奈良県北西部にある平群町(へぐりちょう)というところで、明治期に建てられた大和棟(やまとむね)の古民家を再生工事しています。
大和棟というのはあまり聞きなれない言葉かもしれませんが、このような外観の建物のことを差します。
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中央の一番高い大屋根部分が急勾配になっているのがわかると思います。
この急勾配屋根のグレーでフラットになっている斜面の部分は、オリジナルは茅葺きでした。
大和棟は、その地区でかなり財力があったり地位が高い庄屋さんを務めるような家によくみられる形です。
残念ながら最近は大和棟の家がどんどん少なくなっていますが、とても美しい形なので、何とか後世に遺したいと思う建築の一つです。
この現場は2024年の春から工事が始まっていたのですが、今週からタイル工事に取り掛かっています。
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↑ 玄関土間のタイルの割付を検討すべく、職人さんが水糸を張って寸法や矩手(かねて=直角のこと)を確認しています。
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↑ 今回土間に貼ることになった600角の大きな土間用タイル。
お客様がタイルのショールームに行って選んでこられたもので、とても個性的で色ムラの大きいタイルです。
この写真では3枚だけが並んでいますが、それぞれに模様が全然違っているのがわかりますよね。
張り上がったらきっととても迫力のある仕上がりになりそうで、今からとても楽しみです。
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これは玄関の沓脱石(くつぬぎいし)です。
ちょっと変わった石だなぁ・・・と思われたことでしょう。
こういうことをするのはとても珍しい(というか、うちも初めて)のですが、中央に座っている石がもともとこの家にあった沓脱石です。
しかしこの大きさでは、約8畳ほどの広さがあるこの家の玄関の沓脱石としては、あまりに小さくてバランスが悪く、かといって新しい石に取り替えてしまうのはこの家の歴史やご先祖様に対して失礼なので、お客様と相談して両脇につくり足すことにしたものです。
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最初はもっと個性的な石を使って、デザイン的にも少し目を引くような仕上げにしようかと思っていたのですが、先述の土間タイルがかなり個性の強いものになったので、沓脱石と土間タイルとがお互いに喧嘩してしまうと全体のバランスが崩れてマズイな・・・という話になり、この沓脱石はボリュームを大きくするだけで、あまり目立たない仕上げにしようということになりました。
古民家の再生工事を進める上では、こういう既存の部材と新しく足す部材とのバランスをどうやってとっていくか?ということが、最終的な建物全体の印象や品格を左右するので、いろいろと判断が難しいことが多いのです。
絶対的な正解は無いという状況の中で、施主であるお客様の好みの方向性を尊重しながらも、どんな人に見られても住まい手のご家族が恥をかくようなことにならないように、理性的でバランスが取れた、全体として品の良い建物に仕上げる必要があります。
奇抜なものにしてしまうと住まい手やつくり手の品性を疑われてしまうし、
かと言ってあまりに没個性的だと建物の魅力が乏しくなってしまう。
全体としてどんな品格にまとめ上げるのか?というところが、一番難しいのですが建物をつくる上で最も重要視される点になります。
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