する時点で重視する点です
(画像をクリックすると拡大表示できます)
このグラフから読み取れるのは、最終的に設計者を誰にするか?という判断を下す際に重視しているのは、まずコスト削減・管理能力であるという点。
次点がほぼ横並びで
○ 過去の実績
○ 企画・コンサルティング能力
○ 発注者の要望を受け入れる姿勢
と続いています。
上記の次に重視するものとして
● アフターサービス
● トラブルへの対応力、補償能力
● デザイン能力
を期待する声が強いようです。
今回の対象は個人ではないので、住宅設計時における統計データではありませんが、これはなかなか興味深いデータだと思います。
あなたの実感と比べてどうでしょうか?
京都の保育園改修工事 完成しました
連休明けから着工していた、京都市内の保育園さんでの改修工事がほぼ完成しました。
写真で見えている手前の部屋の床が、もともとは15cmほど高かったのですが、それを解体して隣の部屋とほぼ同じ高さになるようにするのが目的でした。
今回は杉の無垢材のフローリングを張り、床下に電気式の床暖房を設置しています。
奥に見えている部屋は、実は遊戯室の一部を建具で囲っただけの保育室です。
平常時は保育室として使っていますが、発表会などの保育園行事として遊戯室を使うときは建具を全て取り払ってしまえば元通り遊戯室として使えるようにしました。
この写真を撮ったのは今週火曜日の朝なのですが、もうすでに子供たちが走り回っていることでしょう。
適正価格
先日来ご相談を受けている方に、【建築家に依頼することでクライアントの方が得られるメリット】についてお話しする機会がありました。
その時に後述の資料を作成してお渡ししたのですが、
「これって他の皆さんにとっても知っておいてもらった方がいいのでは?」
と思われる内容であると感じたので、記事にまとめてみようと思います。
建築家に設計を依頼すると、設計報酬の分が高くつくので経費のムダだと考えられる方は多いでしょう。
「この人のこのデザインがどうしても欲しいから」
という理由で建築家に依頼される方もいらっしゃると思いますが、もう少し客観的に見て建築家に依頼するメリットがないと、建築家に設計だけを依頼するのに数百万円の費用は高すぎる、と僕も思います。
建築家に設計を依頼するメリットや建築家の役割については、東風のサイトにまとめてあります。
→ 建築家の役割~どうして建築家が必要なの?
詳しくは上記ページををご覧頂くとして、その中の
「同じ条件で数社の価格比較ができる」
という点について、実例をご紹介したいと思います。
まずはこちらをご覧下さい。
(別ウィンドウでPDFファイルが開きます)
上記の表は、東風で過去に設計・監理業務を請け負った物件において、実際に見積もりに参加して下さった工務店さんや建設会社さんが出して下さった見積書の価格です。
この見積をご提出いただいた際には、30~60ページに及ぶ設計図書(=図面)を各社にお渡しした上で、全ての条件(すなわち価格の根拠)を全く同じになるようにしてから見積書を提出して頂いています。
そうやって出して頂いた見積書であっても、これだけ価格に開きがあるのです。
なお、ここで誤解して頂きたくないのですが、東風では価格を少しでも安くするためにこのような相見積りを取っているわけではありません。
東風では価格だけで判断して頂かないように、各建設会社や工務店さんに対して、社風や力を入れていることも見積提出時に合わせて自由にプレゼンテーションしてもらうための時間をとっています。
そうすることで、価格を含めた会社の姿勢や個性も判断材料としてクライアントに提供しています。
2社以上から見積りが出てくると、
「この価格は他社と比べて妥当なのかどうか?」
という点もクリアになり、価格に対する納得感も増します。
そういったことは、工務店や建設会社さんに建物を依頼した際には実現することができないことです。
建築家に設計監理業務を依頼する上でのメリットの一つとして、とても大きなものだと思います。
間伐後の林
またまた更新の間が開いてしまいました・・・。
先週の金曜日(5/21)、また静岡へ行きました。
今回は乾燥中の材木の雨養生をする作業が目的だったのですが、それはあまりにも地道で写真の写り映えがしない作業なのでここでは割愛・・・。
で、その道中、2007年の秋に間伐した林に入って様子を見てきました。
上の写真は、2007年の11月に間伐した、約90年生の杉・桧混合林の現在の様子です。
間伐を開始した時の記事(2007.11.06)
間伐が完了したときの記事(2007.11.10)
間伐する前は林道もなくて、下草も今ほどたくさん生えていなかったのですが、間伐したことで林が明るくなり、下草も充分育つような環境に変わってきました。
撮影した当日の天気がとても良かったせいもありますが、人工林とは言え、明るく緑豊かな美しい林に変わってきました。
上の写真は、2007年に伐採した、この林の中で一番大きかった木の切り株です。
この年の24番目に伐採したことから、24番という番号がついていますが、根元の直径は70cmほどもあり、節のほとんど無い素直な木だったので、今春竣工した京都市N邸の板材として、様々なところ(※)に使われています。
(※・・・玄関式台、下足箱天板、ダイニングカウンター、リビングボードなどなど)
この木を製材したときの様子(2008.08)はブログでもご紹介しましたが、伐採の時にクライアントのN様も立ち会って下さった、とても思い出深い木です。
「もう根は朽ちて見る影も無いかな」
と今回現場へ行くまでは思っていたのですが、実際に行って見るとまだまだしっかりと残っていて、ちょっと嬉しく感じました。
あなたはどちらが好きですか?
30年後に「そろそろ建て替えようか・・・」と言われる家と
「200年前のおじいちゃんが建てたの」と2210年に言ってもらえる家
京都市内の保育園でリフォーム中
京都市内の保育園さんで、先週からリフォーム工事が始まっています。
上の写真は、既存床組みの解体工事中の様子です。
今回は元々あった床の段差を無くすため、既存の床組みを一旦解体した上で、新たに床暖房と杉の床板を張りなおすという工事を行っています。
主に1~2歳の小さな子供たちが過ごす保育室なので、園長先生のご希望もあって柔らかい杉のフローリングを使っています。
無垢材に床暖房を組み合わせると、反ってしまって使い物にならないとよく言われますが、それも程度によるもので一概にダメだとは言い切れません。
当方では、予測される状況(床板の反り・多少のスキマができること)などについてあらかじめクライアントの皆様にお話した上で、ご理解を頂いた場合には床暖房対応ではない商品であっても、組み合わせて使うことがよくあります。
一番大切なのは、素材に対する理解度と、ユーザー/サプライヤー間のお互いのコミュニケーションです。
木造でも遮音できます
連休の最中に着工したリフォーム工事が、先週末に無事完成しました。
工期は2週間でしたが、1階床のバリアフリー化工事とともに、2階の1部屋を遮音して外部からの音を遮断する工事を行いました。
遮音工事はディテールが命なので、実際に完成して入居してもらうまで効果の程が心配だったのですが、クライアントの奥様によると効果はしっかり出たようで、一安心です。
今回のご依頼では、耳が遠くなってきたおじいさんが視聴する際のテレビの音が大きくて就寝時に気になる、ということが遮音工事の目的でした。
最近、木造住宅の遮音工事の依頼を受けることが多くなってきたのですが、一般に
「木造住宅では遮音できない」
とか
「遮音シートを入れれば大丈夫」
というような誤認識が多いようです。
確かに木造で遮音を行うのは構造にも関ってくるので非常に難しいのですが、決して不可能ではありません。
遮音工事は理屈は簡単なのですが、現場での判断が難しいため、当方でも方法を簡単にはお教えすることは控えています。
安易に真似されると、かなり高い確率で失敗するからです。
遮音工事をお考えの方は、実績のある専門家の方に依頼されることをお薦めします。
チタンには見えません
上の写真は先月末に訪れた、浅草・浅草寺の宝蔵門です。
この門の屋根、思いっきり本瓦葺きのように見えますが、実はチタンで作られているのだそうです。
僕もこの日一緒に参拝した方から教えてもらうまで僕も知らなかったのですが、確かにこちらのページに書かれているとおり、チタンのようです。
『チタンは酸化物が非常に安定で侵されにくく、表面が酸化物の皮膜によって保護されるため空気中では、白金(プラチナ)や金とほぼ同等の強い耐蝕性を持つ。』(『』内はwikipediaより転記)
という性質が評価されて、近年屋根材として使われる事例をよく見られるようになりました。
酸性雨の影響で、銅板の耐久性が以前に比べて下がっていますので、社寺のように耐久性の高さが強く求められる現場では重宝するのでしょうね。
価格が高いのが難点ですが、瓦よりもずっと軽いので耐震上有利になります。
新月材 乾燥中
もう2週間も前のことですが。
日光へ行った帰りに静岡へ寄ってきました。
昨秋製材した木材のボリュームや状態を確認するためです。
(製材したときの記事はこちら→通柱と天井板)
現在は製材した杉山製材所さんで預って頂いています。
(杉山さん、いつもありがとうございます)
上の写真がその一部ですが、全部でこの約3倍の量があります。
これから整理するのは大変そう・・・。
これらの木は2008年の晩秋に伐採したもので、樹齢110~130年の杉と桧です。
とってもいい木で、今から使うのが楽しみです。
桧は乾燥が早いのでもうそろそろ使えそうですが、杉の構造材は来秋(2011)あたりまで乾燥させるつもりです。
その一部をご紹介しますね。
上の写真は桧の通し柱と大黒柱です。
通し柱は節の無いきれいなものには背割りという鋸目を入れて、大きな割れが走らないように処理しています。
この写真だとなんだかそんなに大きくは見えませんが、この通し柱の太さはだいたいどれも6寸角(18cm×18cm)です。
大黒柱の太さは8寸5分角(26.5cm×26.5cm)あります。
上の写真は、大黒柱をリフトで持ち上げてもらって柱の面を見たところです。
どの木もほとんど節が無くて、四方上小節~無地の大黒柱になりそうです。
中央付近の一部が濡れているような色をしていますが、これは割れ止め材を塗布しているためです。
仕上ったらこれはきれいになくなります。
これは鉋できっちり仕上げて、50年くらい経ったらなかなかいい味が出てくるでしょうね。
その頃になったら僕は生きているかどうかわかりませんが(笑)、今から楽しみです。
どんな方が使ってくださるんでしょうか。
(株)木造建築東風のサイトはこちら
世界に、300年先も美しい風景を