投稿者「mokuzo」のアーカイブ

伝統的な木造建築物における床構面の変形実験

2011/8/2(火)に大阪大学で【伝統工法 床構面の面内せん断試験】が行われ、見学に行ってきました。

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上の写真は試験中の状態で、四角いフレームの上から厚み約3cmの杉板を釘で打ちつけたものをタテに起こし、横から力を加えて変形させたものです。

緑色の点線と黄色の矢印は僕が書き加えた線です。
杉板を張ったフレーム(緑点線枠内)が頭頂部で黄色→方向に引っ張られているため、平行四辺形に変形しています。

 

杉板は2階床板として床梁に直接とめられているものを想定して作られています。

この実験では、建物の床の部分が水平地震力を受けた時に、
【どのくらいの力で-どのくらい変形するのか】
という変形度合いと力の関係を調べることが目的です。

床を調べる実験なのに、試験体が垂直に起きているから、ちょっとピンと来ないですね。

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フレーム変形後の杉板端部の拡大写真です。
各杉板は長さ90mmの鉄釘で打ち付けられています。
水平方向に加力されているので、フレーム全体が平行四辺形のように変形し、杉板が1枚ずつずれている様子がわかります。

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変形後に板を横からみたところです。
所々、釘の頭が抜けてきて浮いています。

 

これは3ヵ年計画で進められている、「伝統的工法を用いた木造建築物の設計法確立」のために、木造軸組みの物理的データを集める目的の一環で行われた実験です。

実際にこういう実験を見ると、いろんなことが判ったり、感じられたりして、とても興味深いです

8/8には京都大学でまた別の実験が行われることになっており、それも見学してきます。
次は通し柱の効果を調べる変形実験です。

 

 

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フィードバック/京都市・石場建て伝統構法の家

2010/06/04(金)の晩のことです。

3月末に竣工した、京都市N邸で建築主のN様が宴会の席を設けて下さり、工事関係者と林業家、それから東風スタッフでおじゃましました。

当日は、N邸の木を出して下さった静岡の林業家4名、大工の棟梁1名、左官の職長1名、東風3名のほか、N様のご友人・ご親戚の方など、総勢20名以上のみなさまが一同に会し、夜遅くまでいろんな話に花が咲きました。

3年前、N様のお宅を設計に着手した際には、設計の一番最初の段階から

「リビングでは20-30名が集まって、座卓を囲んで食事をしたりできるように」

というご要望がありました。
その実際の風景に居合わせることができて、20名ぐらいでちょうどいい空間だなぁ、と実感しました。

宴会の最中には、N様(ご主人)が工事中に撮り溜めた写真を自らプロジェクターを使って映写・解説して下さり、それを傍で見せてもらっている僕ら東風スタッフとしては、もううれしいやらこそばゆいやら、何とも初めての経験でした。

でも、N様がとても喜んで下さって、この家をとても気に入って下さっていることが痛いほどよくわかり、何よりもそれがとても嬉しかったです。

それともうひとつ。

今回は、木を出してくれた林業家である、静岡の鈴木林業のスタッフの皆さんが現場であるN様のお宅に来てくれて、自分たちが出した木でつくられた建物を観てもらうことができたことが良かったです。
(本当は、他にも木を出して下さったり製材をして下さった静岡の皆様にも来て頂きたかったのですが)

林業家は、毎日木に接しているにもかかわらず、実際に自分たちが出荷した木を使って作られた家を見たり、使って下さったお客様とも話をしたりお礼を言ってもらえたり、といった機会に立ち会えることはほとんどありません。

東風だけでなく、木の家をつくる際に一番大切な素材=木材を提供して下さっている方々なのですが、考えてみればおかしなことですね。

今後は東風でも、もっともっとこういう機会を増やしていって、林業関係者のみなさまに自負と誇りを感じて頂けるように努力したいと思っています。

そういう意味でも、家を建てる際に

「どの山から出てきた木なのか?」

ということをきちんと記録しておき、ちゃんとお互いをつないであげるというのも、僕たちの大切な仕事なんだなぁと、今さらながら再認識しました。

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京都市N様邸竣工写真-2/伝統構法石場建て住宅

昨日に引き続き、京都市N邸内観の竣工写真をご紹介します。

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↑ 玄関です。
ものすごくシンプルな玄関ですが、いろいろ苦労が詰まっています。

(話し始めると長~くなるので割愛しますが、過去のブログで
そのうちのいくつかはご紹介済みです)
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↑ リビングの吹き抜けと薪ストーブです。

完成見学会の時には建具が入っていなかったのですが、無事土壁も乾いて建具が入りました。

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↑ ダイニングカウンター越しにリビングの反対方向を見たところです。
このダイニングカウンターに使っている木は、クライアントのN様ご夫妻が2年前の伐採に立ち会われた、思い出深い木です。

ついでに言うと、テレビが載っているカウンターの1枚板や、玄関の式台に使われている1枚板も全て同じ1本の木から採りました。

原木で木を買うとこういうことができるんですよね。

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↑ 最後はキッチンです。
このキッチンは大阪のステンレスキッチンメーカー/ルプさんの製作によるものです。

最近、このようにカウンターの下には引き出しなどを何も設けない、すっとんとんのキッチンを所望される方が増えています。

実はこれらの写真以外にも、もっといろいろとご紹介したい写真を山ほど撮っている(笑)のですが、このくらいにしておきます。

 

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→ http://www.mokuzo-architect.jp/works_kyoto1.html

 

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京都市N様邸竣工写真-1/伝統構法石場建て住宅

京都市N邸では土壁もほとんど乾き、木製建具も入ってようやく建物は完成の姿になりました。

土日の2日間で作業の合間に竣工写真を撮ってきましたので、そのうちの何枚かをご紹介します。
※全ての画像はクリックすると拡大表示できます。

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外観はこんな感じです。

外構がまだ一部仕上っていないので、足元をカットしているアングルで撮りました。

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上の写真は玄関まわりです。玄関の建具は京都らしいシンプルな格子戸にしています。

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この写真(↑)は南側の外観を横から撮ったカットです。

屋根には樋をつけていないので、造園を担当して下さった宮川庭園の宮川さんが古瓦を使って雨落ちを作ってくれました。

砂利が敷き詰められているところは、巾 60 cm × 深さ 30 cm ほどの排水溝になっていて、屋根からここに落ちた雨水は砂利の間を縫って公共下水に排水されるようになっています。

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上の写真はリビング南面の窓を通じて、照明で照らされた内部の木組みを外から撮ったカットです。

昼間は外の方が明るいので、外からはガラスに反射して室内の木組みは全く見えませんが、夜になって室内の方が明るくなると、吹き抜けの木組みが外から丸見えになって、建物の表情が一変します。

設計した本人が言うのも何ですが、毎日この景色を見ながら家に帰ってくることができるのは、とっても羨ましいなぁ・・・と思います。

明日は内観の写真をご紹介しますのでお楽しみに。

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造園工事が進んでいます

先日、完成見学会を開催させて頂いた京都市N邸では外構の造園工事が進んでいます。

雨落ちの溝の形がほぼ完成し、飛び石や靴脱ぎ石が据わりました。

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不思議なもので、石が据わってくるととても落ち着いた感じになってくるんですよね。

 

 

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夜景/天然乾燥・葉枯らし材でつくる伝統構法の家@京都市

一昨日の夜、京都市N邸でNさんご夫妻と外構の打合せをしている時に、夜の建物をまじまじと見る機会がありました。

奥様から
「さとうさん、階段めっちゃきれいですね」
と言われてふと思いつきました。

見学会の時に夜景を見てもらうのも良いのでは? と。

 

実は東風でつくる建物の多くは、夜に外から見ると建物の中の木組みが間接照明に照らし出されて、昼間とは表情が全く逆転してなかなかいい感じになるのです。

今回のNさん宅の夜景写真はまだ撮っていないのですが、東風のホームページでは神戸のSさん宅の夜景写真を掲載しています。

参考までにご紹介しますと、昼間はこんな感じですが、夜になるとこうなります
ねっ?表情が一変するでしょう?

 

ご多分に漏れず、Nさんのお宅も夜景がとっても魅力的です。

ということで、見学会の開催時間を下記の通り少し延長しました。
【終了時刻両日共に 18:00→20:00に延長】

もちろん、昼も来て、夜も来る、というのも大歓迎です(笑)。

 

本日は階段の夜景写真のみご紹介します。
(三脚・ストロボを使わずに撮ったので、若干ブレてますがご容赦下さい)

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屋根のスカイライン/天然乾燥材でつくる伝統構法の家@京都市

昨日はとても暖かい日でしたね。

どうやら花粉がたくさん飛んでいたようで、くしゃみや鼻水がひどくなりました。
これからしばらくは悩まされそうです。

青空には瓦と漆喰の組合せが映えます。

軒先に雨樋が無いので、屋根の一文字瓦のラインがすっきりきれいに見えました。

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京都市N邸にて

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玄関の格子戸/天然乾燥材でつくる伝統構法の家@京都市

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昨日、京都市N邸の木製建具吊込み作業を行いました。
上の写真は夕方に撮った、玄関の片引き格子戸の写真です。
靴脱ぎ石も座り、養生されて見えなかった式台も姿を現わし、土間も仕上げてきたので、一気に玄関らしくなってきました。
(↑ このあたりの写真はまた後日)

と思いきや、現場はまだ土壁が乾いていないので、木製建具がすぐ狂ってしまう状況です。
よって、全ての建具は一旦建具屋さんが持ち帰って預かってくれています。
(当然、この写真の建具も持ち帰りです)

この家ももう少しで完成です。

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古い石を使いましょう/天然乾燥材でつくる伝統構法の家@京都市

古材の再利用、と言えば古民家の黒く煤けた梁や柱などを思い浮かべると思うのですが、石も忘れてはいけないものです。

石は木に比べると、目に見えて古びたような感じは出にくいものですが、それでもやはり新しく切り出してきた石と使い古された石とを比べると、表情が全く違います。

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上の写真は京都市N邸の玄関に据える予定の靴脱石で、以前Nさんのお宅の敷地内に建っていた家で使われていた古い白御影石で、表面は叩いて仕上げられています。
写真ではよくわからないと思うのですが、長年のうちに角張ったところが無くなって丸みを帯び、色もこなれてとても柔らかい雰囲気になっています。

きっとこれが玄関土間に座ったら、いい感じになると思いますよ。

錆御影や鉄平石など、鉄分を含有しているために錆が出てくる種類の石などは、古びているととてもいい表情になってきます。

大きな石はとても重いので、運ぶ時にワイヤーを使ったりすることで傷がついて、表情を損ねてしまうことがあるのですが、古い石が座るとドシッとして落ち着いた雰囲気になりますね。

あなたのお宅にも、庭に埋もれた古い石があったら、積極的に使ってみられてはいかがですか?

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階段の手摺/天然乾燥材でつくる伝統構法の家@京都市

京都市N邸では階段の手摺が取付きました。

実は先週のNさんご夫妻との打合せを行うまでは、玄関につける手摺を丸太で作ろうかと考えていたのですが、実際に丸太を現場に持ってきてやってみたら室内の雰囲気に合わなかったので、玄関の手摺は中止に・・・。

そこで階段の手摺を北山杉の小丸太にすることにしました。

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北山杉の磨き丸太は自然の木の皮をむいて磨いたものなので、根元の方(1階の上り口)ではちょっと太目ですが、末口(2階の上がりきりの部分)では細くなっています。
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上の写真は中間付近での手摺の拡大写真です。
ご覧のようにこの木は小さな入節が多いのですが、わざとこういう木を選びました。

和室の床柱などでもそうですが、つるっとした節の無い木は表情に乏しいので、象徴的な存在になる木の場合には、わざと小さな入節や筋(絞り)が入っているものを用います。

このような小さな入節はエクボと呼ばれて、床柱などでも割と好まれます。
人間と一緒で、床柱にエクボがあると微笑みかけているかのような愛嬌があってなかなかいいものです。

この材料は、いつも大変お世話になっている京都市上京区の中儀銘木店さんで買ってきました。

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上の写真は、手摺の北山杉小丸太を受ける腕木(うでぎ)です。

ホゾの部分は柱に飲み込ませて鉛直方向の荷重を支えるように設計しています。

当初の設計では、手摺も杉の角材でつくり、手摺を支える腕木も既成の金物を使う予定でしたが、丸太が入って腕木も木製にすると雰囲気がかなり変わりました。

この腕木は赤松の柾目の古材から採ったものです。

とてもとても重い木だったので、きっと大工さんの刃物が刃こぼれしてしまったのではないかと思うのですが、とても丁寧に造り出してくれました。

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