新月伐採×伝統構法型住宅 京都市N邸プロジェクト」カテゴリーアーカイブ

杉板の撥水・防汚

杉板塗装

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

年末に 現場でクライアントのN様が、室内の壁面に張る予定の杉板にご自身でオイルを塗られました。

どちらか気に入った方を塗ってもらうつもりで、当日は2種類の材料を用意しておきました。



一つは写真右側の桐油(きりゆ)。
これはこれまでにも、うちの現場ではよく使っているものです。

もう一つは写真左側のキヌカという商品。
昨年末にメーカーからお知らせをもらって初めて使ってみた材料ですが、これなかなかスグレモノです。

米糠から精製した油脂だそうで、何よりも早く乾くというのがとてもいいです。

桐油は価格も安くて撥水効果は高いのですが、乾燥に約1週間かかってしまうのが難点。

その点、このキヌカは2-4時間程度で触っても問題ない程度にまで乾燥し、1日あれば完全乾燥に至るとのこと。
しかも塗ってもほとんど表面の質感が変わらず、塗ったか塗らないかよくわからないほど控えめなのがいいです。



結局、今回は洗面・脱衣室の壁面に張る板への塗布材だったため、撥水効果が高いと思われる桐油に亜麻仁油を混ぜたオイルを塗って拭き取った仕上となりましたが、今後、現場でこのキヌカの出番が増えそうです。

塗布にも特殊な道具や難しい技術は必要ないので、どなたでも塗れると思いますよ。
無垢材の質感を損なわずに防汚・撥水処理をしたい方にはお薦めの塗料です。




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貫伏せ

京都市N邸の現場では、年末から土壁の下地処理工程である
【貫伏せ(ぬきぶせ)】に取り掛かっています。

さすがに現場はまだ動いていなくて、初出は明日(1/5)からなのですが、
年末の貫伏せ作業の様子をご紹介します。

貫伏せ0

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


↑このような(貫が露出している)状態のままでは、この上から土を塗り重ねても
 
貫のところで壁が割れてしまいます。
 
その割れを防ぐための下地処理が【貫伏せ】です。

 

貫伏せ1

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


↑まず貫の上に、フノリを混ぜた漆喰を塗りつけます。
 わかりやすく言うと、これは接着剤の代わりです。

 

貫伏せ2

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


↑ のり漆喰の上から中塗り土を塗りかけます。

 

貫伏せ3

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




↑中塗り土を塗った上から、割れ止めのために寒冷紗(かんれいしゃ)という
 白い布をあてて土の中に塗りこめます

 

貫伏せ4

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




↑これで貫伏せが完了です。
 
(色が濃いところが貫伏せを施したところ)



この貫伏せ工程は、まだ2階の半分くらいしか完了していませんが、年始は6日から左官屋さんが入って、引き続きこの貫伏せ作業をしていく予定です。



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むくり天井が張れました

むくり天井2

 

 

 

 

 

 

 

 

 


京都市N邸玄関の天井板が張れました。

 

杉の白太(しらた)小幅板を使い、板と板との間には極細の底目地(そこめじ)をとって仕上げています。
節のない板だけを使っているので、木目がおとなしく、すっとした感じに仕上がりました。
先日ご紹介したように、ゆる~くむくりをつけた天井です。

 

当初は照明器具として小さなダウンライトをつけようかと考えていましたが、この木目をきれいに見せるには、壁面にブラケット型照明器具を設けるのが一番だということになり、クライアントのNさんご夫妻とも相談して、この写真のような位置に照明器具を設置することになりました。
(写真撮影時は工事用の仮設電球を点けています)

 

これから造りつけ家具(下足箱)が設置され、壁が仕上げられていきます。
出来上がりが楽しみです。



さて。

みなさま、本年も大変お世話になりました。
いつもこのブログを覗きに来て下さって、どうもありがとうございます。

 

あなたが読んで下さっているからこそ、僕もこのブログを書き続けていられます。
心より感謝しております。
どうぞよいお年をお迎えください。



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木取り

先週末、京都市N邸で各所カウンター用材の木取りをしました。

木取りとは、板などを見て
○ どこからどこまでを使うのか(長さや巾など)
○ どの向きで使うのか(木表/木裏、反り/むくり勝手)
などを決めて、墨付けをすることです。

 

リビングカウンター

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

上の写真は長さ3m、巾約50cmの杉の一枚板です。

この板は、リビングにテレビを置く棚の天板や底板として使うことになりました。



ダイニングカウンター

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


上の写真は、対面式キッチンに取り付ける、ダイニングカウンター用の板です。

椅子を置いているような向きで使うのですが、仕上ると椅子の反対側に I 型キッチンが設置されます。

この板も杉の木の1枚板で、巾は50cmありますが、写真で言うと右側の白太の部分を落として、巾約45cmにしてから使うことになりました。

下足箱カウンター

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

上の板は下足箱の天板を兼ねた玄関飾り棚の地板として使うことになりました。
この木も巾は50cmほどあるのですが、両側の白太の部分を切り落として赤身の部分だけを使います。



勘の鋭い方はもうお気づきでしょうが、実はこれらの木、全て1本の木から製材した共木(ともぎ)です。

この木を伐採する時には、建築主のN様ご夫妻がわざわさ静岡まで見に来てくださり、N様の目の前で伐採しました。

今から2年前、2007/11/06のことです。



この木はこの年に伐採した木の中では一番大きな木で、伐採を開始してから24番目に伐った木です。

この家の各所の主な幅広板はほとんどこの木から採ったものですが、市場で木を買うとなかなかこういったつくり方はできません。

原木を山で買って行う家づくりの特権です。



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主役は建物ではない

今週でいよいよ2009年も終わりですね。
うちの現場は29日まで仕事をしておしまいです。



先週後半から、京都市N邸の現場では玄関の造作工事に取り掛かっています。

この玄関は微妙なバランスを決定するのにいろいろとかなり悩んだのですが、ようやくデザインが決まりました。



当初、この家の玄関はゆるい直線勾配(2寸勾配)をつけた板張りの天井にする予定でした。

しかしこの現場を担当している東風スタッフが、
「玄関の天井を起(むく)らせてみたらおもしろいんじゃないか?」
と言い出して、それならぜひやってみようということになり、原寸型板を作ったり、現場で実際に木を曲げてみたりして、ああでもない、こうでもないと試行錯誤しながら現場のみんなで決めました。

型板を基に、大工のI さんが起こしてくれた天井下地が下の写真です。

 

r天井

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

上の写真で見ると、本当に微妙なのでよくわからないかもしれませんが、白い矢印の方向に少しだけ起らせています。
(拡大表示すると、なんとなくわかります)

現場で見ても、パッと見ただけでは気付かないかもしれないような、やさしいムクリです

ここには、おとなしい木目の杉の白太小幅板を長手に張って仕上げます。



建築雑誌などを賑わせている建物の写真では、こういうところでいろんな樹種の材料を使ったり、変化に富むようなデザインを施して建築が目立ってしまうような事例をよく見かけるのですが、東風で作るときには極力建物が目立たないように目立たないように、ということを心がけてつくります。

でも、よ~く見ると、細やかな気配りがしてあって落ち着きがある。
なぜそう感じるのかわからないけれど、これといって何と言うことは無い建物なのに、凛とした品がある。

そういう建物に仕上るように、ということを考えてつくってあります。



それはなぜかというと、建物というのは主役であってはいけない。
あくまでもそこに住む人や家人が飾るものなどが主役となるように、それを後ろからじんわりと引き立てる役目を担うのが建物の役目である、と考えるからです。

料理で言うと、お皿みたいな役目ですね。



またそういう控えめな雰囲気をもつ佇まいの建物でないと、自己主張が強すぎて、鼻について飽きられてしまいます。

つくられた当初は良かったけれど、後年になるにつれて建物の格も落ちるし、家人の趣味も疑われるようになるような建物では残念ですよね。



だから、むくりも微妙でいいんです。
材料もおとなしい、控えめなものがいいんです。



人が住み始めて、家の中でいろんなものを飾り始めて、ようやく建物も活き活きとしてくる。

東風ではそんな建物をつくっています。




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外壁下塗り

外壁1223

 

 

 

 

 

 

 

 

 


京都市N邸では、外壁の下塗りを行いました。

外部を仕上げてくると、なんだか一気に建物の表情が変わります。



1階の外壁には、杉の赤身部分だけを使った羽目板張りで仕上げています。

杉の赤身は色も揃ってきれいなんですが、そういった美的要因だけでわざわざ赤身にするのではなく、水に強く腐りにくいという理由で、赤身部分だけを使っています。

よく、木製のお弁当箱(曲げわっぱ)が秋田杉の赤身で作ってあったり、水を汲むひしゃくの丸い部分を杉の赤身の薄い板で作りますし、茶室の水屋の腰板などにも杉の赤身の幅広板を使います。

杉の赤身が水に強い(腐りにくい)というのは、一般の方にはあまり馴染みが無いかもしれませんが、事実です。



 

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階段の側桁に

側桁

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

上の写真は、うちで2007年晩秋の新月期に静岡で伐採した杉の木からとった板です。

長さ4.5m、巾250mm、厚み40mm と少し巾の広い板ですが、これを京都市N邸の階段の側桁に使うべく、現在現場では、若いけれども抜群に腕のいい大工さんが刻んでくれています。



見ての通り、赤身が張ったなかなかいい木目の木ですが、これは構造材の梁を採るべく製材した時の切り落とし材です。

きっとピリッとした階段に仕上ると思うのですが、今から出来上がりが楽しみで仕方ありません ♪



このお宅では階段がリビングから見えない位置にあるので、当初はもっと節がポコポコあるような普通の並材を階段用の材料として使う予定だったのですが、たまたまこんな木が出てきて使うことになり、階段の踏み板も(これまたたまたまですが)ほとんど節の無い1枚板ばかりで全部揃ったので、一気に階段の格が上がってしまいました(笑)。

毎回2階に上がるのが楽しみで嬉しくなるような階段になってくれるといいなぁ、なんて親心のような気持ちを抱いています。



仕上に向けて工事が順調に進んでいますが、だんだん嫁入り前の娘の父親のような気持ち(?)になってきました。



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職人さんのセンス

建物をつくるためには設計図が必要です。
僕ら建築家の最も端的な(目に見える)仕事は設計図をつくることです。

ですから
「設計図があれば、それをもとにしてつくるのだから誰が作っても同じだろう」
と思われる方も多いと思うのですが、それがそうはいかないのです。

実際に現場で手を下す職人さんのセンスや判断力、提案力、質問力によって、建物の出来具合は大きく変わっていきます。



うちが手がけているような木造建築物の場合、やはり一番大きいのは大工さんのセンスですが、センスのいい大工さんというのは本当に少ないです。

例えば枠の取り付けにしても、ただ図面に書かれている寸法どおりにやっておけばいいというものではなく、木の目やクセを見て使い方を考え、実際に手を下す前に一言相談する。

その小さな積み重ねができる人とできない人とでは、最終的な建物の仕上がりが大きく違ってきます。



木の目やクセというのは、

○ 赤身白太の入り具合
○ 節の有無・大小や、生節/死節の違い
○ 目の詰まり具合、柾目/杢目の向きや勝手
○ 木の元末、木表/木裏、男/女をどのように使うか

などといったところが主な勘所ですが、このようなことを考えながら仕事をしていくと、設計図面どおりに納めない方がいい場合というのもしょっちゅう出てきます。



今、東風で施工中の京都市N邸という現場を手がけてくれている大工さんは、こういったセンスが抜群です。

僕がこれまで付き合ってきた大工さんの中でもトップクラスです。
(もちろん、刃物の切れや腕もピカイチです)

こういう大工さんに手がけてもらえると、木がとても喜びます。



これまで何度もブログでご報告してきたとおり、京都市N邸では木材に尋常ならざるいろんな人の思い(建築主・生産者・設計者etc)が入っていますので、それをきちんと汲んでくれる職人さんに出会えて良かったなぁ・・・としみじみ思います。



もちろんこういった話は大工さんに限らず、左官、屋根、建具、基礎、電気、水道など全ての職種において言えるのですが、建物が出来上がってしまった後ではなかなか目に見えない話で、とかく設計や材料ばかりが取りざたされがちです。

こんなことを書いても実感としてはなかなか伝わりにくいと思うのですが、それでもちょっとお伝えしておきたいな、と思ったので書いてみました。



Sさん、I さん、いつもありがとうございます。
今後ともどうぞよろしくお願いします。



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京都市N邸 裏返しを行いました

京都市N邸(新築伝統構法)の現場では、12/7(月)・8(火)の2日間にわたって土壁の裏返し塗りを行いました。

【裏返し】というのは、竹小舞下地の片面に塗りつけた壁土(荒壁)の裏側から壁土を塗りつけることです。

下の写真のような状態の面に壁土を塗りつけていく工程を言います。

土壁1208_0

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



下の写真は、塗りつける前の土の水分調整をするために、寝かしていた壁土に藁スサを混ぜて練り返しているところです。

土壁1208_2

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



4月の末から現場で寝かしていた土はこれで全て使いきりました。

 

当初から予想していた通り、全部使っても少し足りなかったので、足りない分は左官屋さんが持っていた土を足して、混ぜ合わせたものを使っています。

今回の左官工事を担当してくださっているのは、京都市左京区下鴨にある山本左官工業という会社です。

 

土壁1208_3

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

上の写真は違いがよく判る場所だったので比較のために写してみました。 

手前の壁は今回塗りつけた壁。
奥に写っているのは前回塗りつけた壁です。

奥の乾いた壁の裏側は、今回裏返しをしているので同じように壁土が塗られています。
 
 

 

土壁1208_4

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


この写真は1階の外壁面です。
この裏面には壁土を塗りつけて裏返しをしています。

裏面の新しい土の水分を、乾いた部分が吸い取って染みてきている様子がよくわかります。
 
以前ブログでもご紹介しましたので覚えていらっしゃる方もおられると思いますが、この壁の中には下の写真のように竹小舞下地を編んでいますから、竹の部分は水分が染みとおらずに間の空隙に入り込んだ土を伝って、水分が出てきています。

 

 

 

土壁1208_5

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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荒壁乾燥中

土壁1118_1

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


現在、京都市N邸(伝統構法)の荒壁を一生懸命乾かしています。

開口部にはビニールシートを貼り、室内でストーブを焚いて、温度を上げています。
当初は扇風機も使っていたのですが、どうやらやはりストーブ(しかも灯油式の一番原始的なタイプ)が最もよく効くようです。

 

土壁1105

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


上の写真は、塗りつけた直後の写真。
土が水を含んでいてべちゃべちゃです。

 

土壁1118_2

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




この写真は土を塗ってから約2週間経った状態です。
乾燥して干割れが出ています。

 

ところどころ茶色くなっているのは、竹小舞下地を編んでいる藁縄のアクです。
もう少し乾燥したら、裏返しを行います。

夏場ならもっと早く乾くのに・・・と日増しに寒くなる気候を思いながら、いろいろと悪戦苦闘しています(汗)。



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