投稿者「mokuzo_architect」のアーカイブ

地震からちょうど1年 駿府城の石垣

世間はお盆休み真っ最中だと思いますが、東風は営業中です。
当方は各自好きな時に休みを取る、というスタイルでやっていますので。
ご連絡・お問合せなど遠慮なくどうぞ。

このブログの閲覧者数も、平常と変わりなく推移しています。
みなさま、どうもありがとうございます。
いつも見に来て下さるみなさまのために、毎日更新すべく頑張っております。
お盆休み中の方は、ぜひビールを飲んで涼みながら覗きに来てやって下さい。



いつも静岡へ行くたびにチラチラとみているのですが、なかなか進まないのが駿府城の石垣の復旧です。

2009年の8/11、静岡で震度6弱の大きな地震がありましたが、その際に駿府城の石垣が数ヶ所で崩れました。
下の写真は駿府城外堀西側の石垣の7月末の状況です。


駿府城の石垣


 


 


 


 


 


ブルーシートで覆われた部分が崩落した箇所ですが、もともとは赤点線のような形で石垣が残っていました。



この石垣の復旧はとんでもなく大変なんですよね。

石垣の積み直しは、本来こんな風(↓)に周到に準備をしておいてから進めます。

野面石積み


 


 


 


 







崩れる前に各石にガムテープを張って、全ての石に番号を付けておき、向きや形など写真を撮って全て記録しておきます。
(画像をクリックして拡大表示していただければ、番号などが確認して頂けると思いますが、各所に補助的な墨などが書き込まれています)

その上で、ていねいに一つ一つ手で取り外していって、広い場所に置き並べ、下地の補修・築造をした後でまた記録を頼りに積み直すのです。

ちなみに上の写真は滋賀県大津市比叡山坂本周辺の穴太衆(あのうしゅう)積みの石垣です。



こういった準備をしていても時間がかかるのに、それがなくある日突然に地震で揺らされてガラガラと崩れしまったのですから、復旧が大変困難な作業であることは容易に想像がつきます。

関係者のみなさま、大変だと思いますが応援しておりますのでがんばって下さい。
静岡へ行くたびごとに気をつけて見守っていきたいと思います。

長材の製材@静岡

7月下旬に、静岡で長材の製材をしました。

一般の木材市場で規格品として常時販売されている構造材は、長いものでも6mの通し柱なのですが、東風では7~9mという材料も使います。

こういった材料は
東風:「3ヵ月後に欲しい」
と言うと、
材木屋さん:「じゃあ人工乾燥炉に入れて乾燥させておきます」
という話になってしまいます。

東風:「天然乾燥材は無いの?」
と言うと、
材木屋さん:「長材は今から伐って乾燥させるのに最低3年はかかるぞ」
と言われるのがオチです。

つまり東風でも、2年後・3年後に使うための木材を今から用意しているのです。

製材201007-1


 


 


 


 


 


上の写真は製材する前の丸太。
杉の原木です。

製材する前には一番外側の荒皮をあらかじめ剥いておきます。

上の画像をクリックして拡大表示していただけると、写真右上の方に製材機に原木を固定する作業をしているオジサンが見えますので、そのおじさんの大きさと木の長さを比べてみて頂ければ、大きさが実感できると思います。


製材201007-2


 


 


 


 


 


冒頭の写真のうちの1本を製材したところです。

この木は非常に素直な木で、節が全く無く、とても美しい木目が出ました。
きれいでしょう?

製材はこういう木目に出会えるので、とってもワクワクします。
今から使うときのことを考えると楽しみです。

3年後=2013年かな?
それまでじっくり乾燥させます。

どこのお宅に嫁入りするんでしょうね?

明石市 K様邸 無事上棟しました

8/6-7の2日間かけて、明石市内で工事中のK様邸が無事上棟しました。

大工さんがいの一番に立てたのは、【い】通り【?】番の通し柱ではなく、中央に
「どしっ」
と立つ大黒柱でした。

この大黒柱のみ、以前ご報告したとおり静岡県産の新月材です。
大黒柱以外の構造材は高知県梼原町産材です。


構造材はプレカットによる機械刻みなのですが、この大黒柱は大きすぎて機械に乗らないので、全て手刻みに。

折角なので「金物を使わずに組んでほしい」と頼み、下の写真のような納まりにしてもらいました。

大黒柱建方-1


 


 


 


 


 


大黒柱建方-2


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 



大黒柱の下端に十字のやといホゾを入れ、それを土台に差し込んで込栓で緊結する、というやり方です。

大黒柱は杉、やといホゾと土台は桧、込栓は樫を使っています。


大黒柱建方-3


 


 


 


 


 


 


大黒柱建方-4


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 




最初にすっくと一本だけ自立した大黒柱。
長さは約7m、太さは7.5寸(235mm)角です。


上棟


 


 


 


 


 


 



上の写真はほぼ建て方が完了して建物の全容が見えてきたところです。



当日はスカッと晴れ渡った酷暑×炎天下。

こんな天候の下での作業は大変で、通行車両の交通整理をしていただけの僕も立っていられなくなるほどでした。
大工さんはよほどキツかっただろうと思います。

しかし無事上棟を済ませて一安心しました。

建築主のK様ご夫妻からは大変喜んで下さっているお言葉を頂き、東風および職人一同、大変嬉しく感じています。

と思っていたら、早速台風が・・・。
なかなか気は抜けませんね。

欅とかやぶきの古民家

i邸


 


 


 


 


 


7/31-8/1の2日間にわたり、神奈川県内の i さん宅において、民家再生協会の会議を行いました。

i さんのお宅は現役のかやぶき民家で、主な材料として欅を使っているにもかかわらず、堅くならずにとても上品なつくり方をされているすばらしいお宅でした。 

会議自体は、裏庭(中庭?)に面して経っている改装された蔵で行われ、会議の後はバーベキューと生ビールで懇親会。

とても贅沢な時間を過ごさせて頂きました。
i 様、場所を提供して下さり、どうもありがとうございました。



i さんのお宅の裏庭には、市から保存樹としての指定を受けている、大きな3本の欅の木も生えています。
まさに欅の家です。

このような建物・敷地を維持していくのは大変なことだと思います。
各地に残る素晴らしい古民家、大事にしていきたいですね。

静岡の風景

このところ、更新が滞っておりました。
いつも見に来て下さるみなさま、申訳ありません。

先々週あたりからめまぐるしい日々が続いて、そこへ酷暑が重なったのでかなりバテ気味です。
体調もあまり芳しくありませんが、頑張ります!

昨日から西明石でK様邸の建て方作業が始まっており、今日は上棟です。
この話はまた後日。



7/31から8/3にかけて、静岡に滞在しておりました。

7月は1ヶ月の間に合計3回も静岡へ行ったことになります。
過去にも、こんな頻度で出かけたことは無かったような・・・。

また追々ご報告しますが、下の写真は僕の先祖の故郷、静岡市梅ヶ島の風景です。


梅ヶ島の風景


 


 


 


 




靄が立ち込めて緑も美しく、幻想的な感じでした。


 


静岡の花


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


庭先には花が一杯咲いていました。
なんていう花かはよく知りませんが・・・(恥)。

日本文化の美徳

最近読んだ雑誌の中に、「あぁなるほどなぁ」と
深く感銘するくだりがあったのでご紹介します。



<ここより抜粋>
日本文化は見えない世界をとても大切にします。


平成16年に四国の金毘羅宮で大修理がありました。
この金毘羅宮の天井には木地蒔絵(きじまきえ)といって
木目を生かした漆塗りの装飾が施されています。

一般の人が参拝する拝殿と、神様にお供え物をする
弊殿(へいでん)と、神様を祭る本殿にそれぞれに
描かれているのですが、大修理を通して初めて分かったのは、
拝殿、弊殿、本殿と奥に行くに従ってその木地蒔絵の
図柄が非常に簡素になっていることです。
にもかかわらず技法が非常に高度になっていく。


本殿は宮司すらめったに入らない場所です。
そういう人目につかないところに、簡素な図柄と
高度の技術が使われ、深い精神性が凝縮されます。
私は「これは日本文化の神髄を象徴している」と思いました。


教育も同じで、目に見える理性教育ばかりやって
いたのでは駄目だと思います。
見えない心、その奥の無意識の部分まで含めた
教育の大切さを見直さなくてはならないと思っています。


(月刊誌『致知』8月号掲載の対談
”一道に生きて見えてきたもの”より抜粋
 国際基督教大学名誉教授・石川光男氏の発言 )


<抜粋ここまで>


 


これを読んではっと気付いたのですが、
東風で家づくりをする際にも、同じことを考えています。


簡素な図柄と高度な技術を用いなければ、
深い精神性は凝縮できない。


でも、これが相手に伝わらない、理解されないということは
実は結構あります。


僕はそういう時、
「仕方がない」
とその場は一旦諦めて引きさがります。


なぜなら、その場で言葉を尽くして伝えれば理解してもらえる
という問題ではないからです。

その一方で、わかる方は何も言わずにすっと理解されます。



もっとわかりやすく伝える方法はないか?ということは
もちろんいつも自問自答しています。


でも、基本的には僕は自分のこのスタンスを変えるつもりはありません。
なぜなら、薄っぺらい物を作る気はないからです。


みなさま、わかりにくくてすみません。

住んでからわかる。掃除機は重要です

東風でつくっているような木の家に住み始めてみるとわかることなのですが、無垢の木の床板を張った家というのは、掃除をする時に実は大変気を使います。


なぜか?

それは、普通の掃除機を使って今までどおりに掃除をすると、すぐに床板が凹んでしまうからです。

その諸悪の根源は、掃除機のヘッドではなく、車輪の付いた本体です。



カーペットが敷いてある家や、新建材の床板が張ってある家では全く気にならないのですが、無垢の床板張りの家で掃除機をゴロゴロ引っ張りまわすと、すぐに床板に傷が付きます。

この傾向は、杉などの柔らかい樹種の床板を使うほどに顕著になります。



過去の東風のクライアントのみなさまからお話を伺ってみても、
「新しい家に住み始めたら、掃除機は使わないでほうきで掃除するつもりです」
と言われる方が結構多いです。

そんなみなさまにお薦めしたいのが、本体を引っ張りまわさない掃除機です。



よく見かけるのがこういうタイプ(↓)


掃除機1


 


 


 


 


 


 


 



自立するし、電源コードもなくて充電式なので使いやすくて結構重宝するようですね。

ただ、やはり吸引力が弱いのが難点かな?



また、下のような肩掛け型の掃除機もあります。


掃除機2


 


 


 


 


 


 



上の写真は東芝のエスカルゴという商品ですが、デザインもすっきりしていて、なかなか良さげです。


肩掛け型というと、やはりこんな感じ(↓)のものを想像してしまいますが、上の掃除機と比べると全然違うイメージですね。


掃除機3


 


 


 


 


 


 


 


 


 


まぁいずれにしても、

「新しい家では棕櫚のほうきなどで掃除をしよう!」

と意気込んでいても、やはり目地や溝の底に落ち込んでしまったゴミなどは、掃除機でないとなかなかうまくとれないのが現実で、ほうきの他にも掃除機も常備しておくのが現実的なようです。



以前、修善寺のとある老舗旅館の改修工事をやった時に、腰に本体をベルトで巻きつけるタイプの掃除機を仲居さんたちが使っていました。

旅館など和室が多い建物では、ふとしたときに本体を障子やふすまの縁にぶつけてしまうことが多いらしく、そんな事故を防ぐために、腰から掃除機本体を下げているのだそうです。

蔵の戸

1週間ほど前になりますが、京都の井川建具店さんへ行ってきました。

西明石で工事中のお宅の玄関戸に古建具を使いたい、というクライアント・Kさんのご希望で蔵の戸を探すために、Kさんに同行しました。

今回、Kさんが選ばれたのがこの建具です。

蔵の戸

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

蔵の戸にはケヤキが使われているものがよく出回っていますが、この建具は割と新しいもののようで、框および格子が桧、腰板がケヤキという組み合わせです。

これからまず洗い屋さんにお願いして建具を洗って汚れを落としてもらい、建具屋さんに格子部分の金網をはずして別の材料に取り換えてもらって、吊り込みをした後で塗装します。

古建具を使うのはなかなか手間がかかります。
そのまますっと使えればもっと簡単で良いんですけどね。

そして蔵の戸を再生する際に問題になるのが鍵です。

この建具は厚みが55mmあるのですが、建具屋さんに相談したところ、55mm厚に対応した防犯性の高い引戸用の鍵は、既成品では販売されていないとのこと。

特注で鍵メーカーに作ってもらうことになるため、金物の納期が約40日かかるそうです。

これから古建具を使おうとされている方は、関連部材の納期にも注意してくださいね。

西明石 配筋完了

配筋完了


 


 


 


 


 


西明石でK様邸新築工事の現場が進んでいます。

昨日の朝、現場で瑕疵担保履行法保険に関連する基礎の配筋検査があり、僕も立ち会ってきました。 



写真右半分が1階部分で、左の鉄筋が少ない部分はガレージです。
ガレージの上には2階が載ります。



このところの雨続きで、現場の職人さんたちは大変です。
みなさん、毎日作業しにくい中を頑張って下さってありがとうございます。

でも、夏場はお天気が良くてカンカン照りも苦しいんですよね。
雨降りは気分的に滅入ったり作業をしにくいという面もありますが、体力の消耗ということを考慮すると、カンカン照りよりも雨降りの方がまだマシかも?と思ったりします。

そのあたりは個人差があるかもしれませんが、天気予報によると、来週からは好天が続きそうですね。

お盆前には上棟、そして屋根仕舞の工程に移っていく予定です。

今後、また定期的にご報告しますのでお楽しみに。

研究材料

週末から出かけっぱなしの毎日が続き、ようやく事務所に戻ってきました。
今日はおとなしく、久しぶりにほぼ1日事務所にいました。

週末から、神戸・志摩・静岡・和歌山と各地を転々としておりました。
1日400-500kmの長距離運転が3日連続すると、さすがに疲れますね。



静岡へは、1年半前に伐った木の製材と、在庫の板を取りに行っていました。

今回は何たることか、デジカメを事務所に置き忘れてきたので、製材中の報告写真はありません。
すみません。

なかなか面白い製材だったのですが・・・。



初めて 【伐採後1年半経った、芯に割れが入っていた木】 を製材したのです。
この木です(↓)

割れの入った木


 


 


 






写真を見るとお分かりになるかと思うのですが、芯あたりから放射状に大きな割れが入っています。

これはおそらく、立ち木の状態で木の中の水分が冬季に凍って起こる『水割れ』と思われます。

こういった原木は商品価値がとても落ちるので、普通は出荷されないことが多いです。



ただこの木はとても素性が良くて、太さも根元で70cmもあったため、割れが入っていないところで板が取れれば一部は充分使えるかも・・・と思い、製材してみました。

長さは4.5mあったので、半分の2mに切って使えればいいなぁと一縷の望みを託したのと、伐って1年半経った原木がどんな状態になっているのかを確認したくて、半ば実験のような感覚で製材してもらいました。

というのも、普通は原木のままで1年半も置いておいたら、白太の部分は虫に喰われまくっていてとても使えない・・・という状態になっているからです。

今回の製材では、それが伐り旬(晩秋)の新月期に伐って、その後充分に葉枯らしした木だとどうなっているのか?というのを実際に見てみたかったのです。



製材してビックリしたのですが、、白太には全く虫が入っていませんでした。

さすがに白太の色は少し悪くなっていましたが、腐っているという状態ではありません。

ただ、冒頭の【割れ】は予想以上に深く貫通しており、こればかりはいかんともしがたい状態でした。

われをよけて製材を繰り返しても、どうにも使える部材が取れない・・・という状態でした。

なかなかいい経験をさせてもらえました。



という製材で、一応形になって持って帰ってきたのが下の部材です。


BlogPaint


 


 


 


 


 


 


 


 



写真で言うと、手前が末、奥が根元方向です。
長さは2.3m、巾は一番小さな末口の天端の面でも32cmあります。
厚みは75mm。


ご覧のように、節は全くなくてとてもおとなしく綺麗な木目なのですが、充分乾燥させたら白太がどうなるか?というのが未知数なので、商品としては使わない予定です。

(本当は、赤身だけでこれくらいの巾の板が取れれば使えるかも・・・と
 期待していたのですが、割れがひどすぎたためにちょっと無理でした)

同じような木目の板が合計4枚あるので、
○ 異なる置き方による乾燥速度を比較する
○ 黄色くなった白太や黒ずんだ赤身の状態がどうなっていくか
というような研究材料として使う予定です。

また随時報告しますね。
どうぞお楽しみに。



ちなみに、製材直後のこの木の含水率はおよそ86%でした。