投稿者「mokuzo_architect」のアーカイブ

和室の釘、いろいろ

高山市の吉島家、第2弾です。

茶道に関係した、和室で使う特殊な金物をご紹介します。

釜蛭釘


 


 


 


 




↑ これは茶室の天井、炉のほぼ真上に取り付ける釜蛭釘(かまひるくぎ)です。
  茶道の世界では、3月だけはこの釜蛭釘から鎖で釜を吊り下げて使います。
  その時だけ活躍する蛭釘です。

蛭釘には、このように釜を吊り下げる釜蛭釘の他に、花篭を吊り下げるための花蛭釘(はなひるくぎ)などもあります。

釜蛭釘とはこんなものです。



次は茶室ではなく、隣接した座敷に用いられている釘を。

床の出書院に見つけました。
(水色と赤矢印部にあります)
これらは必ずセットで取り付けます。

お茶事の中盤で「席入りの準備ができましたよ」というお知らせのために銅鑼を鳴らすのですが、その銅鑼を吊るための釘(赤矢印部)と、銅鑼を叩く撞木(しゅもく)を吊り下げておくための釘(水色矢印部)です。

床の間0827


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


稲妻釘 


 


 


 




↑ まずこれが赤矢印部についている、稲妻釘(いなづまくぎ または喚鐘釘:かんしょうくぎとも言います)です。

お茶事の際には、ここに銅鑼や鐘などを吊り下げておきます。
稲妻釘はこんなものです。


撞木釘


 


 


 


 


 


 


 


 


↑ で、銅鑼や鐘を鳴らすためには木槌のような形をした撞木(しゅもく)という道具が要るのですが、その撞木を吊り下げておくための撞木釘がこれです。
必ず2本1組で使いますので、ここにまたがせてぶら下げておくわけです。


撞木釘とはこんなものです。



お茶事に関係した和室の金物は、名前や姿が風流なものが多いのですが、他にもまだまだいろんな金物があります。
あなたもぜひお座敷で探してみて下さい。

今の季節活躍するのは、蛍釘(ほたるくぎ)ですね。
と言っても、昨今蛍釘が活躍する機会はなくなりましたが・・・。



【お知らせ】

9/5(日)に兵庫県明石市内で構造見学会を開催させて頂くことになりました。
見学の機会を与えて下さるK様に感謝。
当日は構造見学会ならではの企画として、他社とはちょっと違う白蟻対策などについてもお話ししたいと思っています。
詳しくはこちらをご確認の上、お申込み下さい。

畳の縁

8/22(日)の午後、飛騨市での研修を終えた後に、1人で高山市に行き、久しぶりに吉島家住宅(国指定重要文化財)を見学してきました。

吉島家は築年数こそさほど古くはない(築後約100年)のですが、木造建築の世界では最高峰の完成度を誇る住宅建築として大変有名な建物です。

その上、どれだけハイシーズンに行ったとしても、ほとんど見学者がいない、という点も特筆すべきですが(笑)。



僕が初めて吉島家を見たのは、今から18年前のことです。

正月しんしんと雪が降る中を、3日間朝から晩まで通いつめて、震えながら主な座敷を隅々まで実測したり、スケッチをしたりして自分なりに調べました。

それからも何度か吉島家を訪れていますが、何回行ったかは忘れました・・・。



久しぶりに訪れた吉島家では、いくつかネタになりそうなものがあったので、数回に分けてお話したいと思います。

今日は畳の縁(へり)について書いてみます。



下の写真は、吉島家の2階の一番奥の座敷の畳の縁です。

何の変哲もない縁ですね(↓)。


畳の縁


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 



最近は和室のない家が増えているので、設計していても
「畳の縁の色・柄をどうしますか?」
と聞く機会も減りました。

しかし、畳を入れるお宅で畳の縁のサンプル帳を持っていくと、おとなしいグリーンやグレーの薄く柄の入った縁を選ばれ、「どっちにしようかなぁ~」と悩まれるケースが多いです。
きっと、マンションなどで一般的に使われている畳の縁が、グリーンとかグレーの柄入りのものが多いのがその原因でしょうね。



そこからいろいろとお話をして色や柄を決めていくのですが、僕がおすすめする色は大体決まっていて、黒無地、こげ茶無地、黄色無地のいずれかです。

でも圧倒的に黒無地が多いですね。
特に茶室などでは、まず黒です。
柄の入った縁は、まずお薦めしません。

理由は単純で、部屋の空気が締まらないから。



黒/こげ茶の選択は、床柱や床脇などの材料との取り合わせや、使われる予定の座卓、隣接する部屋との連続感や目的などから総合的に判断して助言を行います。

黒や茶だと縁の存在感が強すぎて馴染まない、という方には黄色の縁をお薦めします。

理由は、黄色の縁だと使っているうちに畳表が日に焼けて、縁の色とイグサの色が近くなってくるからです。



最近は床の間を持たない、座敷というよりは畳ルーム、みたいな部屋を作りたいというケースも多いので、そういう時は縁無しの畳(琉球畳)を所望される方が多いですね。

実は琉球畳の表はただ単に縁がない、というのではなくて、普通の畳表とは織り方も目も全く違います。

で、普及価格帯の畳の価格と比べると、同じ面積で普通の畳の約3~4倍くらいになります。
琉球畳の方がずっと高いのです。

これを言うとみなさんビックリされますが、実はそうなんですよ。



畳の話は、実はもっともっとたくさんあるのですが、尽きなくなってしまうのでこの辺でやめておきます。

明日は吉島家で見た別のネタをもとに書いてみたいと思います。



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飛騨の杣そま)職人

先週末、飛騨市の宮川町と古川町に行ってきました。

日本民家再生協会の中の部会・日本建築研鑽会が主催した、第3回目の研修会に参加するためです。



今回の講師は、飛騨市宮川町在住の荒木昌平さんという若い大工さんです。

荒木さんは昔ながらの道具を使って製材を行う、杣(そま)職人としての研究・活動も行っており、今回はその実演と説明をして下さいました。

現代において【製材】というと、帯鋸(おびのこ)製材機を使った製材手法がほとんどで、ごくごく稀に大鋸(おおが)という大きな鋸(のこぎり)で製材することもありますが、荒木さんが杣(そま)大工として原木を製材する際に使うのは、斧とチョウナです。

以下にその手順をご説明します。



杣(そま)職人が原木の製材を行う場所は、本来は伐採現場である山なのだそうです。

山の斜面に【りん】と呼ばれる台を下の写真のように組み立て、その上に製材する丸太を積み、1本ずつ製材していきます。

飛騨そま大工_1


 


 


 


 




1 (↑)まず斧を使って丸太の側面に切り込みを刻んでいきます。
  振り下ろし時の原木への切り込み角度は、原木の軸に対して約45°といったところです。
  最初は根元から末口に向かって、次に末口から元口に向かって切り込みを入れます。


飛騨そま大工_2



 


 


 






2. (↑)切り込みを入れたら、丸太の軸とほぼ平行に斧を入れて、丸太の側面を削いでいきます。
  これで1面の荒バツリが完了です。


飛騨そま大工_3


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 



3 (↑)1面ができたら丸太を90度回して、ハツった面を下に向け、次の面を同じように製材していきます。


飛騨そま大工_4


 


 


 


 




(↑)2面ハツり終えたところ。
下面と手前の面にツラ(面)ができました。


飛騨そま大工_5








 


ハツった面の詳細はこんな感じ(↑)です。
古民家の梁でこういう雰囲気のものを見られたことがある方は多いのではないかと思います。

実際、こうやってハツった原木を仕上げるためには、この後チョウナでもう少し面(ツラ)を平滑にして、その後さらに鉋(かんな)をかけて仕上げます。
(この日は時間の都合上、チョウナと鉋をかける工程は省きました)



こうやって斧とチョウナと鉋を使って行う製材でないと、下のように曲がった梁を曲面で仕上げることはできません。

製材機や鋸では、この曲面は出せないのです。

宮川町の古民家


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


どこでも見かけるような何の変哲もない梁のようですが、実はこれを作ろうと思ったら大変なことになるんですよね。

実演して見せて頂いたおかげで、本当によくわかりました。
荒木さん、どうもありがとうございました。



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平板瓦

明石市K邸では屋根工事が進んでいます。
週末には瓦屋さんが屋根を葺きに来てくれました。

平板瓦0820_1

 

 

 

 

 

今回はよく見る波型の日本瓦ではなく、平板瓦という平たい瓦を葺きます。
平板瓦は通常の日本瓦と比べて、棟やケラバなどの納まりが若干異なります。
材質は陶器製で、釉薬がかかっています。

瓦は下葺き材(今回はゴムアス系ルーフィングを使用しています)を葺き、瓦桟を打ったら、まず最初に全ての地瓦を屋根の上に載せます。
こうして屋根に荷重をかけると、下で荷重を支えている梁などに負荷がかかって場所によっては微妙に下がってきたりすることもあります。

そうやって下がってきたのを見極めてから内法鴨居を取り付けないと、あとで引戸が突っ張って動かなくなる、なんてこともあるようです。

上の写真は棟付近から撮ったもので、下の写真は逆に軒先付近から撮ったものです。

平板瓦0820_2

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 写真を撮った時には軒先の3列がすでに葺き上がっていました。

今の瓦は葺くのにほとんど土を必要としません。
その代わり、引っ掛け桟(瓦桟)という木を打っておいてそこに瓦を引っ掛け、上から釘で止めて葺いていきます。

木造建築物の耐震研究が進むに連れ、「屋根は軽い方が地震に有利」と言われているものですから、新しく商品開発される瓦はいろんな材料を使ってドンドン軽量化が図られています。

僕はあまり使う機会がないので良く知りませんが(恥)、今はいろんな形の新しい瓦が販売されていて、機能・価格なども様々です。

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垂木(たるき)と、ひねり金物

明石市の現場では、屋根工事が進んでいます。

垂木

 

 

 

 

上の写真は、屋根の上に上がって、屋根面を見下ろしながらとった写真です。

化粧垂木(杉:90mm×45mm)の上に、化粧野地板(杉板:本実加工 厚み12mm)を張っている最中に撮りました。

板の表面に筋がいっぱい入っているのは、板の反りを防止するための切り込みです。
無垢材のフローリングなど、片面のみが化粧の板の場合は、このように筋状の溝を入れて板が反りにくいようにあらかじめ加工しておきます。

ひねり金物

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

上の写真は屋根面を下から見上げたところです。
さっきの写真とはちょうど逆の方向から見ています。

軒桁(のきげた)と垂木(たるき)が交わったところに銀色の金物が見えますが、これは【ひねり金物】というものです。

軒の出が深ければ深いほど、台風など強風にあおられた時に、屋根には大変大きな風圧力がかかります。

そんなときにも屋根が丸ごと飛ばされないようにという備えとして、このひねり金物を取り付けるのです。

9/5の構造見学会の折には、そのあたりも見ていただけるかな・・・ひょっとしたらもう外壁の下地に覆われてしまって、見えなくなっているかもしれません。

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7.5寸角(22.5cm×22.5cm)の大黒柱(↓)は天然乾燥させた杉の新月材です。

大黒柱建方-4

 

 

 

 

 

当日は構造見学会ならではの企画として、他社とはちょっと違う白蟻対策などについてもお話ししたいと思っています。
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できたらいいな♪

日本のように四季がはっきりしているところに家を建てる場合、家の性能を季節によって変えられたら良いのになぁ・・・と思うことが良くあります。

例えば、

1. 冬はトップライトがあると、暖かくて明るい
  ⇔ でも夏はトップライトなんてあったら暑くて暑くて死にそう!

2. 冬は吹き抜けがあると暖気が上に逃げてしまうので寒くて嫌だ
  ⇔ でも夏は熱気が上に上がってくれ、冷房の冷気は下に下りてくれるので吹き抜けが欲しい

3. 夏は西面に窓があると暑くてイヤダ!
  ⇔ でも冬は西面からの太陽がありがたい・・・。



こういうことってありますよね。

実はトップライトの問題などは、衣替えのような形で対応できそうな案が僕の頭の中にあるのですが、うっかり忘れた頃に台風が来たりすると危ない・・・とか、クリアすべきいろんな課題があります。



でも、【衣替えができる家】ってすごく良さそうだと思いませんか?

コンセプトとしては、日本の住環境にぴったりだと思うんですが、あなたはどう思いますか?

実際、日本の伝統家屋では衣替えをしていましたしね。

冬になると雪国では雪囲いをしたり、夏になると紙障子を簾戸に入れ替えたり。
現代住宅の衣替えを考えてみようかな。



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失敗が世界を広げてくれる

東風では自社で原木を買って、製材所にお願いして丸太を製材してもらい、静岡のストックヤードで木材を自然乾燥させてストックしています。

よほどこだわる大工さんや工務店さんでも、最近はなかなかそこまでやる人はいませんが、それでも東風が原木の伐採時期からこだわって取り組む理由は3つあります。

1つ目の理由は、市場では入手できない木材を入手するため。
2つ目の理由は、原木の製材が好きだから。
そして3つ目の理由は、自分たちの木を見る目・木材に対する知識を得るためです。



僕らは木造建築を設計する・つくることにかけてはプロですので、自分たちの確固としたスタイルを持っています。
( ↑ もちろん、日々進化し続けてはいますが・・・)

しかし、木材をつくることに関してはまだまだ試行錯誤の側面があり、材木屋さんや製材所、林業家など、みなさんにいろんな知恵を教えて頂きながら学んでいますが、当然失敗もしています。

そして失敗すると、当然その損害は【¥】となって自分に跳ね返ってきます(苦笑)。

「そんな失敗や損害を被るのなら、原木なんて買わなければいいのに・・・」
というのが普通の考え方だと思います。
実際、木材を材木屋さんから買っていれば失敗のリスクは格段に低くなるのですから。

しかしそれでは僕自身の目指しているところまで絶対に到達できないのでダメなのです。



実は昨日も、事務所でストックしていた木材の管理状態が悪かったせいで、処分せねばならない木材が発生しました。

今朝は早朝からそれを片付け、整理し直しました。

しかしこうやって何度も何度もいろんな失敗をして、その痛手を自分で受け止めていると、次々にいろんなことが判ってきます。

書物には絶対書かれていない知識を得ることもできるし、生き物の生態・神秘を感じることも度々です。

見えないものが次々と見えてきて、世界が広がり続けていきます。



よく「失敗は成功の基」と言いますが、僕はそれだけではないような気がします。

確かに、失敗は同じ失敗を繰り返さない自分を生み出します。

しかしそれと同時に、
失敗は【失敗しなかったら行けなかった場所や深層】に連れて行ってくれると思うのです。

やはり、自分で失敗してみて、やってみて、苦しんでみないと世界は広がらない。
最近、つくづくそう思います。



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京都市内で「在宅リゾート」

先日、この春に竣工した京都市N様邸にお邪魔してきました。

京都市nさん宅2京都市nさん宅1


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 



目的は「土壁伝統構法の家が、京都市内×エアコン無しだとどんな暑さか?」
というのを実感したかったため、というのが表向きの理由(笑)ですが、実際のところはNさんと飲みたいなぁというところだったかも。

で、Nさん宅へ行くと、夕方からの大雨で京都市内はすっかり涼しくなり、表向きの理由はどこへやら・・・
結局単なる飲み会になってしまったような気がします(笑)。



でも、酔っ払いながらもまじまじとNさん宅を眺めてみて実感したのは、
「やっぱり良い家だなぁ~」
ということでした。

Nさん宅はいろんな事情があって、僕個人としてもとても思い入れの深い家なのですが、Nさんご夫妻はこの家をたいそう気に入って下さっている様子で、
「在宅リゾート」
と仰っています。

その理由としてはいくつかあるようです。

Nさん宅の近くに豊かな緑があるため朝になるといろんな鳥が囀り始めること。
車が近くを通らない静かな環境
薪ストーブがあること。
吹き抜けの梁からハンモックのようなネット型の揺り椅子(名前は失念しました)があること。
などなどですが、自分たちが一生懸命手がけた家を京都市内で「在宅リゾート」と呼んで下さることは何より嬉しく感じます。

以前にも書いたことがありますが、僕が建築家として一番嬉しいことは、自分が納得できるような美しい家をつくることではなく、クライアントのみなさまが作った家を気に入って下さって喜んで下さること。

これに尽きます。

屋根の荷重を支えるゴロンボ

明石市K様邸の上棟が済み、ボチボチ屋根仕舞工程が進んでいます。

台風がやってきたり、あまりの酷暑で大工さんがグッタリしてしまったりと、いろいろありますが、K様はご夫妻で足場に上って、構造体をまじまじと眺めては
「見飽きないなぁ~♪」
と嬉しそうでした。

ゴロンボ

 

 

 

 

 

写真の中の赤矢印で差しているのは、屋根の荷重を支える太鼓梁(ゴロンボ)です。 

丸太の両サイドのみを製材して落として木目を出し、天端と下端は丸みのついたままの状態で使う材料のことを、【太鼓摺り】とか【太鼓落とし】などと言います。

今回の太鼓梁は末口 φ 240 mm × 長さ4m の杉の木です。
製材時にちょっと変わった注文をつけて、他とは違う木採りをしてもらいました。

製材してくださった森林組合の部長には
「そんな挽き方、初めてですなぁ」
と言われました。
(↑太鼓摺りのことではなく、どんな風に太鼓にするか?という製材手法です)

僕も最近までやったことがなかったのですが、7月に静岡で教わって試しにやってみたところ、絶対この方が丸太がきれいに見える!とわかり、それからはドンドンこの方法で挽くようにしています。

きっと昔の人は何の変哲もなく当たり前にやっていたと思うのですが、最近ではあまりやる人がいないのでしょうか?

9月にはこの現場の構造見学会を開催することが決定したので、現場へ来て下さった方は丸太も見て行ってくださいね。

原木を買う醍醐味

お盆休み、みなさまいかがお過ごしでしょうか?
今日も高速道路は大変な渋滞のようですね。



先日、神戸市内で新築住宅を計画中の i さんと打合せをしていた時のこと。

ひょんな話から、床板を採るために原木の伐採からやってみますか?と軽くご提案してみたところ、奥様が大変気乗りされて、とんとん拍子で
「やりましょう!」
ということになりました。

通常、新築住宅のご依頼を頂くケースでは、住宅ローンの関係上、1年以内に竣工させなければならないというケースがほとんどです。

その期間内で
伐採→製材→自然乾燥→製品化
という過程を工期の中でやりくりするのは難しいことが多いのですが、たまたま i さんのお宅は竣工までの工期があと1年半あることから、
「構造材の自然乾燥は無理ですが、フローリングなどの板材であれば、伐採から立ち会って自然乾燥させても間に合いますよ」
ということになったのです。

できれば、乾燥に時間のかかる杉よりも、もともと含水率の低い(=乾燥の早い)桧の方が良いかもしれませんね、とお伝えして、今後板のサンプルを見ていただきながら樹種を決定し、原木を買って伐採から製品化までやってみることになりそうです。



原木を買うとどういうメリットがあるか?ということを一言でお伝えするのは難しいのですが、単純に安くなる、ということではありません。

むしろ払う金額は同じでも、商品にムラがあるので、普通は買えない様な良いものも入ってくるが、その反面あまり良くないものも混在してくるという感じでしょうか。



他の話に例えて言うなら、こんな感じです(↓)

20人でパーティーをやる際に、¥20,000-の予算で魚を買ってくるとします。

スーパーや魚屋さんに行って、「20人分の魚を切り身で下さい」 と言えば、適当にみつくろっていろんなものをバランスよく取り揃えてくれるでしょう。
これが材木屋さんなどで、製品化されたフローリングを必要な数量だけ買うイメージです。



一方、原木を買う方は、漁師さんに頼んで
「¥18,000-で尾頭付きの魚を採ってきて譲ってもらえませんか?
 そのあと¥2000-で採れた魚を調理してほしいのです」
というようなものです。

尾頭付きにすると、頭で兜焼きができたり、背骨やアラなどで汁を作ったりすることもできます。

また、
「本当はこういう魚は傷物でセリに出すと値が落ちるんだけど、直接買ってもらうんだったら絶対味は良いから持って行ってよ」
といって、普通はスーパーで見かけないような大きなヒラメを売ってもらうこともできるかもしれません。

その反面、要らない部位なども出てきたり、「もっといろんな種類の刺身も食べたかったなぁ」などという声も上がるかもしれません。

でも、スーパーでは決して得られなかった迫力や、話しのネタになる(=思い出に残る)ような食材・経験を得ることができるのです。
そして、きっと量も食べきれないようなものになるのではないでしょうか。



ここで木の話に戻します。
原木を買うと、根元の一番太い部分からは、節の少ない、幅広の板が採れます。
一方、末の方では節が多くて巾の狭い板しか採れません。

 i さんには、
「その幅広のいい板の部分をリビングなどに使って、末の細くてあまり良くない部分は2階や廊下に使っていけば、同じ値段で作っても、ずっと面白いものができますよ」
とお伝えしました。



どちらが良いか?という話ではありません。
それは各個人の考え方・価値観によって異なると思いますが、スリリングで印象深いのは間違いなく後者だと思います。

今日は、「そんなこともできるのか」という話を参考までにお伝えしたいと思い、記事にしてみました。

あなたはどう思いますか?