この週末、金沢へ行ってきました。
NPO法人・日本民家再生リサイクル協会主催の、民家フォーラム2005に参加するためです。
いろいろと感じることが多かったので何回かに分けて金沢でのことをご報告するつもりですが、とりあえず今日は、金沢に着いてまず一番に訪れた成巽閣(せいそんかく)という建物を見学した際に感じたことについて書いてみます。
成巽閣は1863年(江戸時代末期)に加賀藩・前田家13代当主が、彼の母12代奥方のために建てた奥方御殿です。
成巽閣では、現地の学芸員の方に解説をお願いしたおかげで、じっくり堪能できました。
(吉竹さん、どうもありがとうございました)
まず、奥方(女性)のために建てたため、建物の随所に施されているデザインが女性好みの柔らかなものでした。
例えば、お城の謁見の間などで権威を象徴する際には、松や虎など力強く豪華なものがモチーフとされるのに対し、成巽閣の襖・障子の腰板などに描かれていたのは、タンポポやすみれ、ちょうちょ、小鳥などの柔らかいイメージのものという具合です。
そして部屋の名前も、鮎の廊下、貝の廊下、亀の間、蝶の間などの名前がつけられており、建築主への温かな配慮をもって設計に取り組んだ、当時のデザイナーの粋な計らいを感じ取ることができました。
おそらく、今回の見学にあたってこういった説明を学芸員の吉竹さんがして下さらなかったら、建物の本当の価値や建築に携わった現場のみなさんの思い入れを、ここまで感じ取ることはできなかっただろうと思います。
(誤解のないように申し上げておくと、もちろん僕もプロの木造建築家ですから、どれだけ技巧を凝らして建物の造作がなされているのか?という技術的なことは読み取ることができます)
もしも説明を受けずに見学した場合、
「なんかすごく贅沢にお金をかけた建物だなぁ。つくった職人さんはきっと大変だっただろうなぁ。」
というレベルで見学を終えてしまったことでしょう。
つまり。
今回僕が何を言いたいか?というと、こういう(↓)ことです。
建物の価値というのは、使われている材料や、施されている細工の技術的な価値だけで決まるものではなく、そこに込めた製作者(建築主・施工者・設計者)の思い入れがとても大切だ、ということです。
一言で言うと、それは(建物の)コンセプトであり、(建物の)プログラムとも呼ばれるものです。
このコンセプト(またはプログラム)に基づいて設計がなされ、建物に課せられた目的に添ったデザイン、材料の選定などが行われていきます。
そして、建築主・施工者・設計者の3者が、まさに三位一体となって初めて、素晴らしいものができあがります。
僕はこれこそが建築の醍醐味だと思います。
一人だけの力でできることは、はっきり言ってたかが知れています。
やはりみんなで力を合わせて1つのものをつくり上げようと知恵を絞って考えて努力するからこそ、人の心を打つものができるのではないでしょうか。
あなたはどう思いますか?
もし何か感じることなどがありましたら、ぜひコメントを書いてみてください。
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