投稿者「mokuzo_architect」のアーカイブ

長野県木祖村 水木沢天然林

先週塩尻へ行ったことを前回の記事で書きましたが、せっかく塩尻まで行くのだから・・・と思い、少し足を伸ばして木祖村にある水木沢天然林へ寄ってきました。

2008年に大阪府四條畷市でT様宅の工事をさせてもらった際に何度か木祖村へは足を運んでいます。
その際にT様から水木沢天然林に連れて行って頂き、その存在を知りました。
水木沢天然林へ入るのは2回目です。

仕事柄、人工林に入ることは多いのですが、天然林にはなかなか入る機会がありません。

genseirin

林業家である僕の従兄弟は、

「天然林に入ると、人工林とはエネルギーが違う」

と言います。

そんな言葉を思い返しながら、天然林の中の遊歩道をゆっくり歩いて登ったのですが、まさにその通りで、植物の発する存在感というか生命感に満ち溢れた空間です。

人の手で整備される人工林は、木と木の間隔もほぼ等間隔で、樹種もほとんどが真っ直ぐな針葉樹に統一されています。

一方、天然林は人の手が入っていないため、木と木の間隔はバラバラ、樹種も真っ直ぐな針葉樹よりはむしろ広葉樹が多くて木は曲がっているし、天然更新が絶えず行われているため、風倒木もそこかしこに残っています。
 

と、言葉でいくら説明しようとしても、やっぱり伝えきれません。
それならば写真で・・・とも考えたのですが、写真でもやはりあの生命感は伝えられません。

もし興味のある方は、頭の片隅にでも憶えておいて頂いて、木曽に行かれたら足を伸ばしてみて下さい。

昨今よく言われる【パワースポット】という言葉が陳腐に思えるほどのエネルギーです。

古材の曲げ強度試験@塩尻

一昨日、強行軍で長野県塩尻市に日帰りで行ってきました。

長野県林業総合センターというところで行われた、古材の曲げ強度試験を見学するためです。

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こんな大きな機械に古材の梁(赤松)を載せ、上から荷重をかけていき、たわみ量と変形量の相関関係を調べるというのが試験の目的です。

赤矢印は僕が写真に描き入れたものですが、両端に支持支点があって、中央付近の2点で徐々に荷重をかけていきます。

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上から荷重をかけている最中に撮った写真です。
最初は見た目変化がないのですが・・・

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そのうちにパキパキ音を立て始めたかと思うと「ベキッ」と大きな音がして裂けました。

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昨日の試験では、裂けてもさらに載荷を続け、完全に折れるまで圧し続けました。

試験終了後、反対側から見るとこんな感じ(↓)になっていました。
中央付近で真っ二つです。

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この折れた箇所には小屋束を差し込むための断面欠損があり、見事にそこで折れていました。

 

木材は新材の時でも、個体差があって強度にばらつきが出ます。

それが古材になると経年変化も出てくるので、曲げ破壊試験をやる前にヤング率(※)を測定し、断面積(材料の太さ)とヤング率から実際の曲げ強度を比較する、という試験を行っているそうです。

(※)ヤング率とは/出典:wikipedia
ヤング率は、弾性範囲で単位ひずみあたり、どれだけ応力が必要かの値を決める定数である。

単位は応力と同じPa、tf/m2 など。
一方向の引張りまたは圧縮応力の方向に対するひずみ量の関係から求める。
ヤング率は、縦軸に応力、横軸にひずみをとった応力ひずみ曲線の直線部の傾きに相当する。

曲げ破壊試験自体はさほど目新しいものではありませんでしたが、その後の担当教授から非破壊測定機器を使った木材のヤング係数の測りかた、最近の研究動向などについて 様々なお話を伺うことができ、とても参考になりました。

建築には全く関係ないのですが、夢のある話

タイトルどおり、建築には全く関係ない話なのでさらりといきます。

読む人にとっては

「?」

かもしれませんが、僕は宇宙の話が大好きなんです。
興味のある方は読んでみてください。

→ 地球の「100兆倍」の水、120億光年のかなたに発見

テーブルの天板

今週の初めに、三田の西本製材所さんへ行き、テーブルの天板用の幅広板を製材してもらいました。

このテーブルは、うちのスタッフが友人から依頼を受けたものですが、一般市場で買うと1枚板はちょっと無理!という価格だったのでした。

そこでいつも頼りになる西本専務が
「よっしゃ、何とかしたろ!」
と一肌脱いで下さって、何年も前からストックしてカラカラに乾いている大きな板を出してくれました。

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長さは2mですが、幅は86~90cmある大きな板です。
皮付きの板をクライアントが希望されたので、板幅は場所によって異なります。

樹種は米松で、木目もおとなしく、節も小さなものが4つしかないきれいな板でした。

東風では建築を作るときに、極力外国産材を使わないようにしています(※)が、それは外国産材が悪くて国産材が良いから、という理由ではありません。

外国産材にも、質の良い木材はいっぱいあります。

10年以上前までは、僕もよく外国産の木材を使っていたので、それは身に染みてよく知っています。
むしろ外国産材を探して使った方が、安くて良いものが手に入る、と言っても過言ではありません。
( ↑ 最近は国産材の価格が下落しているので、そうとも言い切れませんが・・・)

以前もこのことは何度か書いているのですが、東風で国産材を使う理由としては下記のとおりです。

1. 外国産材は伐採時期や葉枯らし期間などを自分でコントロールできない
  ( ↑ 納得のいく木材をつくることができない)
2. 国産材を使うことで、日本の林業家を応援し、林産地の活性化に寄与したい
3. 日本の林業を応援すれば、山が保全され、間接的に治水に貢献できる
4. そして何よりも、日本の木でつくる日本の建築が好きだから

東風は決して国粋主義的な考え方に基づいているわけではありませんし、盲目的に国産材だけを使っている訳でもありません。

外国産材の良さも充分に認めた上で、それでも国産材を使う意味があると考えて行動しています。

外国産材を毛嫌いする方を見かけることもありますが、外国産材も良いものがあるんだよということも広くみなさまに知って頂きたいなと思います。

(※) 東風では構造材や造作材には決して外国産材を使いません。
   下地材には一部外国産材を使うこともありますが、下地材も極力国産材を使うようにしています。

美味しかった!

このところ、週末はほとんど打合せが重なっています。

例年、ここまで週末に打ち合わせが集中することはあまりなくて、平日のお客様が4割、週末のお客様が6割、といった具合で適度に分散していたのですが、今年はなぜかみなさま週末の打合せを希望されています。

土曜日も尼崎と京都で打合せがあったのですが、京都のU様宅へ伺った際、ご主人がお作りになったという、自家製のジンジャーエールをご馳走になりました。

ジンジャーエールって作れるんですね!
そんな発想、全くありませんでした。
そしてこれがまたすごく美味しかったんです。

写真、撮っとけば良かった・・・と思ったのですが後の祭りでした。
U様、ごちそうさまでした。

東風でもオリジナルドリンク(もちろん非売品)の製作構想を練ってみようか・・・などと思ってみたりしましたが、さてどうなることやら。

平安前期時代の建築/室生寺

7/17(日)に、奈良県の室生寺へ行ってきました。

学芸出版社が主催している連続セミナー
【 ここが見どころ!古建築/第4回 平安前期時代の建築~室生寺 】
に参加するためです。

講師は古建築の解説においては大変定評のある、妻木靖延先生です。

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当日は真夏の日照りがジリジリ・・・と大変な暑さでしたが、木々が生い茂る室生寺は木陰に入るといくぶん過ごしやすかったです。

もみじの葉の緑がきれいでした。

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石段を登っていってまず説明を受けたのが、金堂。
平安前期の建立(859~876)で、国宝です。

写真手前に映っている、屋根が一段下がっている(縋る/すがるといいます)部分は江戸時代に増築されたものだそうです。
江戸時代とは言え、当時でも約1000年前の国宝級の建物を

「増築しちゃおう ♪」 ← こんなに軽い雰囲気ではなかっただろうと思いますが

と踏み切ったことに、僕はとってもビックリしました。

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金堂の後、弥勒堂(重文)や灌頂(かんちょう)堂(国宝)を見学し、さらに登ると五重塔が見えてきます。

五重塔は平安前期(8世紀末)の建立とされているそうですが、正確な記録はないのだそうです。

しかし、細部のデザインや構法などから推測すると、どうみても平安前期の建物だろうということになっているのだと妻木先生が説明して下さいました。

この五重塔はとても小ぶりです。

京都の東寺・奈良の法隆寺・浅草の浅草寺などにある五重塔と比べると、と~っても小さいです。
外部にある五重塔としては日本で一番小さいものだとか。

当日、参加者のみなさんが口を揃えて仰っていましたが、軒先の裏甲(うらご)と軒付(のきづけ)の部分を白く塗っているのが、デザイン的にとても効いていました。

今は観られませんが、妻木先生が初めて室生寺を観に行った昭和28年には、夜中でも自由に境内に入れたそうで、ちょうど月がとても明るい夜だったので、軒先の白い部分が鈍く光り輝いてなんとも言えず美しかったとのこと。

一度観てみたいなぁ。

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室生寺の一番高いところにあるのが御影堂です。
鎌倉時代後期の建立で、重要文化財に指定されています。

この建物、屋根がとても珍しいものです。
どこが珍しいのかわかりますか?
(画像をクリックすると拡大表示できますが、それでもわからないかもしれません)

正解は ↓

 

それでは正解です。

なんとこの屋根、瓦葺のように見えますが、実は屋根葺き材が木なのだそうです。
使われているのは槙(まき←おそらく高野槙)の木で、厚みは7cmあるとのこと。

伊勢神宮にも厚板葺きの建物がありましたが、ここの御影堂のように瓦の形をした厚板葺きを観たのは初めてです。

槙は木製の浴槽に使われる材としては最高のもので、桧よりも香りが柔らかくて上品で、濡れたり乾いたりする環境においては抜群の耐久性を持った木です。 

今は大きな槙の木が大変少なくなり、入手が大変難しくなっています。

妻木先生の講義は大変素晴らしく、また次回もぜひ参加したいと思っています。

やはり古典に学ぶということは原点ですね。
関西に暮らしていると、このように貴重な古建築をすぐに観に行けるというのは大変恵まれたことですね。

いつかこうなってほしいなぁ

きょうは珍しく、ちょっと批判めいたことを書いてみます。

先月、所用で京都府庁へ行った時のことです。

用事を済ませて帰ろうとしたところ、エレベーターホールから京都市街が見渡せるようになっていました。

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日本を代表する観光都市・京都の景観がこれではちょっとなぁ・・・と悲しくなりました。
第2次世界大戦の時、アメリカ空軍が京都・奈良への空爆を避けたということなのに、その景観を壊してしまったのは日本人だったなんて、お粗末な話ですね。

下はイタリア・ヴェニスの市街地を見下ろした写真です。

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まぁ上の写真はヨーロッパですから、日本と景観は全く異なりますが、同じアジアでも中国の麗江ではこんな素晴らしい景観が遺されています。

たとえ数百年かかっても良いから、京都もこうなってほしいなぁ。

都市の住みやすさとは

今朝、インターネットのニュースを見て、ちょっと意外で驚いたことがありました。

世界で最も住みやすい都市ランキングで、カナダのバンクーバーが5年連続で1位

(中略)アジアの最高位は大阪の12位で、東京は18位。

僕はバンクーバーへは行ったことが無いし、上位を占めた都市の中で行ったことがあるのは唯一トロント(カナダ)くらいなのでコメントするに値する資格を持っているとは思いません。
トロントは緑が豊かで静かな街だったという印象があります。

何よりも驚いたのは、大阪が12位だったこと。
僕も大阪は大好きですが、【住みやすい都市】として挙げるのならばもっと他にあるんじゃないの?という気がしました。
僕が個人的に日本の中で挙げるのならば、札幌です。
水が美味しくて、自然が豊かで、物価が安く、気候も割と穏やかです。
でもきっと札幌は世界140都市の中に含まれていないんだろうなぁ・・・。

関連でこのページの一番下の方を見ていたら、またまたビックリ!
レストラン格付けだと、世界第5位のニューヨークや4位のパリを抑え込んで、なんと世界1位が東京、2位が京都、3位が大阪と日本がトップ3を独占しちゃってるんですね!

ミシュラン格付けによるものとはいえ、やはり日本の食文化は世界トップレベルだと言うことでしょうか。

あなたにとって都市の住みやすさとは何ですか?

江戸からかみに学ぶ

週末に東京へ行っていました。
土日の2日間にわたり、 江戸からかみについて学ぶセミナー
「復興! 江戸からかみに学ぶ」
に参加してきたのです。

日本民家再生協会の若手メンバー(U-50)が企画・主催し、東京松屋様をはじめとする江戸からかみを今に伝える職方のみなさまにご協力いただいて実現したものです。

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第1部は東京松屋の伴社長様による、江戸からかみの総論とも言うべき解説でした。

まずは江戸からかみの歴史を紐解く話から始まりました。
関東大震災の後の火災と東京大空襲で、江戸に伝わっていた江戸時代の版木(はんぎ)はそのほとんどが消失してしまったそうです。

江戸からかみと京唐紙の違いや、なぜその違いが生まれたのか?など、大変興味深い貴重なお話を伺うことができました。

会場には、実物大の襖の下地工程(全10工程)を説明するための見本を展示してくださっていたのが素晴らしかった。
その10工程にわたる紙貼りにおいては、各工程ごとに異なる紙質・糊のつけ方・紙の切り方など、職方の繊細な心配りがなければ成り立たないことがよく判りました。

僕ら建築家にとっては、今回教えていただいたことをきちんとクライアントのみなさまにわかりやすく伝えることも大切な仕事の一つです。
そうすることで、クライアントのみなさまがからかみの本当の価値を評価し、からかみの仕事を依頼して下されば、職人さんが腕を振るう機会が増えて伝統も継承されていくからです。

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上の写真は、実際に型を捺すための版木です。
この版木の場合は、彫り残してある笹の葉や茎の部分にキラ(雲母)などをつけて、鳥の子(とりのこ)紙に捺します。

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その版木にキラを付けて鳥の子紙に型捺しする作業を、実際に職人さんが実演して見せてくださいました。
写真中央で実演して下さっているのが、からかみ師である唐源(からげん)の小泉幸雄さんです。

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この時使ってくださった小版の版木(↑)は天保年間のもの。

この作業、ビデオに納めたかったです。
(写真はたくさん撮りましたが・・・)

 このお二方へ取材をした記事がこちらのサイトで公開されています。
僕のつたない文章よりも臨場感に溢れていてずっとわかりやすいので、興味のある方はぜひご覧あれ。

放射線以外のがん治療法

昨日、5月の連休明けに竣工・リニューアルオープンした青木診療所様へ行ってきました。
(すみません、まだ写真撮れていません・・・今しばらくお待ち下さい)

リニューアルオープンして以来、青木診療所様では患者さんも増え、患者さんが「診療所内で木のにおいがする」、と好評のようで一安心しています。

僕も今回の工事で初めて知ったのですが、がん治療に患部を温めるだけの温熱療法というのがあるんです。
がん細胞は熱に弱いことは昔から知られていて、科学的にも証明されているのだそうです。
この性質に着目した治療法がハイパーサーミア治療システムなのですが、今回、青木診療所様ではリニューアルにあたりハイパーサーミアの治療器/大型のサーモトロンを導入されました。

放射線治療と違って、患部を高周波で温めるだけというのが安全で、すごい!と感じました。
イメージ図を貼っておきます。

hyperthermia

昨日伺った折に、新しくおつくりになられたという診療所のパンフレットを頂いてきました。

僕は専門外なので、これ以上詳しいことは以下のパンフレットを見て下さい。
ホームページは現在製作途中とのことなので、以下にPDFファイルのリンクを張っておきます。

便利な大阪駅前で検査・診断から緩和医療まで
ハイパーサーミア治療 青木診療所